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「挙句の果てに、職場に酒のにおいをぷんぷんさせて出勤してくるしな。酔っぱらった状態でまともに働ける奴がいるものか。いったいあいつは仕事をなんだと思ってるんだ? お客さんから苦情が入ったら、あんな下っ端がどうやって責任をとるっていうんだよ」彼はしゃべりながらも手を動かしつづけていた。「知っているか? あいつ、元警察官だってよ。白バイに乗って、交通違反者を取り締まってたらしいんだ。ところが休みの日に事故に巻きこまれて視力が悪くなっちまった。だから前の職場はやめざるを得なかったんだとよ。はっ。警察にあんなやつを採用するなんて、わしらの国は頭がいかれちまったのかね? あんなやつに速度超過で切符を切られたら、だれだって納得いかねえって面をするだろうさ」


「たしかにそのとおりですね」ぼくはリーチ棒を整理し終えると、船橋さんを真似て卓の電源を押し、ちゃんと動くかたしかめた。じゃらじゃらと牌がぶつかりあう気持ちの良い音が卓のなかで響き、綺麗に整列した山が四つの穴からせりあがってきた。再び掃除機を手にとりスイッチを入れる前、船橋さんがつぶやくように言ったのが聞こえた。


「短期のアルバイトは、実際に働いてもらうまでどんな人間かわからねえのが難点だ。みんながみんな、相沢くんみたいに真面目で勤勉なひとだったら、なにひとつ文句はねえんだがなあ・・・・」



 その日は朝から、しばらく使用されていなかった体育室の清掃を頼まれた。夜に泊まる団体客が社交ダンスの同好会らしく、夕方には踊りはじめられるように準備せよ、とフロントから急遽連絡があったのだ。船橋さんは休みだったので、ぼくとシロさんが駆り出された。ぼくはこの手の雑用を任されることが多い。船橋さんの頼みをほいほいと引き受けていたら、ほかのひとたちまでぼくに頼みごとをするようになった。断る理由もなかったので、いつのまにかこのホテルの裏方作業は大抵こなせるようになっていた。


「ではまず掃除機をかけてから、軽く濡らしたモップで水拭きしていきましょう」ぼくは隣に立っていたシロさんに話しかけた。いつものように彼の目は充血していたし、顔は熱っぽく赤みが浮き出ていて、全身からアルコールのにおいを発散させていた。彼はぼくの言葉に頷いた。


 作業は滞りなく進んだ。部屋の両端からそれぞれスタートし、まん中あたりで落ちあう。ぼくは同僚たちよりもはやく仕事を終わらせることが多かったけれど、シロさんはぼくとほとんど同時に作業を終えた。


「思ったよりはやめに終わってしまいましたね。少し休憩していきましょうか」


 モップに体重を預け、他愛もない世間話をして時間を潰した。それから部屋を囲うように並べられた椅子を綺麗に整え、お互いの作業した箇所を確認のために見まわり、ぼくらは体育室をあとにした。

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