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共に食器を洗っている間も二人はしゃべりつづけていた。ぼく相手にも気軽に冗談を言ってきて笑わされた。ぼくらの後ろで流しに並んでいた、受付の若い女性たちともすぐに打ち解け、声を上げて笑いあっていた。彼女たちは小夜の同僚だったけど、ぼくはほとんど話したことのないひとたちだった。目があうと小夜の容体はどうですかと訊かれたので、当たり障りのない返事をしておいた。それならよかったです、と言って彼女たちは胸をなで下ろした。
翌日からぼくは従業員食堂で昼ご飯を食べなくなった。べつに彼らのことがいやになったわけではない。ただぼくはむかしからしゃべるのや、ひとの話を聞くのが苦手だった。すぐにどうしようもなく疲れて、眠くなってしまうのだ。小夜に誘われるまでは、いつもひとりで食べていた。昼食代はかかってしまったけど、ぼくにはそれが必要だった。あの頃に戻る。ただそれだけのことだ。
昼になると自分のロッカーから、前日にパン屋で買った菓子パンの入ったビニール袋を取り出し、従業員用の出入口からホテルを出て海に向かった。ホテルの制服は着たままだ。駐車場を通って防波堤まで歩き、釣り人たちから少し離れたところに腰かけて、海を眺めながらランチを食べた。タブレットをいじりながら食べることもよくあった。少なくとも二日に一度は、この時間に小夜からのメッセージが届いた。彼女にはぼくの暇な時間帯がわかっていた。ランチはあんパンのこともあれば、ケチャップのたっぷりかかったホットドッグを食べることもあった。飲みものは自販機で買った緑茶かウーロン茶を飲む日が多く、お金がないときは空のペットボトルに水道水を入れて飲んだ。時々は釣り人から、おにぎりやお菓子を分けてもらったりした。しゃべった記憶もないのだが、ぼくの好きな梅干しをタッパーに入れて渡してくれるひともいた。彼らの間でぼくは、ちょっとした有名人だったようだ。




