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☀️12

 太陽は沈み、部屋はすでに暗くなっていた。けれども、わたしはわざわざ明かりをつけようとはしなかった。開け放しの窓から夜の冷気が忍びこみ、あたりの気温を下げていた。律子さんをちらっと見やると、両手をポケットに突っこんで、宙を()めつけていた。彼女はつぶやいた。


「どうして若いひとたちって、そんなものの言いかたばかりするのかしら」


 それはわたしに言い聞かせるというより、ひとり言のようだった。ここではないどこかへ向けて言っているようでもあった。律子さんはわたしに背を向けて窓辺に近寄り、大きな窓を音もなく静かに閉めた。わたしは足を振り上げてベッドの上にのせ、先ほど律子さんが畳んだばかりの布団をつかんで引っぱり上げ、なるべく顔が見られぬように首元まで覆った。布団はすぐにまたしわくちゃになった。


 律子さんがカーテンを閉めると、薄明のなかで彼女の立ち姿が影絵のように浮かびあがった。表情はよくわからなかったけれど、ポケットに両手を突っこんで、こちらを見ているのはわかった。わたしも黙って布団の隙間から見つめかえした。


 やがて音もなく律子さんは部屋をあとにした。彼女の歩いた動線は、暗闇のなかでわたしの目に焼きついた。わたしは布団の下で膝を抱えて、律子さんの言葉や目線、動作のひとつひとつを脳裏で反芻し、なんどもなんども舌先でなぞった。暗がりで、ふたたび退屈がわたしの内側に噴き出してくるまで、それを繰りかえした。

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