表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/34

1-2 追放



 帰宅すると、お父さんとお母さんはあたしを家に入れてくれなかった。やがて扉から顔を見せたお母さんは、大きなリュックを両手に持っていたんだ。それをあたしの背中に担がせる。


「イリア、しきたり通りすぐに村を出て行きなさい。森を抜けて町へ行くんだよ。これからは町で暮らすの。必要なものはリュックに入れておいたからね」


「お母さん、ありがとう」


「しきたりだから、村の外までは見送らないよ。さあ、行きなさい」


「うん。私、元気で頑張るから! お母さんもお父さんも、お達者で!」


「ああ!」


 そう言ってお母さんは扉を閉めた。


 あたしの後ろにはマジカルドラゴンがいた。前足で顔を一生懸命洗っている。その姿は可愛いのだけれど、今はふてぶてしく映った。あたしはドラゴンの名前を呼ぶ。


「ヒューイ。行くよ」


 それは、私が孵化したモンスターに付けようと思っていた名前であった。


「がるあ?」


 ヒューイは自分の名前のことを分かっているのかいないのか、疑問形で鳴いた。


 あたしは村の出口へと歩き出す。かなりリュックが重い。その後ろからヒューイが着いてきた。


 村道を歩いている途中、やはり村人とすれ違った。あたしに同情の視線を投げかけている。人によっては「あんたは早く出て行け! 災厄が来たらどうするの!?」とか「オッドアイの女なんて、そもそも縁起が悪いんだよ」などと叫んでくる人もいた。



 ……あたしだって、好きでドラゴンを孵化させたわけじゃないのに。このオッドアイだってそうだ。



 だけどあたしは思ったんだよね。村を出て行くにしても、どうせ生きるのなら楽しく生きたい。そして、このドラゴンを大切に育てよう。とりあえず、生活するためにはお金が必要だ。私は剣が得意だから、冒険者をやるのが一番手っ取り早い。


 村の出口にたどり着く。誰もいないだろうな。そう思ったんだけどね。村の友達たちが何人もいて、あたしを見送りに来ていた。


「イリア! 元気でね!」


「イリア、達者で暮らせよ!」


「イリア、風邪引かないようにね」


「そのドラゴン、きっと強いよ! 大丈夫!」


「「イリア!」」


 紙吹雪まで降らせてくれている。


 あたしは歩きながら、もう堪えることができなくってね。ぽろぽろ、ぽろぽろと涙をこぼした。泣きじゃくりながら、それでも後ろを振り返らない。前を向いたまま、あたしは言った。


「みんな、ありがとう」


 それが精一杯の返礼の言葉だった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ