1-15 恋バナ
その日、ジルドは町の酒場に相棒のディアスを呼び出していた。冒険者ギルドとは別の酒場である。他人には聞かれたくない話があった。いま二人でテーブルを挟んで座っている。ビールを飲んでいた。
ジルドは町を離れていた理由について嘘の話をした。しかし頃合いを見計らい、低い声で本当のことを語り始める。
「おいディアス、実はお前に話がある」
「おう、俺もあるぜー。実はなあ」
せっかくジルドが話し出そうとしたのに、ディアスは自分の言いたい事をべらべらと喋り出した。なんだかディアスの鼻の上が赤い。そしてやけにご機嫌である。
「ジルド、お前が町にいない間、俺はイリアと仕事をしていたんだ。覚えてるだろ? あの小生意気なオッドアイの女の子なんだが、話してみると案外気さくでさ。俺は冒険者の先輩として、後輩のイリアに仕事を教えることにしたんだ。ほら、俺面倒見良いじゃん? だから、当分お前とは仕事ができなくなるぜ」
ジルドは樽ジョッキをあおり、テーブルに置いた。トンと音がした。
「いきなり恋バナとはな」
「ち、ちげっ、ちっげーよお前。俺は惚れてなんていない。先輩としての役目を全うしようと思ってだなー」
「嘘をつくな。お前が嘘をつく時は鼻の上が赤くなるんだ」
「嘘じゃねー! 大体、俺があんなガキに惚れるわけねーだろ。まだ16だぞ、イリアは」
「もう年まで聞いたのか」
「おう。露天風呂温泉で裸まで見てやったぜ」
ディアスが笑顔で親指を立てる。
ジルドは気づかれないように小さく嘆息した。これでは例の話ができない。それどころか話せば反対される恐れがあった。それだけならまだ良いが、ディアスは作戦を邪魔してくるかもしれない。
ジルドはあきらめを心に滲ませつつ、鷹揚な態度で樽ジョッキを持った。
……こりゃあ話せないな。
「それじゃあ今日は俺のおごりだ」
「おっ、気前が良ーじゃねーか、ジルド」
ディアスも樽ジョッキを持つ。
「ディアスの恋に乾杯だ」
「だからちげーっての!」
二人で樽ジョッキをぶつけ合う。
……イリアの誘拐にも乾杯だ。
それからジルドはディアスをからかい通した。ディアスはイリアの顔が良いだの、胸と尻がでかいだの、腰はきゅっとくびれてるだの、性格が素直だの、色々教えてくれた。特に興味が湧いたのは、やはりあの勝負の一件だそうだ。自分の股間を蹴り上げられた瞬間、ディアスの頭にはお星様が見えたらしい。イリアは自分にとって特別な友人になることを予期したようだ。友人というところを強調してディアスは言った。この様子だと、イリアがいなくなったら噴火した火山のように怒り狂うだろうな、とジルドは思った。
……今頃、お前の大切なイリアは襲われているはずだ。
1-8にて、とんでもないかけ算の間違いをしていたのが発覚したのでお伝えします。(直し済み)
この物語では大銅貨10=銀貨1枚の価値です。それなのに、ダイナミックな間違いをしていました。ご愛嬌と思い、流してくれると幸いですm(__)m
いま、人が来てくれそうな時間を探っています。今日も二つの投稿であり、12時20分と19時20分の投稿になります。




