表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/34

1-12 オウルベアー

 


 冒険者ギルドを出た後、三人は商人ギルドへと行った。ディアスは何度も来たことがあるようで、王都に行くために護衛を必要としている行商人と話をつけてくれた。あたしたちは行商人の護衛もすることになった。仕事は掛け持ちになるが、オウルベアーが出るところまで荷馬車で移動ができる。しかも護衛料金がもらえるのよね。



 ……ディアスは仕事に慣れてるわ。



 フィリップという行商人の荷馬車を護衛することになった。出発の時間になるとあたしとヒューイは荷台に乗った。周りにはいくつもの大ダルがある。どれもフタがしてあって、何が入っているのかは分からなかった。他にも剣や鎧などの武器が積まれている。どれもこれも錆びついていて使い物になりそうになかった。だけど鍛冶屋に持っていけば、そこそこの値段で売れるのかも、しれないよね。


 あたしの隣にはヒューイがいる。春の良いお天気を見上げながら緑の尻尾を揺らしている。ちなみにディアスは御者代のところにいて、フィリップの隣に腰掛けているようだ。モンスターが現れた際、すぐに守れるようにとの配慮なのだろう。


 やがて荷馬車が動き出す。町を北へと向かい、フィリップが通行税を支払って外に出た。


 あたしはヒューイの背中をそっと撫でた。


「ぐあるん?」


「ねえ、ヒューイ。前にも聞いたけど、貴方、ヒール以外の魔法を使えないの?」


「ぐわぐわ」ヒューイが首を振った。


「使えるの!?」


「がるあるーん♪」


 使えるようだ。あたしは荷台の後ろから外の平原を指さした。


「ヒューイ、それじゃあ使ってみてよ」


「がるあるんが!」


 ヒューイが吠えると、荷馬車の後ろに小さな竜巻のような風が起こった。あたしはその魔法をみたことがある。故郷のフェルメル村には風魔法の得意なビーストを連れている大人がいて、見せてもらったことがあった。今のはエアロウインドだ。


 あたしはヒューイの首を撫でて褒めた。


「ヒューイ、エアロウインドが使えるのね! すごいわ」


「がるるん♪」


「今度からあたしが使ってって言ったら、使ってくれる?」


「がうるーう!」


「ヒールとエアロウインドの他に魔法は使えないの?」


 ヒューイは首を横に振った。


「がうー」


「そっか。でもこれから覚えるかもね! 一緒に成長だ」


「がるるーん♪」


 ガタゴトと揺られていた。石畳ではない土の地面を荷馬車が行く。時々タイヤが石を踏むと、荷馬車は大きく揺れた。あたしは空を見上げて祈るようにつぶやいた。


「雨が降らなければ良いけど」


 あたしはだんだんと眠気が差してきた。うとうととして、頭が上下に揺れる。いけないいけない。今は仕事中だ。両手で頬をパチッと挟んで気合いを入れる。そんな時だ。


 御者代の方から何か声がした。と思ったら荷馬車がゆっくりと止まる。


 ディアスの呼ぶ声がはっきりと聞こえた。


「イリア! オウルベアーが出たぞ降りろ!」


 モンスターが出たようだ。


「ヒューイ、行くよ」


「がるるぅっ!」


 ヒューイと一緒に荷台を降りて荷馬車の先頭へと向かった。そこでは二頭の馬が暴れるように騒いでる。右斜め向かいから、巨大なフクロウの顔をしたクマが三頭走ってきていた。……オウルベアーだわ!


「だ、だだだ、大丈夫なんですか?」


 フィリップは御者代の上でひどく怯えている。


 ディアスが抜剣し、馬と荷馬車を守るように立った。


「任せとけって。この荷馬車には手を触れさせやしない! イリア! 援護できるか?」


「援護って何をすればいいの?」あたしは大声で聞いた。


「俺が一匹ずつオウルベアーを倒すから、お前は他の二頭を引き付けて逃げてくれ。できるか?」


「分かったけどちょっと待って」


 あたしはヒューイを振り返り、優しい声で指示した。


「ヒューイ、あなたはここを動かなくていいわ。そして、あたしが大声で指示したら、敵に魔法をかけなさい。それと、味方が傷ついたらヒールをかけて」


「がうるるるぅ、がう!」


 ヒューイはちょっとびびっているような様子だ。だけどしっかりと頷いた。私はその頭に手を載せる。


「良い子」


 あたしは双短剣を抜いて、オウルベアーに向かって走って行った。すでに一頭のオウルベアーが近くにいて、ディアスが剣で戦っている。両足で立たれると、オウルベアーはディアスの二倍の背丈があった。ディアスは背の高い男性なのだが、オウルベアーと並ぶと小さく見える。


 彼が呪文を唱えた。


「烈火の勢い。燃え上がれ。フレイムソード!」



 ……すごい。魔法剣だわ! しかも詠唱を二行で終えている。



 ディアスの剣が燃えて赤くなり、刀身が長くなった。その剣でオウルベアーを袈裟斬りする。しかし浅い。オウルベアーの肩から10センチほどを斬ったところで止まった。すぐに反撃が来る。オウルベアーの両手のブローを、ディアスは「はっはー、鬼さんこちら」と言いながら剣で受け流した。



 ……ディアスさん、こんなに勇敢な人だったのね。



 あたしもぼさーっとしてはいられない。後から走ってくる二頭のオウルベアーの方へと駆けて行った。接近するとオウルベアーは立ち上がり、あたしに爪のブローの攻撃を繰り出す。こういう時、自分の短剣という武器がはがゆいと思う。いくら右手を伸ばしてもオウルベアーの首や目には届かないからだ。


 あたしは大声で指示した。


「ヒューイ! エアロウインド」


「ガルアルゥ!」


 瞬間、右手の方にいるオウルベアーがゆらりと揺れて宙に浮かんだ。そのまま背中から地面に叩きつけられる。よし! あたしはオウルベアーの頭に回り、頸動脈を狙って短剣でかっ切った。


 ブシュッ。


 オウルベアーの首から鮮血が飛び散る。あたしは踊るようなステップを踏んで、距離を取った。左手の方にいるオウルベアーが両手を掲げて迫っている。あたしはちょうど転んでいるオウルベアーの周りを回って時間を稼いだ。


 その間にも、一頭を倒したディアスがこちらへと歩いてきた。


「よーし、よくやった! イリア、後は任せろ!」


「頼むわ」


「うおらあっ!」


 ディアスはその燃える剣で転んでいるオウルベアーの首を切断した。残りは一頭である。ディアスは剣でオウルベアーの胸を突いて、そして唱えた。


「爆ぜろ! 火の精! エクスプロージブソード!」


 ドゴン!


「ぐおぉあああおおおおぉぉぉぉっ!」


 爆発して胸に大穴が空いたオウルベアーは断末魔を上げてその場に倒れた。剣を抜くとディアスの剣の刀身はもう燃えていなかった。


「すごい威力ね」


 あたしは感嘆としてつぶやいた。


「ま、ざっとこんなもんさ。それよりイリア、オウルベアーの眼球を採取してくれ」


「分かったけど」


 あたしは短剣でオウルベアーの瞳をえぐり抜き、取り出した。計六つの目玉を両手に抱え、ディアスのところに持っていく。


「イリア、それはお前が持っていてくれ」


「嫌よ、汚いもの」


「何だよ。じゃあこれに入れておけばいいだろ」


 ディアスがポケットから銭袋のような袋を取り出す。もちろん中身は空っぽだ。あたしはそれを受け取り、目玉をしまった。これはリュックに入れておこう。それにしても気になることがある。あたしはディアスに尋ねた。


「あなた、外国人だったの?」


 魔法剣を使うということは、魔法剣の力が強いことで有名な隣国の出身かもしれない。


「ああ。魔法剣のことか? 俺の親父が隣国の出身なんだ。だから俺には、魔法剣士の血が流れている」


「なるほどね」


 あたしは納得した。そしてディアスは御者代に上り、あたしはヒューイと共に荷馬車の荷台に戻った。


 また荷馬車が動き出す。


「ヒューイ、良い子だったわよ」


「がうるーん♪」


 ご褒美にクッキーのお菓子をあげた。


「がうがう♪」


 あたしも一枚つまんで食べた。空を見上げると、どこまでも晴れ渡るような快晴である。もう少しでお昼の時間だ。


 そしてその日、荷馬車を襲うモンスターはもう現れなかった。王都に到着すると夕方であり、もちろん通行税は行商人の男が払ってくれた。商人ギルドへ行き、護衛の報酬をもらう。金貨6枚をディアスと二人で半分に分けた。


 今日は王都の宿屋に泊まる予定である。帰りはまた行商人の護衛をして帰宅すると、ディアスはあたしに説明をくれた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ