タイトル未定2024/08/22 20:27
ピッピッピッピッピッ 何か音が聞こえる。「ここは一体何処なのだろうか?」そういった疑問が頭の中に浮かんできた。話し声が頭の中を掻き回すように聞こえてくる。聞こえる度に、暗闇で長く彷徨っていた感覚がふんわりと消えていった。ゆっくりと目を覚ますと白い天井がこちらを見つめていることに気がついた。「どうやら、病院にいるらしい。」ベットに横たわる感覚が鮮明になってくる。なぜ病院にいるのかは記憶が曖昧で思い出すことが出来ずにいた。そう思っているのも束の間、隣のベットにいる女性に話しかけられる。「いや、正確に言えば話しかけられていたのだ。目を開けるまでずっと。」その女性は意識が回復した自分を見てとても驚いた表情を浮かべ、慌てて「あなたの名前は?」と何かを願っているような様子で真剣に聞いているように見えたが、その理由が全く分からなかった。人の名前など簡単に聞けるものである。だが、彼女の口から放たれたその言葉はどこかで聞いたことがあるような響きを帯びているものであった。「名前は…未来彼方」自分がそういうと突然彼女は微笑みながらも目には大量の涙を抱えて、「私は、xx 恵 ずっと待ってた xxxxxxxxxxxx…」とそう言った。所々聞き取れなかったが、下の名前は聞き取ることができた。「何故彼女の言葉が度々聞き取れないのか?」「何故自分を待っていたのか?」「何故恵は泣いているのだろうか?」疑問が頭をよぎる中、恵の方をじっと見た。恵は病院には似つかわしくない健康的な見た目をしていて、重病ではなさそうである。そう思っている自分も身体に傷があるという感覚はない。なら「なぜ病院にいるのだろうか?」そう考えているうちに答えは一つの方向へと集まった。「きっとここは精神病院なのだろう」そう仮定すると全ての疑問が晴れる。自分が言葉を聞き取れないことも恵が人の名前を聞いただけで泣くことも。恵と自分はきっと精神病の急速な悪化でこの病院に入院していたのだろう。自分はおそらく重度の記憶障害と相手の言葉を都合の良いように捉えてしまう症状を持っているのだとそう理解した。