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ン・ヲカ遺跡 その1

 話しがまとまった俺達はカイトに協力する事を申し出た。カイトはそれを快諾し、俺達の協力関係が正式に決まった。


「じゃあまずはン・ヲカ遺跡からだな。シーアライドから場所も近いし、初海底遺跡探索にうってつけだ」

「そういや海底神殿ってどんな感じなんだ?話しに聞いた事はあるけどまったく知らないんだよな」


 俺の言葉にレイアもアンジュも頷いた。あるのは知っていたけれど、どうやって行くのかは知らない。


「まあそうだよな。海底遺跡は進入難度も高いし、サルベージャーかもの好きな冒険者しかいかない。それにあんまり大物のアーティファクトは見つからないんだよな」

「そうなの?じゃああんた達って何を狙って潜るの?」

「いい質問だお嬢。海の底では劣化が早いのか、武装型アーティファクトは見つからない、または見つかってもほぼ朽ちている。だけど何故か非武装型アーティファクトは朽ちずによく見つかる。小物ばかりだけどアーティファクトというだけで価値は高いんだ、欲しがるやつはごまんといる」

「成る程、サルベージャー達が狙って引き上げるのは、他者から狙われにくいお宝という事ですね。中々合理的です」

「そゆこと。アンジーは賢いな」


 頭を撫でようとしたカイトの手をアンジュはぺしっと叩いて振り払った。


「子供扱いはやめてください。不愉快です」

「二人はいいのに俺は駄目なのかよぉ」

「カイトさんは駄目です。私への尊敬が足りません」


 ショックを受けてうなだれるカイトの肩にぽんと手を置いた。しかしそれは慰めというよりも、そう簡単にアンジュと打ち解けられると思うなよという気持ちの方が強かった。


「で?海の底へはどう行くんだ?」

「あれ?アー坊なんか怒ってる?」

「怒ってないよ。さっさと次いこうや」

「よおし本格的に怒られる前に秘密兵器を出しちゃおうかな!」


 そう言ってカイトは取り出した物を机の上に並べた。白くて小さな球体、飴玉のようなものがころころと転がった。


「これは…」

「潜水玉じゃん!」


 カイトの言葉にレイアが割り込んだ、割り込まれたカイトはばつが悪そうな表情でレイアに聞いた。


「何だよお嬢、知ってるのか?」

「知ってるもなにも、これを開発したのは私の両親が所属してる研究所よ。これを口に入れておけば水中で呼吸も出来るし、体も環境に適応するよう調整してくれるわ。なんでこんなもの作ったのか知らなかったけど、こういう形で活躍してたのね」

「レイアの両親が関わってるってことはアーティファクト研究の産物って事?」

「そうよ。これの大元になったアーティファクトがあるんだけどね、それが…」


 話の途中でカイトがわざとらしく咳払いをした。話が脱線しかけたので無理やり戻してくれた。


「お嬢の親父さんとお袋さんがすごいのはよおく分かった。で、本題。これを使えば水の中で活動するのは簡単だけど、自由自在に泳いだり潜ったり出来るようになる訳じゃあない。だから…、っとここから先は行ってからのお楽しみだな」


 期待を持たせておいて急に梯を外すのでずこっと転びかけた。全員の抗議の眼差しを受けながら、カイトは豪快にハッハッハと笑って船を出した。




「おっとそろそろだな。アー坊、帆を畳んでくれ」


 カイトに言われるがまま俺は帆を畳んで止めた。海上の真ん中でカイトは海図を確認して頷く。


「よしよし。皆聞いてくれ、この真下辺りがン・ヲカ遺跡だ」

「目印も何もないのに分かるものなの?」

「お嬢、それが分からなきゃサルベージャーとしてやってけねえな。ま、それでも勘頼りの所もあるが、一流ほど勘は外さないもんさ」

「はいはい。で、どうすんの?」


 レイアがそう問いかけるとカイトがこっちこっちと俺達を手招きする、それに従って船尾の方へと行くと、大型の錨とそれを発射する装置があった。船の停泊の為に使うものとは別の物だ。


「いいか?今からこいつを海の底にぶち込む。で、こいつが海底にぶっ刺さって、安全に下りられるなら鎖が緑色に光る。目的地とちょっとズレてると黄色に光る、完全に見当違いで危険だと赤く光る。緑色に光ったら口に潜水球を入れろよ、すぐに下りるからな」


 説明を終えるとカイトは錨を発射した。ドシュッという大きな音と煙が上がる、暫く鎖が下りていくさまを見ていると、カチッと動きが止まって緑色に光った。


「よっしゃ当たりだな。俺の真似してついてこいよ!」


 カイトは口の中に潜水球を放り込み、バッと飛び出して鎖につかまった。するとカイトの体がするすると海中へと沈んでいき、あっという間に上から見えなくなってしまった。


 俺達も顔を見合わせると、意を決して潜水球を口に入れた。そして同じ様に鎖につかまると、体が海中へどんどん引っ張られていき沈み始めた。


 鎖を伝ってどんどん海の底へと沈んでいく。潜水球の効力は本物で、息の心配もなければ目もしっかりと開けていられた。海底へと進むに従ってどんどん日の光りが遠くなり暗くなっていったが、それに従って調整されるらしく、真っ暗にはならず視界は確保出来た。


 下りきった先にはカイトが待っていて、地上で見慣れた遺跡の入り口もあった。カイトが錨を打ち込んだのは入り口のすぐ横、完璧な位置だった。


 カイトは俺達についてくるようにとハンドサインを送った。俺達がそれに頷くのを確認すると、遺跡の入り口へと泳ぎ始めた。その後に俺達は続いた。




 ン・ヲカ遺跡に入ると、中には水もなくだだっ広い空間があった。地上の遺跡とそう変わりない作りで、海の底にあるとは思えない。


「ここが海底遺跡か…」

「中々面白い体験だったろ?」


 正直楽しかった。俺がカイトの問いに頷くと、カイトは満足そうに笑ってみせた。


「一旦服と体を乾かそう。幸い海底遺跡にゃ魔物はいても遺跡漁りはいない、火を焚いても問題ないのさ」


 そういえば何も考えずに飛び込んだけど、水の中で問題なく行動出来ても服などは別問題だ。髪も服もびちゃびちゃに濡れたレイアが、先に言えと怒ってカイトの頭を引っ叩いた。




 火を二つ焚いて俺とカイトはレイアとアンジュの間を布で仕切られた。火をつけるのは薪ではなく、カイトが持ち込んだ特殊な石だった。濡れても問題なく火がつくサルベージャーの供らしい。


「ハッハッハ!いやあ俺ぁ濡れるのが当たり前だったからすっかり言い忘れてたぜ!」

「アーデン、そこの馬鹿火に焚べていいわよ」

「怒るな怒るなお嬢。遺跡に入るのに水着って訳にもいかんだろう?」

「そうだけど、それならそれで最初に言ってくれたら準備も出来たでしょうが!」


 レイアに叱られてもカイトは笑い声を上げるばかりでどこ吹く風だ、これだけ怒られても平気な顔してられるのもすごいなと思いながら、俺は服をギュッと絞って水気を切った。


「なあカイト、ここはどんな遺跡なんだ?場所を知ってるって事は来たことあるんだろ?」

「ああ、あるぞ。というかシーアライド周辺の遺跡は全部入った事がある。ン・ヲカ遺跡にはゴーレムが多くてな、守りが厳重だけどその肝心な守る物が何もない。正直何を守ってるんだかって感じだな」

「でも、文献にはここにニンフに繋がる宝玉があると」

「俺も隅々まで探して回る訳じゃあない。持ち運べる量にも限界があるしな。しかしサルベージャー達が散々探した遺跡に、本当にそんな重要そうな物があるのかねえ」


 カイトには言わなかったが俺にはここにそれがあるという確信があった。シェカドの石板の時も、サラマンドラの手がかりの時も見つけてきた。今回も同じ事をするだけだと密かに気合を入れ直した。

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