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リュデルからの手紙

 三つ目のレ・イイ遺跡攻略の前に、俺たちはリンカから呼び出されて冒険者ギルドへと向かっていた。呼び出されるようなことをしただろうかと疑問に思いながらも全員揃ってギルドへ向かった。


 受付で座っていたリンカは扉を開けて入ってくる俺たちを見つけると、ブンブンと大きく手を振って笑顔を向けた。


「お待ちしてましたアーデンさん!あっ、あなたはあの時の人!」

「よう。アー坊たちから話は聞いたぜ、俺はカイトってんだ、よろしくなリンカ」

「これはご丁寧にどうも!でも本当に案内がなくて大丈夫でしたか?」

「ああ。その辺、うちのお嬢は抜かり無くてな。リンカがしてくれた大まかな説明でもなんとかなったぜ」

「それならばよかったです!」


 やっぱりギルドでカイトの対応をしたのはリンカだったんだな、カイトが愉快な人と表現した時点で確信していたことだったが、それでもやっぱりなと思った。


 そしてこのままでは話が脱線しかねない。俺は無理やり話に割り込んでリンカに言った。


「それで?どうして今日は俺たちのことを呼んだの?」

「おおっと申し訳ありません。このまま別の話をする所でした」


 その自覚はあったのかと喉から言葉が出かけたが、混ぜ返すとややこしくなるので飲み込んだ。ガサガサと紙束を漁るリンカが、そこから封筒を取り出した。


「ありましたありました!こちらアーデンさん宛ての手紙です!差出人はなんとあのリュデル・ロールドですよ。やっぱり仲がよろしいんですね!」

「うーん。まあ、取り敢えず渡してもらえる?」

「はい!どうぞ」


 仲がいいと言われると否定したくなるのだが、その事情を説明しているとまた話が逸れそうだったので俺はもう一度言葉を飲み込んだ。こんなことを続けていたら喉につかえてしまいそうだ。


「えっとリンカ、用事はこれだけ?」

「そうです!…あっ、待ってください。そう言えば先輩から活動報告をって言われていたような」

「じゃあそれは私がやります。アーデンさんたちは先に戻っていてください」

「わあ助かります!」


 アンジュが名乗りを上げてくれてずいっと前に出た。捕まると長いから早くと視線を送ってくる、俺はアンジュに小さく頭を下げてからギルドを出た。




 適当に置いてあるベンチに座って手紙を開封する。アンジュを待つことも考えたが、長引きそうだし先に中身を見ておこうという話になった。


「しかしリュデルの奴、どうして俺たちがシチテーレにいるって分かったんだ?」

「いやそれは違うでしょ。多分あいつロックビルズ宛てにも手紙出してるわよ、どっちかにいるって知ってるんだから」

「成る程!お嬢は賢いなあ」

「この方法賢いか…?まあいいや、ほらアーデン早く」


 レイアに急かされて俺は封筒から手紙を取り出した。広げて皆に見えるようにすると、レイアとカイトは身を乗り出して手紙に食いついてきた。




 久しいなアーデン。形式的に元気かと聞いてもいいが、どうせお前たちのことだから元気など有り余っているだろう。なので省く。


 単刀直入に言おう、僕は四竜の印を集め終えた。そちらがどうか分からないが、知らせておく必要があると思ってこの手紙を書いている。


 印を集め終えたという意味言わずとも分かるだろう。しかし安心しろ、僕はまだ伝説の地へ向かう気はない。


 と言うよりも行けないと言った方が正しい。これは僕に限った話じゃあない、アーデンたちも同じことだ。四竜の印を揃えて伝説の地へ向かうには大きすぎる問題を残している。


 グリム・オーダー首魁シェイド・ゴーマゲオ。こいつを打ち倒すか無力化させなければ伝説の地へたどり着くことは叶わない。言われずとも分かっているだろうがな。


 シェイドは今、虎視眈々と僕たちの印を狙っていることだろう。そして事を起こす時、動かす駒はエイジション帝国そのものだ。この大駒を切ってこない理由がないからな。


 エイジション帝国を相手にして僕たちに勝ち目はない、加えてグリム・オーダーの力がある、どれだけ個人で力をつけたとしても押しつぶされて終わりだ。


 戦うために準備する必要がある。僕は今オーギュスト様の元でその準備をしている。シェイドの魔の手から帝国を取り戻し、過去の亡霊から開放しなければならない。


 アーデン、僕はその作戦にお前たちの戦力も必要だと考えている。お願いだ、どうか僕たちに力を貸してほしい。これは嘘偽りのない僕の本心だ。


 もし力を貸してくれるのなら、四竜の印を集め終えた後エイジション帝国まで来てくれ。僕は来ると信じて待っている。ではまた会おう。




「そうか…、リュデルはすでに印を集め終えたのか」


 いつも一歩先にいかれている気がしていたけれど、事実として突きつけられると悔しい気持ちが湧いてくる。競争という訳ではないが、それでもやっぱりリュデルに負けるのは悔しい。


「しっかし坊ちゃまにしちゃ殊勝な態度だったな」

「それだけ切羽詰まってるってことでしょうね。まあ確かに私たちにとっても無関係な話じゃあないか」

「義理を欠くことになるがリュデルの要請を無視するって手もあるぞアー坊」


 俺はカイトの発現に驚いた。しかし俺以上に驚いていたのはレイアだった。


「はあ!?あんた何言ってるのよ!!」

「お嬢よ、俺たちの目的は何だ?伝説の地に向かうことだろ?それに先に秘宝を取っちまえばシェイドの企みを防げるんじゃあないか?」

「それはっ…!」


 レイアが声を上げる前に俺はそれを手で制して止めた。カイトの意図も汲み取って敢えて言う。


「それは駄目だカイト。言ってることは分かるけど、ここで俺たちが引くことだけはしちゃいけない。リュデルが自分を曲げてでも俺たちに助けを求めてきたのならなおさらだ」

「ふむ」

「それにリュデルが手紙に書いている通り、俺たちが伝説の地を目指す以上シェイドが立ちはだかるのは目に見えている。後顧の憂いを断つためにも、過去からの因縁を断つためにも、シェイドに立ち向かわないという選択肢はないよ」

「そうか。分かったアー坊の意見に従うよ」

「カイトあんたわざとこんなこと言ったんでしょ?向いてないことするんじゃないわよ!」


 怒るレイアはカイトの頭をぽかぽかと叩いた。それを笑いながら受けるカイトを見て俺はため息をついた。


「大体カイトだってシェイドを放置するつもりなんてないんだろ」

「そりゃそうだ。俺ぁあいつをぶっ飛ばして過去にケリをつける。それでもよ、あらゆる可能性を考えておくって大切だろ?」

「分かってるよ。カイトの言いたいことも伝わってきた。だけどそういうのはアンジュがもっと上手くやってくれるから任せておけよ」

「だな!アンジーがここに居たら怒られそうだ!ハッハッハ!」


 そう豪快に笑い飛ばすカイトを見ている内に俺たちも段々可笑しくって笑った。お陰で悔しい気持ちはどこかへ吹っ飛んでいた。もしかしたらカイトの狙いはこっちだったのかもしれない、真意は分からないけれど気持ちは楽になったし助かった。


 そうしている内にアンジュが小走りに駆けてきた。こっちだと手を振って誘導し合流すると、リュデルからの手紙を見せて内容を説明する。


 俺たちはそのまま短い作戦会議を開く、方針は定まっているので時間はかからない。最後のレ・イイ遺跡の攻略を急いでゲノモスから印を授けてもらう。そして次の行き先はエイジション帝国だ。


 そうと決まれば話は早い、俺たちは準備を整えると遺跡へと向かった。最後の遺跡攻略が始まる。

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