閑話⑤ 体育祭のやり直し 春野姉視点
体育祭編はこれにて完結です。
かなり長くなりました。原稿用紙8枚(7枚と少し)ぶんです。
ゆっくり読んでください。
※後書きにわりと重要なことを書いていますので最後まで読んでいただけると嬉しいです。後書きも長いです。
ゆっくり読んでくれればそのぶん私もゆっくり投稿できるので((殴
「えっ?何が起きたの?」
本当に何が起きたのかわからなかった。親友の瑠璃のために学年対抗イサギくん争奪リレーにアンカーとして出場することになった私は2年生と接戦だった。1年生のアンカー、イサギくんはこの学校の校風を逆手にとった奇策で前の走者からバトンを受け取り1200mを走っていた。それでも追いつけるわけがない。私は2年生のアンカーを振り切りゴール手前50mに差し迫っていた。
私はバレー部の部長として、一選手として、強化選手にも選ばれるくらいになるまで日々鍛えてきた。イサギくんの凄さは瑠璃から何度も聞いている。だけど、さっきまで謝りながら寝てしまうくらいに消耗していたのに…私の方が前にいたのに…
「どうして、君が前にいるの…?」
「紫苑!お疲れ様。惜しかったね」
瑠璃は私の健闘を称えてくれた。それだけで私は満足だった。いつもの私ならそうだった。けれど今日は違う。知りたい、何が起きたのか。
「瑠璃、最後の50m、何が起きたの?」
「うん…それがね、私も目を疑ったんだけど…イサギくんが…」
「うん…」
「イサギくんが…ハンドスプリングをしたの」
「…え?どういうこと…?」
「紫苑、イサギくんに後ろから声をかけられなかった?」
そういえば…
『わりぃ!菜花のねーちゃん!肩借りるぜ!』
って言ってたような…
「確かに声をかけられたかも…それでその後…」
私はよく思い出してみる。肩を借りると言われて…
「彼が私の肩に両手を置いた後に…両足が頭の上を通過して…」
「そう…イサギくんは紫苑の前…というよりゴール前に着地したの」
「そんな…」
「それをやるだけでもかなり凄いことなのに、イサギくんが着地したと同時に上からバトンが降ってきたの」
そんなことができる人がいるの?バトンを投げるタイミング、角度、着地地点を残り50mで、数秒で頭の中で計算したってこと?
彼は本当に何者なの?
「すいませーん」
「わぁっ!イサギくん…!!」
こめかみに手を当て考えていると1年生の男の子が駆け寄ってきた。件のイサギくんだ。瑠璃は…あぁ、やっぱり目を輝かせている。本当に王子様からお姫様になっちゃったのね。
「怪我ないですか?あ、瑠璃先輩、お疲れ様です」
そんな瑠璃のこと、ついでみたいな扱いしたら泣いちゃうよ?ところで…
「怪我って?なんのこと?」
「肩、強く押しちゃったかなぁって思って。確かバレー部ですよね。大丈夫でしたか?」
あぁ…彼は心配してくれてるんだ。あんな逆境を乗り越えた後に真っ先に私の体を心配してくれるなんて優しい子なんだな。
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう。それより足速かったんだね。体力もないって言ってたわりに1200m走り切るなんて」
「足は速くないですよ。体力もないですし」
「そんなに謙遜しないでよ。長年バレーやってる私が惨めになっちゃうじゃん」
ほんとに謙遜しないでほしい。褒めてるんだから素直に受け止めてくれないと…
「おーい、撫子!預けたもの持ってきてくれー!」
イサギくんが義妹の撫子ちゃんに何か預けてたみたい。それが何なんだろ?
「ちょっとー!人使いが荒いよ、イサギっち!こんなに重いと思わないじゃん!!」
「あー、やっぱ、重かったか、ごめんな」
「むぅ、貸し1ね!」
「へいへい、わぁーったよ」
仲良さそうで羨ましいな…
「それで、紫苑先輩、これが何かわかりますか?」
「君がつけてるリストバンドじゃないの?」
「まぁ、そうなんですけど、持ってみたらわかります」
そういえば今もリストバンドつけてるのになんでここにリストバンドが…?
「重っっっ!!!こ、これって…」
「リストウェイトとアンクルウェイトです。これを普段からつけています。なのでいつもは体力もないし、足も速くないですよ」
つまり、日常生活においても負荷をかけながら動いてるってこと!?この子…意外とドM…?
「じゃあ、午前の持久走はなんでバテバテだったの?」
「ふふふ、それはですね…」
「う、うん…」
「ただ単に外し忘れただけです!」
「ぷっ…あはははは!!!おもしろいね!瑠璃が気に入るのもわかるかもね」
変な男の人たちと戦ってる時はクールだったのに、素は天然なのかな?この子、ほんとに掴めないなぁ…
「瑠璃先輩は男が物珍しくて俺に言い寄ってるわけじゃないんですか?」
「違うもん!」
「さ、さいですか…それより俺が勝ったので賞品は無しですね!」
「あー!!!忘れてた…」
瑠璃が1番重要なことに気づいて項垂れてしまった。
「そんなにしょんぼりされるとこっちの胸が苦しくなるんですけど…」
「潔、おつかれさん。賞品の件、どうする?」
校長先生である前に母親でもある疚無先生がイサギくんに賞品について聞いてきた。リレー開始前に言っていたことはイサギくん自身のやる気を出させるための冗談だったということだろう。
「もちろん無し!白紙にするに決まってる!」
あらら…瑠璃…泣きそう…見てられないよ…
「まぁ、そうだろうな。了解した。今日はもう帰っていいぞ。気をつけてな」
「「「お疲れ様でした〜」」」
「さてと、撫子、帰るか」
「そ、そうだね、でも、いいの?」
「なにが?」
「瑠璃先輩…泣きそうになってる…」
「イサギくん…親友の私からもお願い」
「はぁ…わかりましたよ、紫苑先輩には迷惑かけましたからね」
ふふっ、やっぱり良い子だな。
「じゃあ、紫苑先輩、今度1日デートしましょう」
へ?
「「「えっ?」」」
「紫苑…ぐずっ…裏切り者ぉ…」
「イサギっち…?なんでそうなったの?」
「瑠璃!落ち着いて!イサギくん、私は別に…」
「話は最後まで聞いてください。紫苑先輩、1日デートしましょう。ただ俺、デートの経験がないので紫苑先輩の友人でその手のことに詳しそうな人がいたら連れてきてもらってもかまいません。でも1人だけでお願いしますね」
「えっ、それって…」
「いざぎぐん…」
「んじゃ、おつかれしたー…やれやれ、女ってのはめんどくさいな…」
「2人ともお疲れ様でした!イサギっち、ツンデレ〜」
「ち、ちがう!俺はツンデレじゃない!」
「ふふっ、イサギくん、最初からああするつもりだったんだろうなぁ」
「ほんとに彼は意地悪だよ…でもそういうところが…」
「惹かれちゃうんでしょ?」
「そうなんだよ!彼はね…」
少し共感したら瑠璃は彼の魅力をたっぷりと教えてくれた。どれだけ好きになってしまったんだろうか。恐らくイサギくん愛の強さで瑠璃に勝る者はいないと思う…
~帰り道にて~
「ところでイサギっち、ゴール前のアレって、ぶっつけ本番でよく出来たね?」
「えっ?そりゃできるだろ」
「なんでそう言い切れるの?」
「そりゃ、お前…」
「フィクションだからな」
「過去一メタいね…」
いつも読んでくれてありがとうございます。
気づいた方もいると思いますが言ってなかったので…閑話のナンバー付けをリセットしました。あまりにも多すぎてわからなくなってしまうからです。本編のナンバー付けは引き継いでいます。
※この小説はフィクションです。本編は現実世界でギリギリありそうでなさそうな恋愛コメディのストーリー構成でお送りしていますが、閑話では主人公が人間離れした技を繰り出す時があります。そして、閑話は特にメタいです。本編にあまり関係がないので登場人物がやりたい放題言いたい放題しています。温かい目で見守ってください。
※走っている人の両肩に手を置いてハンドスプリングするのは絶対にやめましょう。そもそもやっている人を見たことがないのですが、かなり危険です。繰り返しますが、この小説はフィクションです。作者は責任を一切とりませんのでご注意ください。
次話から温泉デート編です。
入浴描写に期待しないでください。
というか、まだ入浴しません。
4時更新です。




