55話 孤独以上に寂しいと感じるものは無い
飛んできた矢にかけられたレジ袋からコンタクトレンズを取り出しメガネを外し着用した。
「視界良好。バイタルは安定。体調は…不良。よし」
さて、第1種目は徒競走だったか。徒競走といえば男女別で行われるものだった気がするが…
『第1種目の徒競走は女子はクラス別で男子は持久走と徒競走を同時に行うものとします。女子は準備が出来次第、位置につきなさい』
待て。落ち着け。俺、落ち着け。震えよ、止まれ。今なんて言ったんだろうか。『男子は持久走と徒競走を同時に行う』?聞き捨てならないんだが。どういう日本語を使えばそうなる?別種目を同時にとは?てか、男子って俺だけじゃね?
『1年D組 疚無 潔くん、位置につきなさい』
ほら!俺じゃん!!
『また、一般の方で参加したい方は男子生徒の隣に並んでください』
「………」
持久走に臨んで参加する物好きなんているわけないだろ!!
「イ、イサギっち、なんていうか、頑張って!」
「潔くん!ファイト!」
「撫子、愛…さんきゅ。骨は拾ってくれ」
「「死なないでね!?」」
この体育祭…体育戦と呼ばれるだけあって何かしら鬼畜要素がある気がする…気を引き締めねば死す…!
『On your mark』『Set』
―パン!
スターターピストルが空気を揺らし、俺の初めての運動会は今始まった。まさか1人で走ることになるとは思わなかったけど。確か男子は2000m、グラウンドのトラックは1周400mだから5周走ればいいんだな。無理だな。走りきる前に死んでしまう。
「それにしても走らないという旨は事前通達してたはず…これは裏で手を引くものがいる…かもしれない」
深読みで終わればそれでいい。しかし、あからさまに体力を削りに来ている気がしてならない。
一方、海は…
「はい、ねーちゃん、アイスクリームいっちょうあがり」
「わぁい、ありがとう、おにーさん」
「アニヘラ」という名前でアイスクリームを売っていた。先程言っていた営業とはこれのことだった。1つ100円という破格の値段でぼろ儲けを狙っていた。
「ところで、ねーちゃん達は応援行かないの?」
「今走ってるのって疚無 潔くんですよね」
「私はタイプじゃないし別にいいかなー、おにーさんの方がタイプかも♡」
「あっはっは、嬉しいけど今は間に合ってるんだわ」
海は小指を立てた。
「それで、何が気に食わないの?」
「なんか実力隠してる感じが嫌いかな。日頃から何事も全力投球ならタイプだったんだけど〜」
「…なるほどね。あんたは?」
もう1人の女子生徒に目を向けると彼女は急に
「私は…その…正直、仲良くなりたいです」
「仲良くすりゃいいじゃん」
「でも、できないんです」
「なんで?」
「手のひら返しがどうのこうのって…」
「あぁ、いつものか」
「いつものって?」
「アイツはちょっとしたトラウマ抱えててさ、そこは許してやってほしいなぁ。俺が解決策を教えるよ」
「あの、おにーさんって、疚無くんの身内の方ですか?」
「『アニヘラ』っていう名前じゃ気付かれないのかぁ。潔の兄って意味だったんだけど…」
「えっ!?そうだったんですか!?」
「そうそう、それで解決策っていうのは…」
海は女子生徒に耳打ちをして解決策を教えた。
「えっ?たったそれだけ?」
「そ!たったそれだけ!」
「まぁ、それだけのことができないのが人間なんだよな…」
アニヘラの由来は秋田県名物「ババヘラ」です。これを出すと作者の生まれがわかってしまうし、舞台になっている(勝手に舞台にしている)高校がバレてしまうかもしれないのでちょっと心配です。別にバレてもいいんですけどねっ!むしろバレた方がイメージしやすくなるからいいかも?
いつも読んでくれてありがとう!
鬱陶しい後書きまで読んでくれたらさらにありがとう!
次話0時更新!
実は別ジャンルの作品を連載し始めました…
そちらもよろしく…




