54話 パフォーマンスは安全第一で。
―ピンポンパンポン
『9時半から体育祭の開会式を始めます。生徒は運動場に集合してください。繰り返します…』
「ふぅ…いよいよか…」
やっとこさ体育祭の開会式が始まるらしい。交通整理と警備の仕事で既に汗だくだ。生徒の親御さんなのか参加者なのかわからないが、一般市民も増えてきた。
「潔くん!おはようございます!」
丁寧に挨拶してきたのは小柄なわりに出るところは出てて抱きしめたくなる体型の明石 愛。瑠璃ではないが、愛は持ち帰りたくなる。持ち帰って何をするかなんて言わずともわかるだろう。なに、卑猥なことはせん。ただ堪能するだけだ。
「おはよう、愛。準備は万端か?」
「はい!バッチシです!」
「愛の親御さんは来るのか?」
「はい!もう来ていると思います!」
「そうか。じゃあ後で紹介してくれ」
「しょ、紹介ですか!?そういうのはまだ早いのでは…」
なぜ「紹介」という2文字で皆モジモジしてしまうのだろうか。女子というのはよくわからない。
「たぶん疚無と言えばわかると思うぞ」
「なぜ、名字で…?」
「そこそこ有名だから?かな」
「潔くんの家は名家なんですね」
「何の名家なのか、僕にもさっぱりわからないけどね」
いや、これが本当にわからない。誰か教えてくれ。
「そういえば今日はメガネをかけてるんですね」
「あぁ、今だけね。僕としたことがコンタクトを忘れてしまってね…」
「そ、それは大変ですね。でもさっき唐草先輩と話してませんでしたか?」
「あぁ、それは…」
俺は鼻と耳を指した。
「嗅覚と聴覚ということですか?」
「理解が早くて助かるよ」
「ちょっと引きました…」
引かれると思ってたけど、言葉にされると悲しいな…
「人間の五感っていうのはどれかを失ったり弱体化すると他の感覚が補おうとするんだ。果たして本当に補えているのかどうかはわからないけどね。今僕は視覚が弱体化している状態だからそのぶん、嗅覚と聴覚がちょっとだけ冴えてるってわけだよ」
「な、なるほど。でもそんなの日頃から感覚を研いでない限り土壇場でできることでは無いのでは?」
「まぁ、そういうことになるね」
愛に補足説明をしてどうか引かないでくれと心から願っていたら時間になっていた。
『えー、これより開会式を始めます。これから音女高校体育祭を始めます。んじゃ各自準備運動して第1種目は徒競走。てことで、よろしくー』
「「「軽っ!!」」」
「今年はいつにも増して軽くないか?」
「たぶんプログラムが大量にあるんだと思うよ」
などと一般の参加者から様々聞こえてくる。
『ちょっと待った。そこのお前、忘れ物だ』
―シュッ
俺は横を向いていたが、矢が飛んできたのがわかった。鏃は丸くなっていて安全性を考慮したものだが、それでも人に向けて撃つものではない。
―パシッ
「あぶねっ」
受け止めた矢にレジ袋がかけられていた。中身は…
「こ、コンタクトレンズ…」
安全性を無視したパフォーマンスに腹が立ち思わず怒鳴ってしまった。
「あぶねぇだろうが!クソガキが!!普通に渡せや!!」
『最短距離だった』
「あぁ、なるほど」
後ろで「ズコー」という古臭い効果音とともに大勢の生徒が足を滑らせた気がした。
次話からいよいよ体育祭本祭スタートです!
12時に更新します。
実はもう60話まで書いた。
今日から1日2話投稿になります。たくさんの人が読んでくれると嬉しいっす!!




