30話 男の子は「覚醒」という単語に惹かれる説
日付変更と同時に投稿しようと思ってゲームしてたらいつの間にか日を跨いでました。すみませんでした。
「ふっ、無様だな、疚無 潔」
ひでぇ。教師が言うセリフじゃねぇよ。もっと労ってくれよ。
「グズマ先生、それはさすがに酷すぎます。イサギっちはイサギっちなりに頑張ってるんですよ」
「黙れ!男なら男らしくせんか!」
グズマ先生は女性なんだけど、男に何か恨みでもあるのかな?やけに俺にだけ厳しいけど。せっかく撫子が庇ってくれたのに…
「撫子、庇ってくれてありがとな。それとグズマ先生、申し訳ないですけど全力は出せないです」
「ふざけるな!最後の種目は全力を出せ。さもないと決闘だぞ」
「ふざけてないし、決闘はアンタがやりたいだけだろ…さっさとクビになればいいのに」
また心の声が出てしまっていたため案の定グズマ先生を逆撫でしてしまった。
「貴様…!!そんなに死にたいなら今すぐ殺ってもいいんだぞ?」
俺の胸ぐらを掴み上げてそう言い放ったが、やはり教師が言うようなことじゃない。教師が生徒に向かって「殺る」って言うなよ。よく教員免許とれたな。
「とりあえず握力測定していいっすか」
「全力を出せ、疚無 潔」
「だから、出せないんだってば。話聞けよ、オレンジ筋肉バカ」
もうここまで怒らせたんだ。何を言ってもいいだろう。
「撫子、頼みがある」
「どうしたの?」
「校長を呼んできてくれ」
「…!了解!」
小声で撫子にSOSを出しておいたので「ざまぁ」が出来そうだ。
「相方に逃げられたぞ、いいのか?」
「僕は相方を信じているので。余計なお世話ですよ」
「ふん、さっさと測れ」
「いきますよ…ぐっ…」
「…20kg?ほんとにこれしか出んのか?」
ほんとにこれしか出ないんだが。
「男子が握力20kgはやばくね?」「あんだけ細いんだし無理ないよ」「やっぱ超だせ〜」
「なんと言われても今はこれだけしか出ないです」
「ふっふっふっ、決闘決定だな」
「もうなんでもいいので早く終わらせてもらえませんか?」
「そのふざけた授業態度を教育してやらんとなぁ!!」
すぐに決闘は始まった。他の場所で体力テストを行っていた生徒はギャラリー席に集まってきた。当然知っている顔もいた。アカシアちゃん、立花姉妹、エセ登山部の委員長軍団に白根…
「!?」
俺は目を疑った。なぜ今ここにアイツがいる?ギャラリー席の中に男がいた。この学校は生徒はもちろん教師を含めても男子は俺1人。つまり部外者ということになる。もはや決闘云々ではない。部外者の男はフードをかぶっていたが、小学生と見間違えてしまうほど小柄だった。そしてひとつだけめちゃくちゃ怪しい部分があった。男は…弓を背負っていた。
アイツは…愚弟だな。本来「愚弟」とは謙った言い方なのだが、中学生が平日に、ましてや月曜日にこの場にいるなんて本当に愚かな弟だ。
「どこを見ている!疚無 潔!」
「あぶねっ」
グズマ先生が掴みかかってきたので俺は紙一重で躱す。
「余所見をするな!」
「なんでそんなに血気盛んなんですかっ」
「貴様の授業態度が気に入らんからだ!」
「たぶんそれだけじゃないですよね!!」
「あぁ!それだけじゃない!だが、今話すことでもなかろう!」
はぁはぁ…さっきからグズマ先生の手を右に左に躱しているが…躱し続けるのも難儀なものだ…体力が削られていく。
「どうした?躱すことしかできないのか?ふっ、やはり疚無 潔、貴様は勉学も運動も出来ない能無しだな」
この人はほんとに教師なのか?魔王のようなラスボスとかじゃないのか?母さんは本当にこの人を雇ったのか?直々に面接したのか?
「お前のような愚鈍で馬鹿な男に付き合っている女の目も腐っているな!」
―――カッチーン
「グズマ先生、それは違います。僕は確かに愚鈍で馬鹿な男かもしれない。けれど彼女らを愚弄しないでいただきたい」
「なんだ、そのくさいセリフは」
「いや、そう言われると非常に恥ずかしいんですけど。空気読んでくれません?」
「本気を出してくれるのか?」
「本気を出させることが目的なんですか?」
何を考えているんだ、この教師は。
「イサギっち!もうすぐ来るって!」
「ふむ、あいつを人質にするか」
「あ!おい!撫子!逃げろ!」
「へ…?きゃっ…!」
「撫子!」
「疚無 潔、本気で私と闘え。さもないとコイツをボコボコにする」
コイツ、絶対教師じゃないだろ。撫子を人質にとったぞ。悪役なんだけど。
「ククッ、最低だな、アンタ」
ギャラリーから男の声が聞こえた。
「確かにアイツの本気を出させるためにはそれが手っ取り早い。けど、それだとアイツに本気を出させすぎてしまうから覚悟しといた方がいい」
「なんだ、お前は。部外者か?」
「俺の事よりも自分の心配をした方がいいんじゃないか?」
「はっ…?ごふっ…」
瞬間グズマの腹に拳がめり込み、腹を抱えて倒れ込んだ。
「なっ…誰が…」
「はぁ…あんまり本気出したくなかったんだけどなぁ…」
「疚無 潔…!?何をした!?」
「なにって…普通にお腹にパンチしただけですよ」
「この威力が普通なわけ…カハッ…」
「当然だろ、女を人質にとられて俺が普通の威力のパンチをするわけないだろ」
「いったい…どういう…」
「寝てろ、カス」
「撫子、大丈夫か?」
「イサギっち…メガネが…」
「あぁ、グズマ先生と距離を詰めた時に落ちたんだろうな。俺のことはいい。怪我はないか?」
「ありがとう。助けてくれるって信じてた」
「さんきゅー、愚弟」
「礼には及ばねぇよ、愚兄」
今回ばかりは愚弟に助けられたな。




