閑話⑦ 撫子が見たイサギ
撫子視点です
私は日出草 撫子。つい数時間前に出会った同級生の家に暮らすことになってしまった。しかも男子。彼は私を女として見ていないのかそれとも照れ隠しなのかわからないけれど「しばらくここで暮らしてくれ」と言われたからとりあえず従うことにした。
ヤバい。普通に緊張する。ギャルなだけでそういう経験とかないし、なんなら向こうを誘った時もこわかったから断ってくれた時は助かったって思った。
「撫子」
「ひゃ、ひゃい」
緊張して噛んじゃった…
「大丈夫か?」
「う、うん」
「俺、先に風呂入っていい?」
「どどどどどうぞ」
「本当に大丈夫か?震えてるけど、寒いなら先入るか?」
「いや!大丈夫だから!ごゆっくり!」
「そ、そか」
何もないだろうと思ってもさすがに緊張する。あれ?今「俺」って言ってた?一人称「僕」じゃないの?
「あがったぞー」
「お、おかえり…なさい」
「撫子も入ってこいよ。俺、布団敷いとくから」
また「俺」って言った。
「あ、あのさ!」
「どしたー?」
「やっぱなんでもない!」
「りょーかーい」
彼の入った浴槽…何も無い何も無い何も無い…
「ふー、気持ちよかったー」
「おー、さっぱりだなー。いい匂いするぞー」
急に近い!そしてクンクンされた!変態!?天然!?
「ちょっ!そんなに嗅がないでよ…」
「ごめんごめん、いい匂いだったからついつい」
「てか、同じシャンプーじゃん」
「それもそっかー」
無意識かな?やっぱり天然っぽい…
「んじゃ寝るぞー」
「うん」
って、布団隣り合わせ!?ほんとに天然なの??普通もうちょっと離さない!?
「ねぇ、布団近くない?」
「嫌なの?」
「別に嫌ってわけじゃ…」
「嫌なら俺、玄関で寝るけど」
「嫌じゃないから隣で寝て!」
「りょーかーい」
確信した。彼は天然だ。このセリフ、普通なら男女逆なのに。私だけ照れててバカみたい…
「ねぇ」
「どした?」
「一人称変わってるけどどうして?」
「あー、メガネない時の一人称は俺なんだよ。普段は僕だけど」
「なんで?」
「なんでだったかなぁ」
むー、はぐらかされた気がする。
「ねぇ」
「zzz」
「え、はやっ」
なんで寝る時までリストバンド付けてるか聞こうとしたのに。いいや、ちょっと見ちゃおっと。
「…!?これって…」
私は彼のリストバンドの下を見てしまったことを少し後悔した。天然で脱力系な彼にも闇はあるんだなって思った。でも、私のためにアクションをおこしてくれる彼にはとても感謝している。
「イサギっち。私のためにいろいろありがとう。イサギっちが困ってる時は私が力になるから」
私は彼に語りかけるようにそう言った。




