164話 なかなか交差しないのもまた運命
今回はたくさん視点が切り替わりますが、ほとんど三人称視点です。読みにくかったらごめんなさい。
「瑠璃…光…」
「どうしたんですか?」
「なんだい?潔くん」
「ちょっと…リハビリがてら出かけてくる」
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「お父様、お散歩に出かけてもよろしいでしょうか?」
ウイエ家の三女ローズの提案に父ヴィヨレは腕を組んで考える。
「ふむ、この街は治安がいいと聞くしローズひとりでも大丈夫だろう。気をつけて行くんだぞ」
「はい!ありがとうございます、お父様!」
「本当に大丈夫かしら…」
「ブルー、お前は心配しすぎだ。可愛い子には旅をさせよと言うじゃないか」
「あなたがそう言うのなら…」
母ブルーはヴィヨレの説得に押し負け渋々納得した。
「ところで、ブロンシュはどこに行ったのかしら?」
「ふん、出来損ないはほうっておけ」
「ブロンシュは出来損ないなんかじゃ…」
「何か言ったか、ブルー」
「いえ、なにも…」
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「ジョーヌが突然いなくなるなんておかしい…やっぱり何か企んでいるのかも…」
ブロンシュは桔梗家に行く前にジョーヌが「運命の人」と言っていたのを思い出した。ジョーヌは良くも悪くも他の人より飛び抜けて頭が良かった。ただその才を人を煽動し操ることに使ってしまったのだ。
「もしかしたら、この街に来る前に誰かとコンタクトを取っていた…?でもなんで…運命の人ってどういうことだろう…」
歩みを進める足を止め少し考える。
「もしかして、私を完全に追い出そうとしている…?じゃあ、運命の人っていうのは、次なる…」
ブロンシュは再び歩き出す。
「急がないと…!急がないと犠牲者が出てしまう…!」
ベージュのワンピースの裾を持ち純白の淑女は走り出す―
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「へぇ、ここが商店街というところなのね」
ローズは音女市の商店街に来ていた。
「随分と田舎くさい…お父様はどうしてこんなところを選んでしまったのかしら」
ローズは音女市が故郷よりも田舎であることに不満があった。
「こんなド田舎の何がいいのかしら。大人は何を考えているのかさっぱりだわ」
不平不満を言いつつも見て回るローズ、姉妹各々の担当色のワンピースと髪色は田舎者の目を惹いた。
「ふふん、田舎者どもが私を見てるわ」
小さき可憐な少女は態度の大きい高慢な阿婆擦れであることをまだ誰も知らないだろう。
「はぁ、それにしても…いえ、やはりと言うべきかしら。この街に私が求めるものはないわね…」
彼女の言う「求めるもの」…それは…
「よくよく考えたら、考えなくても冷静になればすぐにわかることだったわ。ここに白馬の王子様はいない」
意外なことに彼女は態度が大きく高慢であっても年相応の夢を持ち合わせていた。
「この街って本当に治安が良いのかしら?路地裏ははぐれ者の巣窟だったりして…」
興味本位で路地裏に入り込んだのが彼女の間違いであり…運命の分岐点だった。
明日以降は朝6時と夕方18時の2話投稿体制にしようかなと思ってます。もしくは朝4時と夜19時とか。出勤前或いは出勤中と帰宅後或いは帰宅中、通学前或いは通学中と帰宅後或いは下校中のスキマ時間に読んでもらうのが私の理想だからです。その割には長ったらしい物語になるのは本当にごめんなさい。