160話 ジョーヌ、例のアレを使う
最近面白いタイトルが思いつかないので超まともなタイトルがこれから増えるかもしれないということを心よりお詫び申し上げます。
ヴィヨレさん、ブルーさん、ローズちゃんを客間に通し雑談をしていると男の子の声が外から聞こえてきた。何かを叫んでいるようだ。
「ごめんください!遅くなって申し訳ありません!」
「あら、誰かしら」
「この声は…すみません、桔梗さん。遅ばせながら愚息が到着したみたいです。連れてきてもよろしいでしょうか?」
「もちろんでございます」
「まったく何をやっていたんだ、ジョーヌ!早く入ってご挨拶を…む、ブロンシュも一緒だったのか」
「は、はい、お父様。遅くなってしまい申し訳ありませんでした」
「私にではなく桔梗家の御二方と疚無家の御二方に謝りなさい」
どうやら2人の子供が到着したみたいだ。
「到着が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。僕はジョーヌ・ウイエ、ウイエ家の末弟にあたります」
「…私はブロンシュ・ウイエ。次女です…」
末弟のジョーヌくんは髪が山吹色の少年。私と同い年か1つ年下くらいしか歳は変わらなさそう。ボソボソと小さい声で話すブロンシュさんは驚くべきことに肌も髪も白く目は灰色でまるで雪そのもののような女性だ。
「ふっ…」
「…?」
ジョーヌくんと目が合い少し気まずかったので軽く会釈をした。彼は口端を少し上げて微笑んだ。ジロジロと見すぎてしまっだろうか。
再度自己紹介を終えた私とお姉ちゃんと光先輩は自室に移動した。
「めっっっっちゃ緊張したぁ…」
「私もです。まさか海外からいらっしゃった方々とは思いませんでした」
「はぁ…疲れたわぁ」
「お姉ちゃん、かっこよかったよ!」
「ありがとう、撫子ちゃん。でも疚無家に来た時に同じことやらないといけないと思うと…辛いわぁ」
「ほんとそれ。慣れない格好は疲れるね」
「そーれーにーしーてーもー!撫子ちゃん、着物似合うねぇ。写真撮っていい?イッサにも見せたいからさ!」
「えー!お兄ちゃんに見せちゃうの!?マジ恥ずいんだけど!」
「大丈夫だって!絶対待ち受けにするよ!」
「ほんとかなぁ…」
「ほんとほんと!それに今ならイッサの幼少期の写真見せちゃうよ?どおどお?お得じゃない?」
「ゴクリ…それは見たいかも…」
「わ、私も見たいです…イサギくんの小さい時の写真…」
「じゃあじゃあ、2人ともそこに並んで!写真撮るから!」
私はお姉ちゃんの交渉術にしてやられてしまった。私と光先輩のツーショット着物写真と引き換えにお兄ちゃんの子供の時の写真を見せてくれるというのでついつい…お兄ちゃん、ごめん!でも、これは私個人の興味でもあるから!!
―コンコン
女子3人でキャッキャと騒いでいると戸をノックされた。
「はい、どうぞ」
「失礼します。先程ご挨拶したジョーヌです。ナデシコさんとお話したいのですがよろしいでしょうか?」
「は、はい。大丈夫ですけど…」
「それでは御二方、彼女を少しお借りしますね」
ナデシコさん、指名入りました〜的な軽いノリじゃなさそうだけど…
「コホン、突然名指しで連れ出してしまい申し訳ありませんでした」
「い、いえ。それでお話とは?」
「…あなたに一目惚れした!僕と付き合ってくれ!」
「………は?」
突然?一目惚れ?好意を向けられるのは嬉しいけど…私には心に決めた人がいるから丁重にお断りしよう。
「えっと…ごめ」
「おっと、すまない。いきなりで困惑したよね。改めて自己紹介しよう。僕の名前はジョーヌ。フランスから来た大富豪ウイエ家の長男だ」
いきなり口調が変わったことに困惑してるんだけど。てか、大富豪って自分で言っちゃう?
「あの…気持ちはうれ」
「君が欲しい物は全部与えられると思うよ!何が欲しい?とりあえずお金は欲しいだろう?次に地位だろう?あとは…」
「ちょっと…」
「そうだ、家だ!君は貧相なアパートに住んでいて窮屈な思いをしているだろうから家をあげよう。僕はあのような男と違う。なんでも与えられるよ」
は…?貧相なアパート…?あのような男…?さっきから人の話も聞かないで…
「いい加減にして!あんたみたいな男が1番嫌いなの!」
「な、なんだって!?」
なんで衝撃受けてんの?自意識過剰すぎるでしょ。
「それじゃあ、話は終わりだから。さよなら」
「ちょ、ちょっと待ちたまえ!」
私は踵を返しジョーヌには目もくれずに部屋に戻ろうとした。
「待てと言っているのが聞こえないのかい?ナデシコ」
「んぐっ!?」
鼻にハンカチのようなものを当てられたところまでは覚えているがその後の記憶はない…
例のアレです。ホロロホルルみたいな。ちなみにホロロホルルって言ってわかる人います?