閑話③ 白根と愛、その頃潔は…
しばらく閑話を挟みます。
1日1話の投稿を目指していますが、日付変更ギリギリになるかもしれないので期待せずにお待ちくださいm(_ _)m
~ある日の休み時間~
明石 愛は白根に体育祭で懸念していることを相談していた。
「白根ちゃん」
「愛ちゃん!どうしたの?」
「体育祭のことなんだけど…」
「体育祭がどうしたの?」
「音高の体育祭のことって潔くんは知ってるの?」
「あぁ、そのことね。たぶん知らないと思うよ」
愛にとって最近はある意味刺激的だった。
(潔くんが音女高校の体育祭の壮絶さを知らないなんて…)
音女高校は「自由」という校風が売りで有名である。授業に出るかどうかは自由だが、学校行事は必ず参加しなければならないのだ。これでは「自由」ではなく「強制」ではないかと思われるだろうがそうではない、学校行事の内容が「自由」なのである。
中でも体育祭は毎年自由すぎるが故にこのように呼ばれている…「体育戦」と。
「教えてあげなくていいの?」
「体育祭が体育戦って呼ばれてるなんて知ったら絶対休むと思うよ」
「でも病欠や公欠以外で休んだらペナルティが…」
普段授業に参加していても学校行事をサボるとペナルティが下される。音女高校は規則に緩く見えるが意外としっかりしている。
「うーん、潔はペナルティを受け入れてでも休むと思う」
「それは校長がペナルティを取り消してくれる可能性があるから?」
「そういう時の潔はゆーちゃんに頼らないよ、ケジメはしっかりつけてるんだ」
「そうなんだ…」
(なんかちょっと可哀想だけど…潔くんにも参加してほしいし、今回は仕方ないよね)
「そういえば愛ちゃんの家族は見に来るの?」
「う、うん、恥ずかしいけどね、えへへ…白根ちゃんの家族は来るの?」
「うん、お母さんだけだけどね」
「そうなんだ、お父さんは忙しいの?」
愛がそう聞くと白根が少し俯いて暗い表情をした。
「私、お父さんいないんだ。小学校3年生の時に病気で亡くなっちゃって…」
「そ、そっか。ごめんね」
「ううん、大丈夫だよ。でも、なんか懐かしいな」
「何が懐かしいの?」
「懐かしい」と言った瞬間、声が少し明るくなった。
「その頃からなんだよね、潔が私と仲良くしてくれるようになったのって」
「そうなんだ」
「うん、嬉しかったなー。授業参観とか運動会の時だれも来なくて泣いてた時声をかけてくれたの」
『おい、お前が水野 白根か?師匠からお前の護衛…じゃなくて友達になってくれって言われたんだ。これからよろしくな』
「小学生で護衛とかウケるよね」
「そうだね」
「でも師匠って誰のことだったんだろう…」
そう白根は呟いた。
~その頃~
潔は先生に頼まれたノートを職員室に運んでいた。と言っても授業に参加する人がほぼいないのでノートは5冊くらいしかなかった。
1年D組がある1年棟は4階、2年棟は3階、3年棟と職員室は2階にある。
(意外と遠いんだよな…)
内心で少し愚痴を零しつつ階段をおりていたら3年生とすれ違い声をかけられた。
「あれ?君が新入生の男子くん?」
「はぁ、そうですが…」
「私は3年E組の唐草 瑠璃。よろしくね」
唐草先輩は紺色ショートカットでボーイッシュ女子に見えた。
「1年D組の疚無 潔です。こちらこそよろしくお願いします」
軽く自己紹介をすると品定めするかのように見られた。
「ふ〜ん、結構かっこいいね。タイプかも」
(はぁ、こういう系か。思わせぶりタイプか。あんまり好きじゃないなぁ)
「茶化さないでください」
「君も体育戦出るんでしょ?」
「…?たいいく…せん?」
「あー、そっか。聞いてないんだね。体育祭の事だよ」
「体育祭なら出ますよ」
「参加自体は強制ですから…」と小声で呟いたら先輩はニヤニヤしていた。
(なにわろてんねん…笑い事じゃないんだが)
「まぁ、当日はよろしくね!」
「お手柔らかにお願いします…」
と言い去っていった。
「体育戦ってマジで何なんだろ。嫌な予感しかしないな…」
(はぁ…休むか?でもアカシアちゃんと一緒に走る約束しちゃったし、しかたないか…)
閑話でまさかの新キャラ登場です!作者もこのタイミングで登場すると思いませんでした…というのも現時点で4月中旬の設定なので5月末までに可能な限りキャラクターを揃えておかないと面白味がないかなと思い急遽先輩キャラを登場させました。
唐草 瑠璃
元ネタとなっている花は「ネモフィラ」です。
かなり好きな花です。花言葉は調べてみてください^^