154話 おもしろいタイトル思いつかないけどラブコメっぽい回です
最近の作者はただただイサギに嫉妬しています。
「い、潔くん、先程は失礼した。ストレスが溜まりすぎて爆発してしまったんだ。本当に申し訳なかった」
イサギは瑠璃の暴走を止めるため瑠璃を抱き締めて数分、ようやくいつもの堅物としての落ち着きを取り戻したようだ。
「そうだったのか。それならしかたないな」
「そ、それでだな、も、もし、君がしたいと言うなら、わ、私を舐めてもいいんだぞ…いや、むしろ、舐めて…」
頬を紅く染めながら制服を脱ぎ首筋を見せてきた。
「それは結構。気持ちだけ受け取っておく」
「そ、そうか…」
あからさまに落ち込む様子を見てられなかったイサギは軽く咳払いをして提案をした。
「じゃあ、もう1回頭を撫でてもいいか?」
「っ!もちろんいいぞ!ガシガシ撫でてくれ!」
「いや、ガシガシは撫でないけど…瑠璃の髪ってサラサラしてるよな」
「そ、そうか?いくらでも触っていいぞ?」
「うん、やっぱり瑠璃はショートカットの方が似合う。以前カツラ…じゃなくてウィッグをかぶってきた時はびっくりしたけどやっぱりいつもの髪色でいつもの髪型の方が俺は好きだな」
「そ、そうかそうか!君がそう言うならそうなのだろう!君が好きなものがやはり1番なんだ!」
「う、うん?でも元気出たみたいだな」
「そりゃそうだろう…こんなに至れり尽くせりなのだから…」
「いや、そうじゃなくて…あの事、まだ気にしてる?」
「何のことだい?」
「音女城で『男みたいな女』って言われてショックを受けてるように見えたんだけど…気のせいならいいんだ」
「み、見てたんだね…」
「見てたし聞こえてた」
「みっともないところを見せてしまったね…」
「かっこよかったよ」
「っ…!そ、それは…」
『かっこいい』というのは瑠璃が1番嫌いな言葉だ。なぜなら生まれてから男子のように見られ扱われることが多かったからだ。想い人に嫌いな言葉で褒められた彼女は動揺を隠せなかった。しかし…
「ずっと見てたんだ。瑠璃があの親子を助けるかどうか。瑠璃が口を挟まずにただ傍観するだけだったら俺は早々に割って入ってたよ。でも瑠璃は動いたし、最後まであの親子の味方でいてくれた」
「…………」
「かっこよかったっていう感想じゃ不満か?それならどう言うべきかな…あ、そうだ。うん、じゃあこう言おうか」
「?」
「自分で言うのも恥ずかしいんだけど…俺みたいだったよ」
「…!」
「これでもダメか?」
「ううん…いい。それがいい。男みたいだって言われるより君みたいだって言われる方が何千倍も嬉しいし誇りに思う」
「そ、そうか?瑠璃を褒めたつもりなのに俺が照れるなんてな…でも、ありがとう」
「お礼を言わないといけないのはこちらの方だよ。あの時も今も助けてくれてありがとう。ずっと苦しかった。でも、やっぱり君は助けてくれた。嬉しいよ」
瑠璃の涙が夕陽に照らされて宝石のように輝き雫となり頬を伝って落ちる。
「潔くん…」
「ん?」
瑠璃は抱きしめられたまま、イサギの耳に囁いた。
「好きだよ」と。
今回は2人きりの空間に水を差さないようにするために一人称視点で書かないようにしました。前話を投稿した後、たくさんの人がアクセスしてくれたのですが、やはり皆さんはそういうのが好きなんですね。参考までに覚えておきます('-')