153話 瑠璃、遂にリミッターを外す…が主人公は神(?)対応する
カタブツがカイブツへ?
「ふんふふんふーん♪」
夕方、瑠璃は適当な鼻歌を歌い軽くスキップを踏みながら下校していた。瑠璃は好きな人と一緒の空間にいられることに大きな幸福感を得ていた。
「今日こそ一緒に風呂に…ふふふ…」
…妄想することで幸福感を得ていた。
「潔くん!帰ったぞ!」
「うーっす。お疲れ様でーす」
音女病院最上階の特別個室に入ると1人の男子がベッドの上で本を読んでいた。
「なんだい、随分おっさんくさくなったな」
「だって、退屈だし…」
「ふふん。私がいなくて寂しかったのかい?」
「…うん」
「っ!」
か、か、可愛い…!ダメだ!死んでしまう!絶対否定されると思ってたのに…肯定するなんて聞いてないぞ、潔くん…!
「瑠璃」
「なっ、なんだい?」
「あんまり気にしてなかったけどよく見るとアレだよな。瑠璃の制服姿って可愛いよな」
「!?」
こ、殺しにきてる!潔くんが私を悶えさせて殺そうとしている!恐ろしい男だ…!
「なんでそんなに遠くにいるんだ?こっち来てよ」
「む。わ、わかった」
なんだ?刺すのか?殺す気か!?
瑠璃はイサギが横になっているベッドに近づき、横にあった椅子に座った。
「瑠璃」
「な、なんだい?」
ひゃああああああ!!!こちらから頼んでてなんだが名前で呼ばれるのやばいぃぃぃ!!!
瑠璃が日頃からしている妄想が現実になったことに悶えているのも知らずにイサギは更に追い討ちをかけた。
「よしよし、おつかれさま」
「ひゃっ!」
「あ、ごめん。びっくりさせたか?」
「あ、ううん!だ、大丈夫!」
頭を撫でられた瑠璃はいつもの強気な口調ができなくなるほど緊張し硬直した。
「あの、その、い、潔くん」
「どうした?」
「もう、やめちゃうの…かい?」
もっとして!もっと撫でて!もっと触って!
「あはは。瑠璃、あんまり無理すんなよ」
この言葉で瑠璃は完全に雌になったのだった…
そしてかつて堅物風紀委員長とまで呼ばれた女子生徒の暴走はイサギにも止めることはできなくなった。
「潔くん!」
「お、おう、ど、どした?」
「もう私は我慢ならない!シていいか?いいよな!」
「ま、待ってくれ!何をする気だ!?」
「えぇい!うるさい!君のせいなんだからな!」
瑠璃はイサギの体の上に跨り押し倒し、両腕を抑えた。そして―――
「ちょ、ちょっと待て。何してるんだ?」
「スンスンスンスンスン」
体の匂いを嗅ぎ始めた。
「ふわぁぁぁ、潔くんの匂い…」
「おかしいな…マタタビは持ってないはずだけど」
「誰が猫だ!」
「さっきから撫でられて嬉しそうにしたり匂いを嗅いで喜んだり、猫としか思えないんだけど…」
「それなら私はもう猫として生きる!」
「はぁ…」
イサギはやれやれとため息をつき呆れた。
「これを唐草のおっさんが見たらなんて言うんだろうか…」
「こんなはしたない姿は君にしか見せないぞ」
「はしたないって自覚あるんだな…」
「潔くん…」
「いっ!?!?」
イサギは思いもよらない瑠璃の行動にさすがに身震いした。その行動とは…
「れろ」
「ちょっ!なにして…!」
「んふふ」
「んふふじゃないだろ!なんで首なんか舐めって…」
「潔くんの汗…」
しょっぱくておいしい…
「今日はずっと室内にいたから汗かいてない…ってそうじゃなくて…くすぐったい…」
「ふふ、可愛いなぁ」
瑠璃は蕩けた顔でイサギの首筋をざらざらとした舌で舐め続けた。
「ばか…なに言ってんだ…瑠璃の方が1億倍可愛いだろ…」
「!?」
「ん…どした…?もういいのか…?」
「うん…もう、いい…ごめん…」
「大丈夫か?」
「大丈夫…迷惑かけたね…ごめん…」
瑠璃はイサギの上に跨ったまま俯いてしまった。感情の機微を感じ取ったイサギは再び彼女に追い討ちをかけてしまった。
「ちょっ!潔くん!?」
はぐ!?ハグ!?ぎゅって!ギュッてされてる!待って!無理!死んじゃう!
「…いつもおつかれ。たまにはこうしていいから」
「ありがとう…潔くん…」
「こうしていいって言うのはアレだぞ。舐めていいってことじゃないからな」
「ももももももちろん!わかってるよ!」
「ほんとかよ…」
この時、瑠璃は思った…
―たまにじゃなくて毎日いや常時ハグされていたい、と。
瑠璃が段々ヤンデレ化してきた気が…堅物王子様は地雷だった?