147話 特別個室って実際にあるらしいよ
瑠璃視点です。
弥勒と話をつけた瑠璃はイサギに謝るためにタクシーに乗り病院へと向かった。
「すみません!潔くん…疚無くんがここに来ませんでしたか?」
「ええ。来ましたよ。先程入院が決まりました。面会希望ですか?」
入院…!?そこまで強く叩いたつもりじゃなかったのに…いや、私がやってしまったことだ。つもりじゃないなんて言い訳にしかならない。
「面会したいです」
「名前と疚無様とのご関係を教えてくれますか?」
「唐草 瑠璃です。彼のゆ、友人です」
今の瑠璃は友人と答えることすら躊躇うくらい切羽詰まっていた。
「唐草様…ですね。確認しますので少々お待ちください」
確認とはどういうことだろうか?普通は何階の何番にいるか教えてくれるはずなのだが…
「部屋番号を教えていただければ1人で行けますが…」
「いえ、疚無様は特別個室に入院しておりますので面会希望の方は都度確認しなければならないのです」
「と、特別個室!?わ、わかりました…」
ど、どういうことだ?病院の特別個室といえば1泊40万はかかるって聞いたぞ…?そんなに重症なのか…?彼の懐も大打撃を受けてしまったのではないか…?
「只今確認が取れました。では、ご案内します」
受付係に案内されたのは病院の最上階だった。
た、たかっ…!!この病院ってこんなに高い階層まであったのか!?
「それでは案内はここまでですので失礼します」
「あ、ありがとうございます…」
何はともあれ潔くんに会えそうだ。だが…何なんだ、この緊張感は。この扉の向こうに大統領がいるのではないか、そんな感じの緊張感だ。扉が黄金に輝いているため益々そう思わせている。
「し、失礼します…」
体育館の大扉より重たい…わけではないのに緊張して腕に力が入らない。深呼吸して扉を押し開けて中に入ると…
なんだ、この部屋は…!空調、電子機器、ソファ、ドリンクバーまで!?本当に入院病棟なのか!?
特別個室に感動していると奥から話し声が聞こえてきた。
「姐さん…じゃなくて桔梗先生、さすがに特別個室は大袈裟ですよ」
「イサギくん、君は今の病状を甘く見すぎです。1週間は入院してもらいます」
「さすがに1週間も家を空けられないですよ。誰がメシ作るんですか。弥勒姉と撫子は家事能力皆無ですし…」
「私が桔梗家で預かります」
「そ、そうですか…それなら安心です、はい…」
どうやら院長と潔くんの会話のようだ。音女病院の病院長は桔梗 白光先生だ。音女高校生徒会副会長の桔梗 光さんのお母様でもある。彼女は凄腕の医師とこの街では名高い。
「あ、あのぉ…」
「何奴!」
「であえであえ!!」
「怪しいものじゃないです!!」
「「冗談だよ(ですよ)」」
「冗談がキツすぎます…」
場所が場所だけに…それにしても2人ともノリが良すぎないか?
「こんにちは、瑠璃さん。話は聞いてますよ。大活躍だったようですね」
大活躍…嫌味だろうか…
「あ、あの、私、彼に一言謝りたくて…!」
「謝る…そうですか。それなら私は席を外します」
「ありがとうございます」
「それで瑠璃先輩は何をしに来たんですか?」
「君に言わなきゃいけないことがあって…」
「それは奇遇ですね。俺も言いたいことがあったんです」
言いたいこと…永遠に顔を合わせたくないということだろうか…考えただけで目頭が熱くなった。
「今回はありがとうございました」
「………………は?」
特別個室は実際にあるらしいです。1泊約40万するかどうかは知りませんが。あとどんな施設が含まれているかも知らないです。この物語は全て私の想像なので実際の値段設定や設備は参考にしてません。