145話 すれ違う2人 後編
後編はイサギ視点です。
内容はほぼ同じですが、考えてる事は全く違います。
投稿予約だと同時に投稿できないのが残念です。
2時限目以降の授業を欠席し、保健室でサボ…体を休めたイサギは放課後に牡丹先生に起こされたのだった。
…まぁ、そういう約束だったからしゃーないよな。体は休まったのに心は休まっていないというのは今の状態を言うのだろう。学校に来ないで、からの、生徒指導室に来て、だもんな。そりゃ億劫にもなるよ。
「はっ!もしかして、志倉先生は俺の憂鬱な精神状態を見抜いてわざと厳しい言葉で遠ざけたのか?」
クラスメイトも俺のことを心配してたから俺のところに集まったり、後ろからついてきたりしてた…とか?くっ…なんて良い同級生なんだッ…!それなのに俺はッ…!鬱陶しいだの気持ち悪いだのなんて…俺は最低な大バカ野郎だ…!!
イサギは勝手な解釈をしながら「もう遅い」を感じていたのだった…
「失礼しまー…って、誰もいねぇ」
勝手な解釈をして勝手に後悔したイサギは生徒指導室に到着する頃には先程の後悔はとっくに忘れていた。そう、イサギは(どうでもいいことに限って言えば)3歩歩けば忘れるニワトリ脳だった。
「呼び出されるとしたら…名折れ先輩か瑠璃先輩だな」
志倉先生は無いだろう。なぜならこの呼び出しは朝のHRで知らされたのだから。
待つこと5分…
「ふぁぁぁ…ねむ…」
イサギは痺れを切らし始めていた。そう、イサギは待たされることが苦手な1番デートしたくない男だった。
さらに待つこと5分…
「やば…めっちゃ横になりたい…いや、でもなぁ、来た時に横になってるのはさすがに失礼すぎるだろうし…縦になればいいか。そうだ、縦になろう」
イサギは眠くなっていた。そう、イサギは眠くなった時は何がなんでも寝る、睡眠第一の男だった。
「zzz…」
―ガラッ
「失礼する!」
「zzz…」
「潔くん!遅れてすまなかった!」
「zzz…」
「では、話をしようではない…か…」
「zzz…」
「潔くん?」
「zzz…」
返事がない。立ったまま眠っているようだ。
「起きたまえ!!!」
「わー。びっくりしたー」
「君、最初から起きてただろう」
「いや、ぐっすりでしたよ。それで瑠璃先輩がどうしてここに?」
「呼び出したのは私なのだが…聞いていなかったのかい?」
「覚えてないですね。誰に呼び出されても応じる以外の選択肢がないですし呼んだ人なんていちいち覚えないです」
「む…それもそうか」
「それで今日はどうしたんですか?」
「うむ。今日君を呼んだのは他でもない。君と弥勒先生の関係についてはっきりさせておきたいのだよ」
瑠璃はひとつだけ空咳をすると本題を述べた。
「…それって瑠璃先輩に関係あるんですか?」
「私は風紀委員長だからな。学校の風紀を乱すのはいくら君や君の身内だったとしても見過ごすことはできないんだ」
「へぇ。そうなんですか」
「うむ。まぁ、答えられる範囲でいいから教えてほしい」
「そう…ですねぇ、弥勒先生は従姉妹なので関係としては普通の家族みたいな感じですかね」
「ほう。普通の家族のような関係、と」
瑠璃先輩はバインダーに留めた用紙にメモをしているようだ。この話のどこに何の需要があるのだろうか。それとも委員会で報告するのか?なんか恥ずかしいな。
「昨日から一緒に住んでるんですけど、普通にご飯を食べたり…」
「ま、待て!一緒に住んでいるのかい?」
「まぁ、家族は一緒に住むものでしょ?」
俺は本来の家族から離れて暮らしているけどたぶんあってるはず。
「う、うむ。まぁ、家族という関係なら…そうだな」
「あとは一緒にお風呂入ったり…」
「ひゅ、ひゅろ!?」
…先輩、噛み噛みだし声が裏返ってますけど大丈夫ですか?クールなイメージが一瞬でパァだ。
「俺は嫌がったんですけど、昨日は勝手に入ってきてもう困りましたよ。あと夜中は布団に入ってきたりとか…はぁ、せっかくの義妹とのレストタイムが…おっと口が滑ってしまいました。えへへ」
「ぐっ…!!」
瑠璃先輩はわなわな震えているようだ。何か悪いこと言ったかな?あぁ、アレだな。恥ずかしい話されると自分のことじゃないのに自分まで恥ずかしくなるやつだ。
「瑠璃先輩…その気持ち、めっちゃわかります」
「君にわかるわけがないだろう!このバカ!」
「いっ…!?」
バインダーで殴打された。義妹ビンタよりも痛かった。思わず涙が出てしまった。この学校に入ってから女性に殴られることが増えたような気がする。と言ってもまだ2回だ。これからどんどん増えていきそうだな…
「出ていきたまえ!君の顔なんて見たくもない!」
「っ…!そ、そうですか…すみませんでした。失礼しました」
瑠璃先輩に気を使わせてしまった。本当に申し訳ない。
俺、そんなに顔腫れてるのか…
※イサギは秀才ですがマヌケな厨二病です。