136話 体育着×サングラス=超ダサい
超長くなりました。皆さんの昼休みだけでは読み切れないかもしれません。4章を瑠璃の大冒険編で組めば良かったかなぁ…
怒りのボルテージはマックスに到達していた。綺麗な公園を不埒な輩に汚されただけではなく私自身も穢されたのだから。
「っ…!」
殴りたい。殴ってやりたい。私に力があれば殴ってやれるのに。ギリギリと歯を噛み締めても軋むような音しか出ない。漫画やアニメのように力が沸々と湧いてくる…なんてことはなかった。
「おー、おっかない。そんな恐い顔したって何も出来ないだろうなぁ?何せ女は黙って見てることしか出来ないもんなぁ?べろべろばぁ」
結局私は黙って見てることしかできないのか。体育祭の時もそうだ。彼が来てくれるまで後ろから傍観するしかなかった。他の生徒が脅かされる中、私は指をくわえて見ていることしかできなかった。そして今も親子を助けるために口を挟んだだけだ。ここからもう一歩踏み出せたら…彼なら…潔くんなら…
「ほ、他の子には手を出さないでください。私が悪かったんです。私が目を離したのがいけなかった…それでいいでしょうか…」
「ククク…あぁ、それでいい。それでいいが慰謝料とクリーニング代はあるだけ出してもらわないとなぁ」
「うぅ…」
女性は財布を取り出して男性の手の上に置こうとしていた。
しまった!うじうじ考えている間に結局女性に気を遣わせてしまった。このままじゃまずい。お金を払っただけで手を引いてくれるわけがない。どうする、どうする、どうしたらいい!
…タッタッタッ
ジョギング中の人も誰も気に留めてくれない。触らぬ神に祟りなし、みんな、そんな顔で通り過ぎていく。みんな、自分が可愛いんだ。自分可愛さに誰かを助けようなんて思わない。
…タッタッタッタッ
周りの人を蔑み自分の頑張りを褒めるなんて最低だ。けれどやれることはやった。
「だから…だれか…だれか、たすけて…」
……………
私の近くを走る足音がいつの間にか聞こえなくなっていた。目を開けると視界は暗く日陰が出来ているのがわかった。顔を上げるとうちの体操着を着てサングラスをかけた生徒が私の前に立っていた。その生徒の脚や腕は長くて白くて細く掴んだだけで折れてしまいそうなくらい華奢だった。しかし、女子生徒ではないことがすぐにわかった。
「おっと、お姉さん、この公園は入場料とらないよ。でもわかるよ。たまにいるんだよ。この公園の美しさに魅了されてついついお金を払いたくなる人が。だけどね、僕はその人たちからお金をとるわけにいかないんだ。なぜなら、やりたくてやってることだから。でもその好意を無下にして帰すわけにもいかないからサインをあげてるんだ。だからサインしてあげるよ」
目の前に立つ男子生徒はポケットからマジックペンを取り出して女性の手のひらに何かを書いた。
「あ、ありがとう…ございます…」
「うんうん。そんなに嬉しかったんだね。さぁ、少年もお母さんと一緒に行くんだ。大丈夫、ここは任せて。僕は皆のヒーロイだから」
「うんっ!ありがとう!ヒーロイ!」
男子生徒は少年の頭を撫でて背中を押してあげた。
「おい!てめぇ!いきなり間に入ってきて俺の金を横取りすんじゃねぇ!」
「おいおい、お兄さん、この公園で金銭のやり取りをしていいのは売店と自販機、祭りの時は屋台だけって決まってるんだぜ。知らないのか?」
「知るか、クソガキが!そんなことより俺の一張羅を汚してやがったあのガキの母親に弁償させろや!俺は女を待たせてんだ!早くしやがれ!」
「俺も女を待たせてるんだ。ここは引いてほしいんだけど、その女もここに連れてきたら?あんたみたいな男と付き合える女なんて限られてるだろ」
「んだと、ごらぁ!」
目の前の男子生徒の穏やかな態度が豹変する瞬間は背中がゾクッと凍りつくようだったが今の私にはどこか心地よく温かさすら感じた。
「おい、飲み物買ってくるって言っていつまで時間かけてんだよ、クソゴリラ」
男の横から少しハスキーな女性の声がした。全身をライダーススーツで包んだスラッとしているのに出ているところはしっかり出ている女性だ。ヘルメットを外すと長い黒髪が溢れた。梅ノ木先生と良い勝負な体型と美貌…こんな男と釣り合わないような…
「だ、だってよぉ、クソガキが俺の一張羅を汚しやがって…」
「そんな安物、いくらでも買えるだろ…って…」
「やほ。奇遇だね」
「「は?」」
不覚にも男と私の声がハモってしまった。
「あぁん!私のイッサじゃなぁい!」
「ちょっ、待っ…うっ、ぐるじぃ…お、おっぱ…」
「あらぁ、ごめんごめん。大丈夫?私の胸、そんなに気持ちよかった?」
卑猥だ…何が梅ノ木先生と良い勝負だ…下品だ…潔くんも顔を赤らめて嬉しそうにしてるのが悔しい!
「お、おいおい、俺と2人でどこまでも行くんじゃなかったのかよ…」
「え、そうなの?良い趣味してるんだね、ろくちゃん」
「あぁん!イッサ!そんなこと言わないでよぉ!こんな安物着てる男に興味があるわけないじゃない!だって聞いてよ!信号待ちしてたらいきなり後ろからついてきたのよ、このゴリラ」
「へぇ、そうなんだ。飼育員には連絡したの?」
「このクソガキにクソアマぁ!さっきから黙って聞いてりゃベラベラと!!死に晒せ!!」
男は激昂し潔くんと「ろくちゃん」と呼ばれる女性に殴りかかった。しかし、いつの間にかそこに彼らはいなかった…いや、正確にはパンチを躱して姿勢を低くして拳を構えていた。
「甘い!本当に殺すつもりなら…」
「ここを狙わないとなぁ!!」
「「《正拳突き》!!」」
「…ぎゃっ!あっ…うあ…」
潔くんとろくちゃんの《成犬突き》ではない本物の《正拳突き》が急所に炸裂し男は叫ぶことも出来ずに泡を吹いて倒れた。
「いぇーい、イッサ、ナイスパンチ」
「ろくちゃんもさすがだね」
私は2人のハイタッチに少し妬いてしまった。
「それと君もナイスファイト。よく頑張ったね」
「ろくちゃん」が私の手を引っ張って立たせてくれた。
「あ、ありがとうございます…」
「あれっ、瑠璃先輩!?どうしてここに!?」
「えっ、今気づいたの…?ショックだなぁ…」
集中しすぎて気づかなかったのかな?まったく潔くんは仕方ないんだから…ところで潔くんが待たせてる女って誰のことなんだろう…
「大丈夫でしたか!?怪我は!?どこか痛くないですか!?」
「あ、私は大丈夫…」
「あれぇ?イッサ、私のことは心配してくれないのぉ?」
むぅ!!!我慢ならない!!!優しい人だと思った私が間違いだった!!
「ちょっと潔くん!この人誰なの!なんか馴れ馴れしくない!?おっぱい当たって喜んでない!?」
「あぁ、この人は…」
「おーい!疚無くん!ここにいたか!」
「あっ、和」
「あ、会長も。なんでここに?」
「なになに、イッサったら私以外にも女がいるの?」
私以外にもって言った?ねぇ、潔くん。どういうこと?もう手遅れなの?私、諦めたくないんだけど!初恋終わっちゃうの…?
新キャラ「ろくちゃん」登場!
おpがでかいらしい…!ちなみに瑠璃は小さ((殴
(会長は完全に巻き込まれてますが)イサギ争奪の三つ巴が今始まる…!?
次話は今晩くらいに投稿予定です。無理だったらこの後書きを書き換えます。