135話 【悲報】風紀委員長、突然舞台設定をバラしてしまう
もっと良いタイトルを付けられたはずなんだけどなぁ…おかしいなぁ…メインの内容とズレてるんだよなぁ…
瑠璃視点です。
「和…本当にこの先に潔くんがいるの?」
「聞いた話だとそうらしい」
「……」
「……」
「本当の本当に?」
「そう言っているじゃないか」
「………」
「………」
「本当の本当のほん…」
「だぁぁぁ!!!五月蝿い!黙れ!黙って上れ!この心臓破りの坂を!」
「そんなに怒らなくても…」
「私はお前についてきてほしいなんて一言も言っていないからな!お前が勝手についてきてるだけだからな!」
こわっ。ガチギレ生徒会長こわっ。私も怒るとこんなふうに見られているのだろうか。
「ごめん。悪かったよ」
「ふんっ!何が楽しくてお前とキツい方の坂を上らないといけないんだ!急がば回れと言うだろう!距離が遠くとも緩やかな坂を選んだ方が早く…」
うんぬんかんぬんと生徒会長のほとんど八つ当たりのような説教を耳にたこができるくらい聞きながら歩いていたらいつの間にか山頂に着いていた。
「なんだかんだ着いたな…」
「そう…だな…」
「うむ…この坂を体育祭のコースにするのは今後もやめた方がいいな。発狂する者が続出する可能性が高い」
それは和だけだと思うんだけど。普段大人しい人ほど怒ると恐いというのは本当だったようだ。
「ところで目当ての疚無くんはどこにいるんだろうか」
心臓破りの坂周辺にはいなさそうだ。音女城の階段下にある噴水広場には親子やジョギングをする人たちがチラホラ見受けられる。
「二手に分かれて探してみよっか」
「そうだな。私は城の中や周辺を見てこよう」
「じゃあ、私は広場とか売店で聞いてくるよ」
和は城周辺を、私は人がたくさんいるところを重点的に探すことにした。
「なんか久しぶりだなぁ…」
昔はよく来ていた気がする。音女公園や噴水広場…幼少期なら誰もが訪れたであろうこの場所。音女市を一望できる展望台は夜になるととても綺麗だった…気がする。頭の中ではっきりしないくらい記憶は掠れていた。
「今でも桜祭りや雪祭りはやっているのかな…」
春には桜祭りがある。桜祭りは昼も良いが夜は格別だった。桜並木の坂から音女城まで橙色に灯る行灯で装飾された景色は圧巻だ。夏祭りがないのは残念だけど冬は雪祭りがある。雪祭りは人が入れるサイズのかまくらを職人さんが何個も作ってくれて、その中に入って餅を食べたり甘酒を飲んだりするんだっけ。その周りを子供たちが小さいかまくら…ミニかまくらで囲んで映えさせるんだよね。
「懐かしいなぁ…」
おっと。懐かしんでる場合じゃなかった。潔くんを探さないと。遊んでいる子供たちより親御さんに聞いた方がいいよね。
「あのー、すみま…」
「おい!!このクソガキ!俺の服を汚しやがって!あーあー、ベトベトじゃねぇか」
すぐ近くにいた女性に声をかけようとした時だった。ツーリングでここに来たのだろうか。アイスクリームで汚れた革製のジャンパーを着たサングラスをかけた男は賑やかで楽しげな空気を一瞬にしてぶち壊した。
「ここの景色が最っ高に良いって聞いたから女と来たってのにクソガキ1人のせいで計画が台無しだぜ!どう落とし前つけてくれるんだ!あぁ!?」
ど、どうすれば…体が震えて動かない…でも、あの子が、周りの子が、親御さんたちが…
「おい、このクソガキの親はどこだ?出てこいよ」
「は、はい。わ、私です…」
小さく手を挙げた女性が震え声で前に出た。
「弁償しろよ。そうだなぁ…クリーニング代と慰謝料を請求するから払えよ」
「い、慰謝料!?子供のアイスが当たっただけなのに!?」
「当たっただけとはなんだ?てめぇの躾がわりぃうえに目を離すからこうなってんだろうが!」
「わ、私、目を離していません…ちゃんと見てました…」
「うるせぇ!いいから今すぐ払え!じゃねぇとテメェの家特定して晒しあげるぞ?」
「うっ、うっ、ぐずっ…どうじで…」
私も見ていた。彼女も彼女の子供も悪くない。彼女は子供をしっかり見ていた。彼女は親としての役割をしっかりと果たしていた。それなのにどうして…
「どうしてお前みたいな男がこの綺麗な場所に来ているんだ?」
「あぁ?なんだぁ、テメェ…」
男は女性や子供を舐め腐ったように見下ろした目線を私に移した。
「わ、私も見ていた。彼女は子供から一瞬たりとも目を離していなかった!」
「あぁ?てめぇ、何言って…ぷふっ」
男は私の方に向かってくるなり突然吹き出して笑い始めた。
「な、何かおかしいだろうか」
「あぁ、悪い悪い。男みてぇな女だと思ってな」
―プツン
その時、私の中の何かが弾けたような音がした。
気になるところで切ってみました。次回瑠璃が覚醒…!?しません。あくまでラブコメなので戦闘シーンはあまり書かないつもりです。