131話 これぞ普通の高校生活
鬼ごっこだけで4章が終わると思いましたか?否ッ!そんな薄い内容では終われないのがこの小説なのですッッッ!!
※なお4章の内容は不確定な模様
3時間という長きに渡る鬼ごっこはドリル先輩が気絶し執事たちに戦う理由が無くなったため呆気なく終わった。登校を再開して1日目でかなりハードな授業だった。さて、そんなふざけた授業内容にした教師の末路はいったい…?という疑問は1ミリも浮かばなかったので割愛しよう。
「光先輩、お疲れ様でした」
「桔梗先輩、お疲れ様です」
「イサギくん、春野さん、2人とも怪我なく帰ってこられたのでよかったです。おつかれさまでした。それと私のクラスメイトが突っかかっていってしまいすみませんでした」
「いえ、光先輩が謝ることじゃないですよ」
「そうですよ!それにアイスが美味しかったしいろいろ知ることができたので!」
人の金で食べるアイスはさぞ美味かっただろうなぁ。しかし、いろいろとはいったい…誰に情報を共有してるんだ、コイツは…
「それでは、私はこれにて失礼します」
「はーいっ」
光先輩は後輩に対しても礼儀正しく深々と頭を下げてから自分の教室に戻っていった。
「そういえばさ、潔くんってさ」
「なんだ?」
「好きな人いるの?」
教室に戻る途中で春野からまさかの質問。だが、俺には好きな人というのがどういうものかわからない。今の俺がわかるのは興味の有無だけだ。この質問には答えられない。
「好きな人というのがわからないから答えはノーになるのかな」
「へー」
「藪から棒にどうした?誰かから探るように言われたのか?」
「べっつにー。気になっただけ」
「ふーん。まぁ、この学校に男子生徒は1人しかいないから恋バナしようと思ってもできないもどかしさがあるのはわかるぞ」
「そうなんだよぉ!女子トークといえば恋バナ!でも男子は君しかいないし、話すことなんて最近見たドラマとか好きな俳優とかモデルとか。私、そういうのに疎いんだよねぇ」
女子というのは人の恋慕を食い物にして楽しんでるのか?だとするとかなりこわい。噂が立たないように気をつけないといけない。
「へぇ。じゃあ、どんな話ならできるんだ?」
「えっ!?それ聞いちゃう!?」
この反応は…
「言いたくないなら言わなくても…」
「えっとね!お姉ちゃんの話とか瑠璃ちゃんの話とか!」
コイツは結局言うタイプの人間か。てか、お前が持ち出せる話題は身内の話だけなの?聞いてる方はめちゃくちゃ困るやつじゃん。
「お前も重度のシスコンということか」
「潔くんには言われたくないけどね」
「それは最近自分でも思う。妹を持つというのはこんな感覚なんだな!」
ちょっと感動してる自分がいる。
「うーん、潔くんは行きすぎてる気もするけどなぁ…」
「まぁ、妹を溺愛する理由は他にもあるけどな」
「へぇ、溺愛してるんだ?それは本当に義兄妹としてなのかな?それとも異性としてかな?」
そこにツッコんできたか…
「うーん、両方かもな。結論から言うと撫子が妹になった以上付き合えないし付き合うつもりもないけど…俺は撫子を幸せにしてやりたいし、撫子には幸せになる義務がある。自分で言うのも変だけど、俺といる時の撫子は以前よりも楽しそうだし幸せそうだから俺はそれに応えてるって感じかな」
「へー」
なんだよ。せっかく答えたのにつまんなさそうな反応するなよ。
「撫子ちゃんが本当の幸せは潔くんと生涯を共にすることって言ったらどうするの?」
正直それを言われて断れるかどうかわからない。今の俺なら即断できるが…
「それは今の俺には答えられない。厳密に言うと今の俺は断れるけど、決めるのは未来の俺だ。あとは未来の俺にパスする。頑張れ、未来の俺!」
「へーーー、逃げたね」
「逃げて悪いのか?それにこれは戦略的撤退だからセーフだ」
「なにそれ!でも、ちゃんと断れるようにならないとダメだよ?これからたくさんの人が潔くんに寄ってくるんだから!」
なぜ春野に言われなければならないんだろうか…
「なんでそう言い切れるんだ?」
「女の勘ってやつだよ!」
「お前…俺の情報、誰に流す気だ?」
「ひみつ!」
人差し指を口の前に立てる春野、ちょっと可愛いのが悔しい。
「俺の個人情報を売買したら春野家丸ごと潰すからな」
「こわいなぁ。潔くんが言うと冗談に聞こえないんだけど…」
「まぁ、冗談で言ってないからな」
「い、いえっさー…」
「ふっ、冗談だよ」
「こわいって言ったじゃん!!」
「3割冗談だから大丈夫だ」
「7割本気じゃん!」
クラスメイトだから3割の冗談だけど他クラスの知らない奴が同じことしてたら1割もない。10割本気だろうな。
「さてさて、やっとこさ、昼飯だな」
冗談を言いながら話してたらいつの間にか教室に着いてた。今回は春野が一緒だから難なく教室に入れる。安心安心。
「みんな、ただいまー」
「あー!やっと帰ってきた!」
「おかえりー」
教室に入ると他クラスの生徒が俺の机の周りに集まって机をくっつけていた。一緒に昼飯を食べる気満々らしいが誰よりも先に俺を待っていそうなあの人がいない。
「どうだったー?」
「めっちゃ楽しかった!!」
「嘘つくな、バカ」
「嘘じゃないもん!バカって言うなー!」
「えー、なになに、菜花ちゃんとイサギくん、めっちゃ仲良くなってない?」
「そ、そうかな?」
なんでクラスメイトにイジられて赤くなってんの、コイツ。
「お兄ちゃん、何かあったの?」
「いや別に。変なおっさんに絡まれただけだ」
「ふーん。そうなんだ?」
「…どうかしたか?」
「撫子ちゃん、ほんとにそれだけだよ!潔くんといやらしいことなんて何もしてないから!」
いやらしいことなんてしてないとか具体的に否定したらそれっぽく聞こえるだろ。
「そうなんだ!それならよかった!」
何がよかったんだよ。
「さっさと昼飯食おうぜ」
「そうだね」
「いただきま…」
手を合わせていただこうとしたその時、教室のドアは勢いよく開けられた。
―ガラッ
「失礼する!!潔くんはいるかい!?」
教室にいないと思ったらこのタイミングで来たか…瑠璃先輩。
イサギも作者と同じ考えを持っているみたいで感慨深いです。全ては未来の自分次第なのです。