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127話 飯テロ注意ですって言うほどのものじゃないです

投稿数を減らしたのに読んでくださってありがとうございます!ブクマが増えてて嬉しかったです!



 禊萩家の特殊執事部隊の隊長、副隊長が到着した頃、イサギチームは…


「き、きつい…大丈夫ですか、光先輩…」


「………」


「返事がない。坂を上る屍に成り果てたようだ」


「誰が屍ですか!ちゃんと生きてます!」


「じゃあ、最初から返事してくださいよ」


「呼吸を整えていたんです。誰もがイサギくんのように余裕じゃないんですからね」


 俺も全然余裕じゃないし(むし)ろギリギリだったんだけども。心臓破りの坂の長さはそこまでのものじゃない。およそ300mくらいだから雑に計算すると5分かからないくらいで目的地に到着出来る。しかし、これは一般論である。もう一度言おう。ここは城を攻める兵士も上る前に引き返したであろう心臓破りの坂だ。こんな坂をちんたらちんたら上っていたらそれこそ矢で心臓を撃ち抜かれるだろう。ふたつの意味で「心臓破り」なのだ。


「ところで春野は…」


「春野さんならイサギくんをとっくに追い越していきましたよ」


 なんだって…!?全盛期よりも体力はないが、それでも俺を追い越すなんてどんな胆力の持ち主なんだ…!やはりドリル先輩の言ってたことは間違っているんじゃないか?


「春野…!お前はお前なりに努力してたんだな…!」


「…!どこだ!どこにいる!?」


 辺りを見渡してドリル先輩を探しているようだが、これはたぶんアレだな。努力とか頑張りじゃなくて復讐心や怒りに駆られて馬鹿力が発揮されただけだな。


「どうやら、先に着いたのは俺らだけみたいだな…」


「そのようですね…とりあえず休憩したいです…」


 さすがに俺も疲れたのでお城山の頂上にある売店の休憩スペースで休むことにした。


「おばちゃーん、やってるー?」


「あら、イサギちゃん、サボりかしら?」


「あはは、違うよ。一応授業中なんだけどツレがまだ来ないから来るまで休むだけだよ」


「あら、そうなの。じゃあ…いつものでいい?」


「うん!いつもの3つ!」


「はいはい、お待ちを!」


 お城山を含む音女高校周辺は俺のテリトリー…じゃなくてパトロールの担当地域だった。そのためここら辺の住人は俺の顔をよく知っていた。コミュニケーションもなんのその。パトロールやゴミ拾いに疲れたらこの売店で必ず「いつもの」を食べていた。


「潔くん、慣れてるね」


「まあね」


「ところで、いつものとは?」


「…なんだっけ?」


「知らないのに頼んだんですか!?」


「冗談、冗談。ほら来たよ」


「イサギちゃん、お待ちどうさま。いつものアイスドリアンだよ」


 売店のおばちゃんが手に持ってきたのはガ○ガ○君に似たような形の長方形の棒アイス。まぁ、ガ○ガ○君とは完全に別物でそもそもシャーベットじゃないし、シンプルなバニラアイスなんだけどね。でもこのシンプルさがなぜか美味い。そしてクセになる。


「ひゅぅ!これこれ!」


「なんですか、これ」


「潔くん、私も知らないんだけど…」


「えっ!?さすがお嬢様…貴族には難しかったか」


 まさか知らないとは思わなんだ。名前くらいは知ってるかと思ってたのにそれも知らないとは。育ちが良くてなによりだ。


「茶化さないでください!それを言うならイサギくんの方が身分が上じゃないですか!」


「まあまあ、その話は置いといて。これを機に是非ご賞味あれ」


「「あむ」」


 自分しか食べた時ない物を人に食べさせるなんて、なんか新鮮だ。どんな反応をするだろうか?とわくわくしていると


「んんー!あまーい!」


 春野は一昔前の芸人みたいなリアクションだ。


「こ、これは…!食べすぎると胸焼けしそうです…!」


 食べすぎなければいいのでは?というか、味の感想が聞きたかったんだけどなぁ…光先輩は真面目すぎるようだ。


「ハマっちゃうくらい美味いだろ?でも、こういうのは(たま)に食べるから良いんだよなぁ」


「イサギちゃん、美味しいかい?」


「うん!美味しいよ!今日もありがとう!おばちゃん!」


 おばちゃんに対して美味しいと言ったものの、実際おばちゃんはこれを作って持ってきたわけじゃない。冷凍庫から取り出してきたというのを俺は知っている。それをここで2人に教えるのはあまりにも野暮なことだから言わないが。


「こちらこそいつもありがとうねぇ」


「ははは、それはお互い様だよ。いつもお城山に来るみんなを笑顔にしてくれてるしさ」


 こんな辺鄙(へんぴ)なところで売店を出して心臓破りの坂を上りきった皆を年中労ってくれる人なんてそうそういない。


「あ!ヒーロイだ!見て見て!おかーさん!ヒーロイがいる!」


 離れたところから俺に指を差す少年は「ヒーロイ」という謎の単語を口にしている。


「こらっ!指差しちゃダメでしょう?」


「はーい。でも、ヒーロイに挨拶してきてもいいかな!?」


「いいわよ。失礼のないようにね」


「はーいっ!」


 少年とその母親と思しき女性がこちらに歩いてきた。


「こんにちは!ヒーロイ!」


「こ、こんにちは?」


「ちょっと、潔くん、ヒーロイってなに?」


 春野に小声で聞かれたけど俺にも何が何だかわからない。


「なぁ、ヒーロイってなんだ?」


「ヒーロイはヒーロイだよ!ヒーロイはかっこいいんだ!僕もヒーロイになりたい!」


 そう答えると思ったよ…子供は「○○ってなに?」という質問に対して「A is A」の形で答えるんだよな。話が一向に進まないので母親に聞いてみる。


「ヒーロイってなんですか?」


「ふふっ、お城山周辺をパトロールして治安を守るヒーローがゴミ拾いをして環境保全を行っていることからヒーロイと名付けられたようですよ」


「へぇ、うまいこと名付けたなぁ。まぁ、ゴミヒーローって名付けられるよりマシか」


「ゴミヒーローはよくないですね…罵っているのか褒めているのか…」


 明らかに前者な気がするが、ゴミヒーロイにならなくてよかった。名付け親に心当たりはないが感謝だ。


「君もヒーロイになれるよ。頑張ってね」


「うん!ありがとう!ゴミヒーロー!」


「こらっ!家での呼び方をしちゃいけません!」


 ダメじゃん。定着してないじゃん。家ではゴミ扱いされてるんじゃん…



作中に登場する「アイスドリアン」は実在します。日本人の9割が食べたことないと思います。なぜなら作者の地元にしか売ってないからッッッ!ちなみに果物のドリアンとは全く関係ないです。気になるなら是非調べてみてください。


※アイスドリアンという名前を出すにあたって完全に作者の地元がバレてしまいますが気にしてません(めっちゃ気にしてる)

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