126話 責任を押し付け合わない関係っていいですね
コメディ強めで書いてます
「やっと降りてきたわね!」
ヘリコプター内で小さな揉め事が発生してから数分後、ようやく特殊執事部隊は地上に降り立った。
「お嬢様、到着…いや着陸が遅くなってしまい申し訳ありません」
「そのことはもういいわ!ところでたったの3人?少ないわね。ヘリ1台じゃ威嚇にもならないんじゃないかしら?」
柘榴はヘリが1台しか来ていないことを言及した。
「それにつきましても申し訳ありません。旦那様の命ですので」
禊萩家の現当主である父親の言うことは絶対だった。執事はもちろん実の娘も逆らうことは出来なかった。
「それなら仕方がないわね。さっさと音女城まで行くわよ!そこであの男を捕らえてお父様に献上するのよ!」
「お嬢様…その男というのはどんな男なのですか?」
「とにかく無欲なバケモノよ!」
「バ、バケモノですか…」
「確かにそれなら私たち3人が選ばれた意味が理解できます」
今この場にいるのは禊萩家当主から直々に特殊執事部隊の隊長と副隊長の役職を与った3人だった。
「禊萩家当主に代わりあなた達に任務を与えます。ポム副隊長、グラ副隊長、そしてネイト隊長は疚無 潔を生け捕りにしなさい」
「「「ははっ!」」」
3人はハモるように敬礼し1歩前に出た。のだが…
「えっ!?疚無!?」
「お、お嬢様!言い間違いですよね!?」
「何を言っているのかしら?私の言い間違いでもあなた達の聞き間違いでもないわよ」
「お、終わった…通りでおかしいと思ったんだ…今回の任務報酬の前金があるなんておかしいと思ったんだよ…」
「あなた達も何か勘違いをしてるのではなくて?殺すのではなく生かして捕らえるだけよ?それもただの高校生を。昨年まで中学生だったケツの青い子供よ?簡単でしょう?」
「お嬢様…女性がケツだなんてはしたない…ではなく、お嬢様は本当に疚無家のことを知らないのですね…」
隊長を務めるネイトは柘榴の下品な表現を訂正しつつ、ため息混じりに呆れた。
「あぁ…こんなワガママな女の味方して死なないといけないなんて俺って不憫だな…」
「ちょっと!誰がワガママですって!?」
「あんたしかいないだろ!いつもいつもこき使いやがって!もう辞める!俺、こんなことしたくない!」
「ポム…わかるぜ」
「グラ…わかるだろ?」
ポムとグラは見た目がそっくりな双子だった。そして今考えていることも一緒なので今にも逃げ出しそうだ。
「ポム、グラ、いい加減にしなさい。私だってほとほと困っているのです。お嬢様、ワガママなドリルに付き合わされる身にもなってください。悪いことは言いません。今回は諦めるべきです」
「誰がドリルよ!!あんた達!この任務が終わったらクビにするわよ!」
「「な、なんだって!?」」
ポムグラコンビはハモり方も驚き方も全て一緒だ。
「ふふん。わかったかしら?クビになれば困るのはあなた達の方でしてよ」
「そ、それが本当なら…」
「あぁ…ヤバいな…」
「それは私も含まれるのですか?」
ネイトは焦った様子で柘榴に聞いた。
「当然でしょう!隊長であるあなたが全責任を負わなければならないのよ!」
「ほっ…ん"ん"ッッ!承知致しました。この任務、必ずや成功させてみせましょう」
ネイトは一瞬安堵したかのような表情を見せたがすぐに空咳をして気を取り直して真剣な表情で宣言した。
「あなた方の働きに期待しているわよ!オーホッホッホ!」
柘榴の!高笑いを背にして3人は渋々と歩き始めた。
「ふっ…ポム、グラ、お前たちには悪いが全責任は私が取らなければならないようだ…」
「隊長…!ズルすぎる!」
「卑怯ですね…一周まわって尊敬します」
「なんとでも言うがいい!私はまだ死にたくないのだ!だから全責任を負う義務がある私が責任を取って執事兼隊長を辞める」
「ぐっ…俺も辞めたいのに…!」
「これが隊長だけの特権ですか…」※違います
ざまぁともう遅いは仲間割れ展開が付き物ですがコレは仲間割れに入るのでしょうか…?
※ちなみに…
ポム、グラ、ネイトを繋げて読むとポムグラネイト(pomegranate)となります。柘榴の英名です。