121話 こ、この絶滅危惧種に分類される髪型は…!!
序盤で登場したっきり全く出てこなかった先輩が登場します。誰でしょうか。たぶん、誰も覚えていないでしょう。
「各クラスから1人ずつ逃げる人を選んでくれ。押し付けるも良し、率先してやるも良し、ジャンケンして決めるも良し、多数決も良しだ。ただし1人だけだからな」
社会の話をした後に押し付けるも良しって言うのはどうなんだろうかという疑念はさておき、女子は恐らく俺の出方を探るはずだ。最近の女子は俺の動向ばかり気にする。なぜこうなってしまったんだろうか。俺には一生わからないだろう。
「潔くんはどっちにするの?」
ほら来た。どうせ兄貴が逃げる側に変更するだろうし、この質問にはこう答える。
「もちろん追いかける側だよ」
「わかった!」
何が分かったのだろうか。俺には今の女子が何年生なのかすらも分からないというのに。
「よし、決まったようだな。えーと、逃げる側は…」
「1年 春野 菜花、2年 桔梗 光、3年…あれ、3年でやりたい奴いないのか?」
「よくよく考えてみればさっきの話よくわかんなかったし、今積極性求めないならアタシらパスで」
よくよく考えなくてもさっきの話は意味不明だったけどな。
「そうか…困ったな。1年か2年で逃げる側やりたい生徒はいないか?」
いないかどうかって聞いて「はい、やります」なんて言うような生徒がいたら最初から先生が聞けばいいのにってなるし手を挙げるようなやつなんて…
「私がやりますわ!」
いるんかい!あれっ、この人…金髪ツインテドリル…?どこかで見たような…
「あれっ?君…」
「な、なんですの?」
「君…やめといた方がいいんじゃないか?」
「な、なぜですの!?」
「金髪ツインテドリルは走るのに向かないぞ」
「は、はぁ!?」
「あー、思い出した。体力テストの後にラブレターが大量に下駄箱に入ってて落ち込んでる時に名前も名乗らずに一方的に告白してきて俺の心に大打撃入れた人だ」
「具体的に言ってますけど誇張しすぎですわよ!?」
「そうなのか。まぁ、親睦を深めるという目的もあるし、君が入っていいぞ。それで名前は?」
「オーホッホッホ!名前なんてとうに捨てましたわ!」
「はい、君の評定1ね」
「嘘ですわ!冗談ですわ!禊萩 柘榴ですわ!」
「教師に嘘つくとか舐めてんの?」
「ご、ごめんなさい…ですわ」
うわ、こっわ。栗頭こっわ。
「じゃあ、春野、桔梗、禊萩、潔は準備運動して5分後に逃走開始。他は準備運動して10分後に追走開始な」
ちゃっかり、俺を逃げる側に入れとるがな。
「えっ!イサギくん、そっち側なの!?」
「私、逃げる側にすればよかったー」
後悔してももう遅い。これが小さなざまぁだ。
「てことで、春野、光先輩、ドリル先輩、よろしく〜」
「よろしくね!潔くん!」
「よ、よろしくおねがいします、イサギくん…」
「誰がドリルよ!私には柘榴という名前が…!!」
「名前なんて捨てたんでしょ?だから俺が名付けてあげただけですよ。名前がないと不便なので」
「冗談だと言ったでしょう!?」
「冗談や嘘ばかり言ってると誰もついてこなくなりますよ」
「あなたに何がわかるんです!?」
「俺だからわかるんです」
「まあまあ、2人とも落ち着いて!」
「うるさいわね!あなたは春野さんでしたか?お姉さんはバレーの強化選手のようですが、あなたは足を引っ張っているようですわね。姉妹でも運動神経は似ないようですので毎日ご苦労様ですわ。ホホホ」
「そ、それは、そうですが…」
春野は間に入ってくれたにも関わらずドリル先輩の舌戦に負けてしまった。
「禊萩さん!言いすぎです!」
「桔梗さん?あなたには前々から言いたいことがあったのです」
「な、なんですか?」
「親のコネで副会長まで上り詰めた気分はさぞ良いでしょうね!ホホホホホ!」
「…っ!!」
ふぅ…コイツは何をしに来たんだ?空気を掻き乱しに来たのか?
「逃げる側、そろそろ行けー」
「了解です。先生。じゃあ、そろそろ行こうぜ」
「ホホホ、私は1人で逃げ切ってみせますわ!どんな手を使ってでも!」
「「………」」
「光先輩、春野、行くぞ。言われっぱなしじゃ嫌だろ。どんな手を使ってでも潰しに行くぞ」
「…うん!」「はい…!」
ようやく2人の目に光が戻った。自分の悪口はともかく他人の悪口も聞いてて良い気分はしない。するわけがない。
柘榴は花と実で花言葉が違うという。彼女はどちらの花言葉が相応しいだろうか。柘榴の花は「円熟した優雅さ」、柘榴の実は…「愚かしさ」を意味する。
金髪ツインテドリルという髪型は3次元に存在するのだろうか…2次元ならごく稀に…だけど最近の2次元では見ないような…
次話はお盆ボケの影響が予想されるため4時には投稿できそうにないです。申し訳ありません。