閑話② 海と撫子、義兄と義妹
撫子視点です。
ご立腹なようですが、相変わらずブラコンです。
いきなりだけど、私には不満があった。不満というよりストレスだった。原因は何かというとお兄ちゃんの1泊2日の温泉旅行が3泊4日に延びたせいで私もそれに伴って疚無家に3泊しないといけなかったことだ。
「それじゃあ、撫子ちゃん。帰るよ」
「撫子、今度は潔を連れてきな。虫が嫌だのなんだのなんて言ってる場合じゃないんだよ」
「はぁーい。お邪魔しました」
気だるげに、でもお兄ちゃんのメンツを潰さないように丁寧に別れの挨拶をした。
「おーおー、よく言えたなぁ。撫でていいか?」
相変わらずお兄ちゃんの兄の海さんは私の頭を撫でたがる。鬱陶しい。私の頭を撫でていいのはお兄ちゃんだけなんだから!
「やめて。しつこいよ。そんなんだから弟たちに嫌われるんだよ?」
「ぐすん…そんなに言わなくていいじゃないか…潔なら黙って受け入れてるのに…」
「もー、嘘泣きとかいいから早く送って行ってよー」
「へーへー、わかりやしたよ、おじょーさま」
「年甲斐もなく拗ねても可愛くないよ」
「そんなに居心地悪かったか?」
「んー、ぶっちゃけ悪かった」
「俺もそう思う。俺も早く家を出たい。潔だけずるい」
「出ればいいじゃん。コレいるんでしょ?」
コレと言いながら小指を立てる。
「いることにはいるが、まだ養えるくらいの金がないからなぁ」
「…バッシュ買わなきゃいいじゃん」
「ばっか、おめぇ!コレクターを舐めるんじゃねぇ!零を見てみろ!零なんてスニーカーの箱もコレクションしてるんだぞ!」
「えぇ…それはちょっとひく…」
「この前なんてな、母さんが買ったスニーカーを見て、箱だけ貰ってたぞ」
「中身なくても別にいいんだね…」
コレクターって何を考えているのかよくわからない…でもそんなもんだよね。ギャルも何を考えてるかよくわからないって思われてるだろうしお互い様だよね。
「それなら一生養えないね」
「確かにそうかも」
「今あるバッシュ全部売ればいいんじゃない?」
「自ら生命線を断ち切れと?」
「生きるために必要なお金を消費して繋いでる生命線なら断ち切って別の生命線に繋げた方が絶対良いと思うけど」
「見た目ギャルの割に正論を言うんだな…まるで潔と話してるみたいだ」
お兄ちゃんってバカ真面目だからね。でも話しててつまらないって感じがしないから不思議。
「潔と暮らしてて幸せか?」
「うん。幸せだよ。幸せじゃないわけないじゃん」
「どうしてそう言い切れる?」
「だって、好きな人と毎日同じ空間で過ごせるんだよ?それに誰よりも好きな人のことを独占できるの。お兄ちゃんが私に妹になる提案をしてくれた時から幸せだよ」
「好きな人なら妹しゃなくて別の形の方が良くないか?」
「それはそうだよ。女の子だもん。妹よりも良い形で一生一緒にいられた方が良いに決まってる。でも、私はたぶん結婚しないよ。妹としてお兄ちゃんとお兄ちゃんのお嫁さんとずっと一緒にいたいもん」
「ふーん。そういうもんか」
「そういうもんだよ」
「まぁ、あいつなら撫子ちゃんがそう望むならそうしてくれると思うぜ」
そうしてくれないと私は居場所を失っちゃうんだけどね。
「でも、指輪は欲しいかも!!憧れる!」
「おっ?俺が買ってやろうか?」
「バッシュの買いすぎで婚約者も養えないのに義理の妹に指輪なんて買えるのー?」
「ぐぬぬ…買え…ない…」
「まずは自分のことを考えないとねー。そういえばお兄ちゃんってお金は寄付してるんでしょ?趣味とかないの?好きなものとか」
「妹ならそういうのは自分で聞けよ…まぁ、いいか。あいつの趣味はラノベ漁りとアニメ鑑賞じゃないか?あとは筋トレとかだな。好きなものは今言った通り三度の飯よりラノベだろ」
ラノベばっかりかぁ…ラノベって言われてもわからないからアニっちの話も参考にならないかな…
「あぁ、あとアレだ。温泉と水族館だな」
「…!!参考になった!ありがとう!」
「お、おう。何の参考かわからんが、喜んでくれたならよかったよ」
お兄ちゃんって水族館好きなんだ!今度デートに誘っちゃお!
スニーカーの中身だけじゃなく箱までコレクションしているというのは実際にあった作者の弟の話です。ちなみに兄が年中金欠というのも実話です。
※バッシュの蒐集は高校生でやめたみたいです。
時々実話を挟んでクスッと笑える作品が作れたら小説家冥利に尽きます。
次話の投稿はいつの日か…