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110話 ケンカは短期決戦型、恋愛は超長期決戦型

今回は前回ほどではありませんが戦闘シーンがあります。暴力的な表現はあまりないはず…


イサギ視点でどうぞ。

 男2人と交戦してから10分くらい歩いただろうか。相変わらず不気味な林だが小屋のような建物が見えてきた。梅ノ木先生がいるとしたらたぶんあそこだろう。


 とりあえず小屋まで接近して音を聞こう。


 …音は特にない…いや、微かに呼吸音が聞こえる。この呼吸が先生なのかどうかは不明だが小屋の中に人がいることは確認できた。小屋の周りには林しかない。窓はかなり高いところに1つ、大きさは小さめ、女性が1人通れるくらいだ。ドアは正面に1つだけ…か。


 よし、正面から普通に入ろう。


 ―ガチャ


「おじゃましまーす」


「なっ、なんだ、てめぇ!!」


 大柄な男は立ち上がりマチェットを手に持ってイサギに向けた。


「あっ、一服してるところでしたか。それは失礼しました」


「ふざけんな!」


「ふざける余裕を与えるあなたが悪いのでは?」


「がっはっは!煽り作戦は効かないぞ!」


「…それは残念」


 本当に残念。煽って煽って煽りに乗って単調な攻撃を仕掛けてくれた方が楽に倒せるのに。


「あんたらが拉致した女はどこにいる?」


「聞かれて答えるわけが…」


「言え」


「答えるわけが…!」


「言え」


「ぐっ…なんなんだ、その威圧感は…!!!」


 大男はガタガタ震え始めた。


「4度は言わないぞ。言え」


「…さらに奥の倉庫に移した…」


「答えてくれて助かる。命は見逃してやってもいいぞ」


「ふざけるなぁぁぁ!!!」


 大男は雄叫びとともに斬りかかってきたが、イサギは自慢の長い脚を振り上げて大男の脳天に落とした。


「煽りに乗ってくれて助かったよ」


 イサギはマチェットを奪い…拝借し小屋の中にあった麻縄で男をキツく縛り上げた。


「さて、あの中だな」


 もう敵はいないはずだが…油断できないな。慎重に行こう。


 林の傾斜は急勾配になり山に近づいている感じがした。


 待てよ…この山の感じは…やっぱりだ、あの時の倉庫だ。一昨日明石姉妹が拉致された時の倉庫…同じところを使ったのか。バカな連中だな。結局地の利は地形を把握している俺にあったってことか。皮肉にも先走って計画を実行した織田とかいう男のおかげでもあるわけね。


 倉庫に近づき一応、音を確認する。残党は…いなさそうだな。


 ―…けて…


 誰かが苦しそうに助けを求める声が聞こえる。高い声…女性…間違いないな。


「たすけて…だれか…」


 はいはい、助けに来ましたよ。


「…謝るから…助けに来て…イサギくん…」


 …名指しかよ。謝らないといけないのはこっちの方だよ、せんせ。


 倉庫の大扉を力をいっぱいに込めて引いた。軋みながら開くと奥にいる梅ノ木先生と思しき女性は「ひっ!」と怯えた声を出した。


「だ、だれ…?暗くてわからない…酷いことしないで…痛くしないで…助けてっ、イサギくんっ…!」


 1枚の窓から月の光が差し込みイサギの顔と柱に縛られた梅ノ木を照らす。


「大丈夫?先生。今解いてあげるからね」


「い、イサギくん…!ど、どうして…?」


「どうしてって助けを求める声がしたからですよ」


 縄を解き終わると梅ノ木はイサギの腰に抱きついた。


「もう大丈夫ですよ」


 イサギはポンポンと優しく背中を叩き頭を撫でた。


「うんっ…うんっ……あり…がと…」


「怪我はしてないですか?」


「あっ、あの…だ、大丈夫だよ」


 何か言い淀んだ気がした。言いづらいことなのか、遠慮しているのか…


「言いづらいことですか?そうでなければ、言ってください。怪我が化膿してしまったり破傷風に繋がるのは避けたいので」


「えっと、あのね、なぐ…られたの…」


「………」


「どこを…何回?」


「頬とお腹を…1回ずつ…でも、でもね、大丈夫だから。イサギくんにこれ以上迷惑かけられないから」


「…梅ノ木先生、到着が遅れてすみませんでした。俺がもっと早く気づいていればあなたを酷い目にあわせることはなかった」


「イサギくん、私の方こそごめんなさい…心配かけたのもそうだけど、あの、あなたに馴れ馴れしく触れてしまって…これからは…!」


「梅ノ木先生、これからも馴れ馴れしくして大丈夫ですので。そもそも俺が触られることに慣れればいいんです。だから、先生は先生の距離感でこれからも接してください。それが俺の訓練に繋がると思うので」


「うん、わかった。ありがとう、イサギくん…ところでイサギくん?なんか怒ってる…?」


「…大切なものを傷つけられたんですよ、怒らない方がおかしいでしょ」


「イサギくんの大切なものって…?」


「俺に良くしてくれた人全員が俺のかけがえのない大切なものです。もちろん、梅ノ木先生もですよ」


「う、嬉しい…じゃあ、キスして!」


「今の流れでそれを言っちゃうところが先生らしいですね…でも不意打ちが良いんでしょ?」


「あっ、う、うん…」


「さぁ、帰りますよ。俺の背中に乗ってください」


「うん、わかった…ありがとう、イサギくん…」


「さぁ!報復に行きましょう!」


「えっ?報復って?ちょ、ちょっと!?イサギくん!?これでハッピーエンドじゃないの!?」


「いやいや、先生。やられたらやり返さないと!!」


 やられたらやり返すのが俺の流儀だからな…!!!待ってろよ、ゴミ共!!



ようやく終わりが見えてきました。


次話は明朝か昼まで投稿します。

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