108話 結局主人公ムーブします
投稿が遅くなり申し訳ありません。頭が痛くなるくらい寝たのでたぶん大丈夫です。
今回短めです。
「zzz…」
潔はすうすうと寝息を立てながら昼寝をしていた。帰宅する準備も既に終わってしまい夕食までやることがなかったからだった。
―…くん
―…ギくん
誰かが呼ぶ声がする…が、眠気の方が勝ってしまいなかなか瞼が開かない。
「イサギくん!起きて!」
体を揺すられてようやくゆっくりと瞼が開く。ぼやけた視界に映るのは潔のクラスの副担任である夏原 詩だった。
「んん…どうしたんですか…夏原先生…夕食ならまだ…」
「寝惚けてる場合じゃないよ!梅ノ木先生が!大変なの!」
「んー?梅ノ木先生が帰ってきたんですか…?」
「もう!ほらシャキッとして!」
体を無理矢理起こされて顔に濡れたおしぼりを押し付けられる。
「んがっ!うぅん…めちゃくちゃしますね…とりあえず落ち着いてくださいよ…」
「君は落ち着きすぎだよ!」
「もう目が覚めたので大丈夫ですよ、あははー」
「笑い事じゃないよっ!梅ノ木先生が帰ってこないの!ほらみて時間!もう19時!外は真っ暗だよ!」
濡れたおしぼりで顔を拭き窓の外を見るといつの間にか陽は落ち黒一色になっていた。山頂の夕焼けを見に行ったとして遅くても18時くらいには帰れるはず。何かあったと考えた方がいいみたいだ。
「…先手を打たれたみたいだ」
「えっ?どうしたの?」
「ちょっと俺が聞いてきますね」
「聞いてくるって誰に?何を?」
「ロビーのスタッフに、梅ノ木先生の居場所をです」
「どうしてロビーなの?」
「正直旅館の中だったら心配無用なんですよ。ただ旅館の外となると女将の指示も通りにくくなります。外で何かあったと推測した時、外に近い者がグルになってると考えた方が自然じゃないですかね」
「な、なるほど…それなら私も…!」
「いやぁ、さすがにそれはダメです」
「どうして!?」
「先生は中にいる生徒を守るのが仕事ですから」
「中にいる生徒って…愛さんだけ?イサギくんも私の生徒です!」
「愛だけでも守ってくださいよ。俺の大切な友達なんですけど?」
「君は自分勝手すぎます!」
「じゃあ、これが最後の勝手ということでお願いします」
「そんなの…!」
「お願いします」
平仮名にしてたった7文字だけの言葉に重さがあった。目には先程夏原を絶望させたような鋭さがあったがどことなく柔らかく希望に満ちた感じがした。
「…わかりました。ですが、条件があります」
「どんな条件でも呑むつもりですが、一応聞きますよ」
「2人とも何があっても帰ってくること。良いですね?」
「もちろん。何があっても帰ってきますよ」
「イサギくんがそれを言うと別の意味に聞こえるのですが…まぁ、いいでしょう。いってらっしゃい。気をつけて!」
「いってきます!愛と藍ちゃんを頼みます!」
潔は部屋を出て廊下を駆けた。
「くっ、まさか先手を打たれるとは思わなかった…ごめんなさい、梅ノ木先生、すぐ行くので…!」
次話は今夜か今夕か…