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11話 自由にしていいって言われるとむしろ難しい

 この学校の良いところは女子が多いところ…と煩悩に(まみ)れた男子高校生は言うかもしれないがそうではない。この学校の最大の魅力…それ即ち「自由」であることだ。髪の色を染めようが、制服をだらしなく着ようが、私服を着て登校しようが、自由なのだ。授業を出席するか欠席しようが(サボろうが)自由なのだ。なぜなら当然それは自己責任であるからだ。俺はこの校風をとても気に入っている。


 だからこそ、昨日あのように動けたのだ。だったら先生に嘘をついてまで昨日の件を誤魔化す必要はないのではないか?そう思ったキミ!それは違うのだよ!


 何度でも言おう、俺は目立ちたくないのだ。


 男子生徒が1人であることでめちゃくちゃ目立っているのにこれ以上目立ちたくないのだ!さっきのファッションチェックもとい身だしなみチェックも本当は「地味だね」と言われたかったのだ!…先生の好感度が上がるのは嬉しいけども。


 と誰に向けても理解されないであろう愚痴を心の中で呟きながら教室に入った。


「おはよー」

「お、おはよう」


 誰に向けて言ってるのか自分でも分からない挨拶をボソッと口にした。


 あぁ、挨拶だけでこんなに緊張するなんて…腹が痛い…


「潔!おはよ!」

「白根、おはよう」


 白根には挨拶を返せるからまだマシかもしれない…


「ねぇ!聞いた?」

「なんの話だ?」

「昨日アウトレットに現れた謎のヤンキー!」

「なんそれ」

「見て!この動画!」


 と、白根の動画を見ると謎のダサファッションのヤンキーがチャラ男3人を撃退しているではないか。すごい。かっこいい。ファッションはアレだけど…


「ほー…ダサ…いや、独特な雰囲気だな」

「ね!でもカッコイイよね!それでね!この助けられた子たち知ってる?」

「いや、知らん」

「このクラスの立花 葵ちゃんと双子の妹の向日葵ちゃんだよ!」


 なんだと?クラスメイトだと?し、しくった…無視すればよかったかも…いや無視すれば夜眠れなくなるくらい後悔してた気がする…でも…うわぁぁぁ…


 と、心の中で嘆いていると、白根が


「潔、ちょっと来て」


 と、廊下に連れていかれた。


「どした?」

「正直に答えてね。これ潔だよね?」


 バレてる…他の奴にもバレてんのかな…仕方ない、白根には正直に話そう。


「はぁ…白根にはなんでもお見通しか…」

「潔は目立たないように正体隠してこの格好してたと思うけど、めちゃくちゃ目立ってるからね?」

「なんだと…!?どこが目立っているってんだ!?」

「アクセサリー(グラサン)とかアロハシャツとかビーサンとか。今4月だよ?季節わかってる?この格好、ハワイでする格好だよ?」


 全員が全員ハワイに泳ぐために行くわけじゃないと思うぞ、なんて思いながら


「た、確かに…言われてみれば…」

「普通は言われなくてもわかるんだけどなぁ…」

「白根、このことは誰かに…」

「安心して。言ってないから。言うつもりもないけど」

「それはありがたい」

「でも貸し1つね」

「むむ…大きな貸しになってないといいんだが…」


「まだ中学の時のこと気にしてるの?」

「まだって言われてもな。あの時のことは俺の人生を変えた。良い方にも悪い方にもな」


 あの時俺はどうするべきだったのだろうか。あんな対応で良かったのだろうか。

次話から2回にわけて回想編を投稿予定です。

よくある展開にはしません。

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