閑話⑥ 汚れ仕事はこの男へ
お待たせしました。久々の閑話です。短めです。今回は久々登場のあの人が主役です。
ひんやりとした空気、結露してできた雫が縛られた男の頬に落ちた。
「む…ここは…暗いな…」
彼は自分が今どこにどんな状況でいるのかすぐに把握できなかった。
「体が動かない…ぐっ…!後頭部がいてェ…」
そして思い出した。自分が勝手に目の敵にした男、疚無 潔という男に負けたことを。
「ここで終わるのかァ、俺はァ…?誰か、誰でもいい、助けてくれェ…」
「やっと目が覚めたか」
「…!?誰だァ、てめェ」
暗闇からヌルリと現れたのは男…それも背の低い少年だった。
(足音はなかった…気配も…何者だァ?ただのチビじゃねェようだが…)
「おい、誰だか知らねェがァ、俺を解放してくれェ!このとおりだァ!」
(どうせ小学生が迷い込んだんだろ。テキトーに命乞いしとけば縄を解いてくれるはず)
「縄で縛られてる奴がどのとおりだって?貴様は虎の尾を踏んだんだ、罪は贖ってもらう」
「くっ…!ただの小学生じゃねェのかァ!?」
少年は「小学生」という単語にピクリと眉を動かした。
「なんだァ?小学生じゃねェのかァ?小さすぎてわからなかったぜェ。わりィ、わりィ」
「貴様は罪を重ねた…よって、拙者がここで処刑する」
「クハハッ!忍者気取りかァ!?痛々しいぜェ!」
男が再度少年を煽ったときだった。
―カカッ
男が縛られている柱にクナイが2本刺さった…男の毛髪をかすり頭に1本、そして股下に1本。暗闇の倉庫は手探りじゃなければ何も見えない。だが、少年はたった2本を正確に投げた…1歩間違えれば死んでいたかもしれないというのに。
「なっ…ななな、どっ、どういうことだよ…」
男は気色の悪いネチネチとした話し方を忘れたのか本来の話し方に戻ったのか失禁してしまった。
「…キャラ作りが成ってないんじゃないか?貴様が望むなら良き指導者を教えてやっても…」
少年が話し終える頃には男は泡を吹いて気絶していた。
「やれやれ…とんでもない雑魚だったな」
(電話越しの愚兄の声は微かに怒気を含んでいた…その理由が今わかった…水野 白根以外の初めての友達を傷つけられたことが許せなかったんだな。愚兄にも人の心があって弟として安心した…)
「さて、帰るか」
少年は男をズルズルと引きずりながら再び闇に溶けていった。
冒頭の文章を92話の冒頭に似せて書くことで織田 薪が明石姉妹と同じ状況に置かれていることを表現してみました。気づいた方いましたか?
次話は本編に戻ります。
零くん、出演ありがとう!←メタい