93話 結局イサギも厨二病
今回は視点とかないです。イサギの心の声はあります。
時はイサギが愛と藍を助ける前に遡る。イサギは廊下を駆けて…いなかった。
「廊下は走らない方がいいな。他の宿泊客にぶつかるかもしれないし、何より情報を聞き逃す可能性がある」
イサギは一般人よりも五感が鋭い。その中でも特に鋭いのが「聴覚」と「嗅覚」だった。視覚などを遮断することで聴覚や嗅覚を強化するという独自の技を身につけていた。
「久々に使ってみようか…感覚強化…!」
…これが疚無 潔の厨二病たる所以である。
(今回は嗅覚でいこうか…浴場に来たスタッフは厨房以外のフロアの責任者とのこと。彼はどのスタッフがフロアのどこからいなくなったか把握しているはず。つまり、犯人は厨房スタッフに限られる)
体育祭の時のように兄弟を頼ることが出来ないため、イサギは1人で推理をしながら藍を捜索していた。
「1人だとやることが多くて疲れるなぁ…」
スンスンと鼻を動かしながら厨房へ向かう道中、気になる会話が聞こえてきた。
「なぁ、織田のこと見なかったか?倉庫に物を取りに行ってから帰ってきてないんだ」
「いや、見てないな。そういえば、あの宿泊客に尋常じゃないくらい怒ってたような…」
「ははは、何言ってんだ、初めて会う客に怒りは覚えないだろ」
「それもそうだな」
(大人しく聴覚を強化しておくべきだったか…とりあえず、倉庫だな)
「ククク、フハハハハハハハハハ!!!!!」
(なんだ?この「ここにいますよ」と言わんばかりの高笑いは。ふざけたやつだな。異世界の貴族でも居場所を教えたりしないぞ)
男は倉庫を出てすぐにイサギと対面した。
「なっ…なぜここに!?」
「お前が教えてくれたんだろ。おかげで助かったわ」
「はっ、はぁ?何を言っているのかわからないなァ」
(本気で言ってるなら相当バカだな)
「その奥に藍ちゃんはいるのか?」
「あァ、お嬢様方ならこの奥にいるぜェ」
「お嬢様方?お前…愛にも手を出したのか?」
「だったらなんだって言うんだァ、ヤマナシ イサギ。お前は今ここで死ぬんだからよォ!」
(またこのパターンか。最近喧嘩をふっかけてくるのは素人ばかりでつまらんな)
「うるさい、だまれ」
男はイサギに一直線に殴りかかった…が、イサギは難なく躱し、ガラ空きの首を後ろから思い切りぶん殴った。
「がっ…!」
「普通は軽くトンッって叩くもんだけど、お前は手を出しちゃいけない人に手を出したんだ。豚箱で眠ってもらおうか…」
男は完全に気絶したため、イサギの決め台詞を聞くことが出来なかったようだ。
「ふぅ、俺が滑ったみたいになっちまったじゃねぇか。ムカつくからコイツのことを代わりに縛っていくか」
イサギは気絶した男の襟首を掴みズルズルと引きずって食料庫の奥に向かった。
そして、今に至る。
「と、とりあえず、ここから出て、話はそれからにしようか!」
明石 愛の妹である藍に告白&キスをされたイサギは暗闇から出ることを提案した。そうしなければ気まずくて死にそうだからだ。
「そ、そうだね!ところで、その引きずってるのって何…?」
「えっ?さっき、高笑いしながらここから出てきたあと、転んで倒れたからここに連れてきてあげたけど…知り合いだった?」
「絶対違うよね?潔くんがやったんだよね?捏造が雑になってるよ?」
「イサギお兄ちゃん!このひとだよ!わるいひと!」
「そうなんだ。わかった。じゃあ、ここに置いていこうか。藍ちゃんが望むならこの空間の酸素を抜くこともできるけどどうする?」
「お姉ちゃん、さんそってなに?」
「潔くん!藍に変な提案しないでください!さすがにダメです!!」
「あっはっは、悪い悪い。んじゃとりあえず縛っていくか」
イサギは倉庫の奥の柱に気絶した男を縛り愛と藍を連れて外に出た。
「あっ、ちょっとまっててな。電話するから」
「待ってる!イサギお兄ちゃん!」
「よしよし、良い子だな」
イサギが藍の頭を撫でると愛は頬をぷくっと膨らませたので愛の頭も撫でてあげた。
「えへへ、ありがとう、潔くん」
『もしもし、俺だけど。旅館の倉庫の奥に今回のエモノがいるから処理を頼む。処断は任せる。位置情報は既に送った』
『…了解』
「これでよし、と。じゃあ、女将さんのところに行こうか。藍ちゃん、歩ける?おんぶしようか?」
イサギの提案に藍は目を輝かせて何度も頷いた。
「イサギお兄ちゃん!ありがとう!だーいすき!」
「俺も好きだよ、藍ちゃん」
「ま、また言った…」
おんぶをしてからの愛は終始ご機嫌ななめだった。
あぁ…妹ほしぃ…
次話は作者に妹が出来たら投稿します。
それか妹を一般公募します。
ハイセンスなんてナンセンスな名前だとワイトもそう思います…がツッコまないであげてください。成犬突きの他にも考えているので。