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92話 ある意味最終回

明石姉(愛)視点です。

 ぽとり、ぽとりと静かに均等なテンポで雫が落ちる音がする。それが私の頬に落ちた時、ようやく目が覚めた。


「ん…ここは…どこだろ…真っ暗…」


 目を開けると私は麻縄でグルグル巻きにされていた。隣には妹の藍がいた。藍もまた、同じように縛られていた。


「そうだ…私、厨房で仕事をしていたら呼び出されてお父さんが帰ってきたって言ってたから…」


 スタッフさんに連れられて行ったらその後…


「なんだァ、起きたのかァ、お嬢様ァ?」


 冷徹で独特な雰囲気を(かも)し低い声で暗闇の奥から静かに歩いてきたのは1人の男。旅館スタッフの作業着を着ている。


「あ、あなたは、誰?」


「俺の名前は織田 薪(おだ まき)()()()よろしく、お嬢様」


「…あなたの目的は?富?地位?名誉?それとも…復讐?」


「ククッ、なかなか頭のキレるお嬢様だなァ。そうだ、復讐だ、ヤマナシ イサギになァ!」


 潔くんに復讐!?まさか…


「お前らのところの体育祭で奇襲を仕掛けたんだが、リーダーが愚図でなァ、大人しく俺を頭にすればよかったものを…そしたらヤマナシとかいう家はアカシと繋がってるって聞いたからなァ…」


 それでここに潜り込んだのね…それでも…


「妹は関係ないです。妹を解放してください!」


「そう声を荒らげるなよ、お嬢様。あなた方は最後にじっくり楽しませてもらいますよ。ククク…フハハハハハハハハ!!!!」


 織田という男は高笑いをして暗闇に消えていった。


「お姉ちゃん…助けて…こわいよ…」


「愛、待っててね、良い子にしてたら必ず助けに来てくれるから」


「誰が来てくれるの…?」


「「ヒーローが来てくれる(ってね)」」


 誰かが同時に同じ言葉を発した。暗闇からその誰かがこちらに来ていた。ズルズルと何かを引きずるような音がする。


 私はもうダメだと思っていた。こんな暗い場所に閉じ込められて、誰も見つけることが出来ないと思っていた。男が言っていた「楽しませてもらう」というのはつまりそういうことなのだろう。好きな人に捧げることも出来ずに私は壊されてしまう。そう思っていた。


 けれども、君は来てくれた。体育祭の時も体力テストの時もそうだった。撫子ちゃんや夏原先生が人質にとられた時、君は必ず助けてくれた。今回もまた…君は来てくれたんだね…


「潔くん…」「イサギお兄ちゃん!」


「…怪我はないか?」


「…!」


 あの時と同じ…あの体育館の大扉を蹴り破った時と同じ…低く冷たい声…


 潔くんは私の頬に傷がついていないかさすってくれた。彼の手の温もりが心地よかった。緊張の糸が切れて涙が出てきた。


「…こわかった」


「…あぁ、わかってる。俺が来るまでよく頑張ったな。えらいぞ」


 頭を撫でてくれた。意外と大きい彼の手が私と妹の頭を撫でてくれた。


「もう大丈夫だよ、藍ちゃん。こわかったか?」


「こわかったけど、おーじさまが来てくれるってしんじてた!」


「おじ…さま…!?俺はそんなに老けて見えるのか…」


「ふふ、潔くん、違いますよ。王子様です」


「ふぅ…笑ってくれた。よかった」


 潔くんはわざと聞き間違えたフリをして落ち込んだ空気の流れを変えてくれたみたい。


「むぅ、ずるいです」


「ごめんごめんって。さ、女将さんのところに戻ろうか」


「うん!もどる!お兄ちゃんありがとう!大好き!」


 ―ちゅっ


「「えっ?」」


 妹が突然の告白。そして突然のキス。潔くんも私も子どもが歳上に一時的に抱く好意だと思っていた。けれど、それが一時的なものじゃないと思わせる行為(キス)を妹はしてしまった。それも唇に直接…


「あー、うん、嬉しいよ、ありがとう、藍ちゃん。俺も好きだよ」


「えっ?」


 潔くん…?まさかそっちの趣味が…ってちょっと待って!藍、姉の私を置き去りにするなんてそんなの業が深すぎるよ…


「やば…これ、俺のセカンドキスなんだけど…」


「えっ?セカ…ンド…?」


 待って待って!さっきから気になることが多いよ!1番目が誰だったのか気になるよ!!





ご愛読ありがとうございました。neren先生の次回作にご期待ください。


とはなりません。あと8000話くらい続きます。


次話は読者の方が読みたくなる頃には更新されているかもしれません。



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