10話 第一印象は初登校で決まる
馬鹿どもをぶちのめした翌日、普通に登校してしまった俺は当然校門で呼び止められた。俺を呼び止めたのは担任の梅ノ木 桃先生だ。この人がクラスメイトだったら優等生の委員長キャラ…になるんだろうな。
「おはよう、疚無くん」
「おはようございます、先生」
「その顔はどうしたのかな?右眼あたりが腫れているようだけど…」
しまった!昨日はどうやって怪我を誤魔化そうか考えてたらそのまま寝落ちしてしまったんだった!あちゃー。
「昨日自動販売機で飲み物を買おうとしていたら小銭を落としちゃって。下に手を入れて取ろうと思いまして顔を地面につけたら俺を地面だと思ったのか子供たちが俺の顔面を踏みながら通過していきました」
「本当に?どうしてそんなに具体的なのかな?」
「うううううう、嘘じゃないですよ」
「なんだか焦ってるみたいだけど。まぁいいわ、今度から気をつけてね」
ほっ…めちゃくちゃ嘘だけどなんとかなった…
「はい。ありがとうございます。ところで俺の身だしなみはどうですか?」
「うん、かっこいいと思うわよ」
「不安だったのでよかったです。ありがとうございます」
「ただ…」
「ただ?」
「髪は切らないの?」
確かに先生が心配するくらい俺の髪は伸びすぎている。たぶん前が見えないくらい。
「この学校はありとあらゆることが自由だから身だしなみも最低限整っていれば問題ないけれど、それって前見えてるの?危なくない?」
「見えてますよ。授業中は髪を留めるので大丈夫です」
「危なくない?ってそういうことじゃなかったんだけど、君がそれでいいならいいわ」
「それではまた教室で」
と、俺は先生に手を振って4階の教室へと向かった。相変わらず視線は痛い。男がいることに注目しているのか、私服であることに注目しているのか、はたまた前が見えているのか心配しているのか…俺にはさっぱりわからなかったし、どうでもよかった。
次話では今回の傍点部分を回収します