88話 イサギくんは逮捕寸前?
「いてて…酷い目に遭ったな…」
三途の川を渡りかけた俺は館内を散歩していた。
「しかし…こりゃ、広いな…さすがに迷いそうだ…」
旅館の中は水路が通っていて和を存分に感じることができる造りになっているようだ。水路の上には庭園で見かけるような小さな橋がかかっていたりロビーや宴会場近くの水路には鯉が放されていた。しゃがんで鯉を見てみると手で触れられる距離まで近づいてきて口をパクパクと動かした。ちょっとこわかった。
「これは…凄いな…」
金かかってんなぁ…とついつい悪い大人のいやらしい目線で見てしまった。
―ドンッ
館内をぼーっと散歩していると何かに…いや人にぶつかった。小さな女の子だった。小学生いや中学生くらいだろうか。
「ごめん、大丈夫?怪我はない?」
「はい、大丈夫です。お兄さんも大丈夫ですか?」
「僕は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
この歳で人に気を配れるなんて良い両親に育てられたんだな。
「お兄さん、今日、泊まりに来た人?」
「そうだよ。君は?」
「私はここに住んでる」
「そうなんだ」
つまり愛や紅花さんの身内ということになるが、たぶん妹だろう。
「じゃあ、泊まってる間は頼りにするね」
「うん!頼りにして!」
突然元気になったな…普段は頼られることがあまりないのかな?
「僕の名前はイサギ。君の名前は?」
「私は、あい!漢字で書くと藍色の藍だよ!」
あれれ〜、おっかしいぞ〜、それだと呼びづらくない?紅花さん。「あい」って呼んだら2人来るのは生活しづらくない?まぁ、人様の家庭にとやかく言わないけども…この子もよく言われるのか、漢字で教えてくれたからまぁ、わかりやすいけど…
「よろしくね、藍ちゃん」
「こちらこそ!イサギお兄ちゃん!」
ムム…撫子は同い年だが、年下のお兄ちゃん呼びはかなり心にクるものがある。実の弟は絶対に「兄」なんて呼ばないし。
「イサギお兄ちゃんはここで何してるの?」
「んー、散策…いや探検かな」
「そうなんだ!温泉にはまだ入ってないの?」
「まだ入ってないよ。どうして?」
「イサギお兄ちゃんと入りたかったから!」
いやダメだろ。今度こそ三途の川を渡る気がする。
「いや、それは、どうだろう…藍ちゃんは何年生?」
「4年生だよ!」
ダメじゃん。誘拐になっちゃうじゃん。高身長の弊害が出ちゃうじゃん。
「んん…お母さんに聞いて許可が出たらね」
とりあえずこう言っておけば大丈夫なはず…
「うん!わかった!お母さんに聞いてくるね!じゃあ、またね!」
「あっ……」
まぁいいか。夜じゃなくて今入ればいいよな。寝る前にササッとシャワーだけとかでもいいだろ。さてと部屋に戻るか。
「レディもウーマンもガールも…よくわからないもんだな…」
まぁ、ジェントルマンもボーイもただのマンもよくわからないんだけども。
最近思ったこと…
1日3話投稿すると仮定した時、1年で投稿される話数は1095話になるそうです…このサイトで1番話数の多い投稿になったら悪目立ちしそう…
(もっと面白くなるように頑張ります)
次話は4時投稿予定です
この物語はフィクションですが、今回の物語で舞台設定にした旅館は以前(と言っても6年くらい前に)作者が実際に行った旅館を(完全うろ覚えですが)モチーフにしています。丸々真似するのはよくないと思ったので、うろ覚えとイメージだけで書きました。もしかしたら知ってる人もいるかもしれませんね^^