87話 あれっ、この展開、以前見た気が…
デジャヴってやつです。
今回は久々のイサギ視点です。
明石 愛の母であり女将でもある明石 紅花が経営する老舗旅館 明石に潔、桃、詩は徒歩で向かっていた。
「なんか、徒歩だと旅行感ないですね」
「そうね、でもデート感はあるんじゃない?」
「それは…そうかもしれないですけど…」
「なになに〜?イサギくん、照れてるの?可愛いところあるじゃん」
「なんかテンション、高くないですか?梅ノ木先生。それに比べて…どうかしたの?詩」
「んえっ?いやっ、なんでも…ないよ?」
「そう?具合悪かったら言ってね、詩」
「むぅ、ずるい!さっきからなんなの!呼び捨てでタメ口って!これでも教師なんだけど!」
「いや、詩が旅行中は呼び捨て且つタメ口じゃないと嫌だって…」
「じゃあ、私もそれね!教師命令だから!」
「なんて都合のいい立場なんだ…」
1人は嫉妬し、1人はモヤモヤし、1人は振り回されながら旅館に到着した。ロビーでは女将や大勢のスタッフが出迎えてくれた。その中には同級生の愛もいた。
「ようこそおいでくださいました、疚無様、梅ノ木様、夏原様」
「こんにちは、紅花さん。先日はありがとうございました。助かりました」
「いえいえ、当館を利用中はなんなりとお申し付けくださいませ。女将自ら駆けつけますよ、ふふふ」
「ちょっとお母さん!私が潔くんの対応するから!」
「愛、これは女将の仕事よ。半人前のあなたには任せられないわ」
「女将って都合のいい言葉ね!いつもはそんなこと言わないくせに!」
親子喧嘩は他所でやってほしいんだけど…
「あのー、そろそろ入ってもいいですか…」
「すみません、お恥ずかしいところをお見せしました。どうぞ。ご案内します」
ふぅ、よかった。にしても、男性スタッフの目が痛い。女将の一方的な肩入れのせいだろうな。
「なんだよ、アイツ、女将のお気に入りか?」
「ナヨナヨしやがって、女将はあんなのがいいのか?」
「ご息女もさすが女将の子って感じだな。見る目がないな、ははははは」
俺のことを言われるのは慣れてるが、愛や紅花さんのことを言われるのはあまり良い気分ではないな…今日はゼロも兄貴もいないし、さて、どうしたもんか…
「すみません、疚無様。うちのスタッフにはあとでお灸を据えておきますので」
何を考えているか顔に出ていたのか紅花さんに申し訳なさそうに謝られた。
「いえ、紅花さんは何も言わないでください。たぶん、言われても納得がいかないでしょうし…もしも目に余るようなら奥の手を使います」
まぁ、その奥の手というのも、俺自身、あまり好きではないから使いたくないのだが…
「分かりました。お客様に任せるのは気が引けますが、疚無様がそう仰るのであれば私は従いましょう」
「ありがとうございます、女将さん」
「それでは、こちらがお部屋になります」
案内された部屋は、家出したあの日泊まった月が枯山水を照らした絶景の部屋。
「この部屋を用意してくれたんですね」
「はい、あの時はお楽しみいただけたようでなによりです」
それだと少し語弊があるような…
「イサギくん、お楽しみってどういうことかな?」
ほら、来た。
「イサギくん…あとで詳しく聞かせてくれるかなぁ?」
さっきまでテンション低かったよね?無口だったよね?
「お客様…いや、潔くん…お母さんは一応既婚者なんだけど…」
あれっ、君も怒ってるの?
「ちょっと、3人とも落ち着いてください、何を勘違いしてるのですか?」
ほっ、紅花さん、ナイスフォロー!
「一緒に抱き合っただけですよ」
「あっ、あの、ちょっ、待っ…」
―ぎゃあああああああああああああああああああああ
桃にジャーマンスープレックスされ、愛の卍固めが炸裂した。
※詩はカウントをとっていた。
この後、イサギは三途の川を渡ろうとしたのだが船頭さんに船賃はカード決済できないという旨を伝えられ現世に戻ってきたとかなんとか。
次話は19時に投稿します。
あの子の妹が波乱を呼びます。
85話の後書きに「あなたの目が覚める頃には投稿されているでしょう!」みたいなことを書いたら4時にも関わらず100人以上の人がアクセスしてくれてました。普通にびっくりしました。でも嬉しいです。その100人全員がブクマしてくれればいいのに…((ボソッ…←冗談です。