81話 ボケとツッコミのカオススパイラル
梅ノ木先生視点です。
珍しくコメディ要素多めです。
「それでいきなり家まで押しかけてどうしたんですか?」
「あなたが家出した時のことを教えてほしいの」
「成り行きとかってことですか?」
「それもそうだけど、どこで寝泊まりしたとか」
「成り行きは…」
イサギくんは撫子さんと喧嘩して一方的に家を出たことを教えてくれた。やっぱり、彼は謎が多い。そんなミステリアスなところも…(以下略)
「寝泊まりしたところは、愛の家です」
「「は?」」
これのことは撫子さんも初耳だったみたい。
「あ、いや、確か宿屋だったから…」
嫌な予感がする。
「愛の宿…ラブホテr」
「ちょっ…」
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁ!!!!」
私が声を出すよりも先に撫子さんがイサギくんの口を手で覆った。
「ど、どうした、撫子…そんなに取り乱すとは思わなかったぞ」
「取り乱すよ!不純すぎるよ!まだ1人で入れないでしょ!」
「なるほど、そういうことか…」
イサギくんは自分が何をしでかしたのかようやく理解したみたい…よかった、よかっt
「俺はそこまでコミュ症じゃないから1人でも入れるぞ」
「「そういう問題じゃない(よ)!!」」
…わかってなかった。
「明石 愛の家に泊まったんだが。老舗旅館 明石っていうところ。一応視察目的だったんだけどな」
「えっ?」
「それって、もしかして、私たちのために?」
「まぁ、そういうことに…なるのかな」
彼は頬をかきながら顔を逸らした。めちゃくちゃいい子…可愛い…好き…それにしても…
「愛の宿とか紛らわしいですよ。最初から旅館って言ってください」
「そ、そうだよ!妹として誰と行ってどこまでやったのか気になるでしょ!」
「さっきから何を言ってるんだ?」
「そうよ、撫子さん、落ち着きなさい」
「す、すみません。取り乱しました」
けれど、私も気になる…!イサギくんの初体験…ハジメテ…気になるわ!!
「1人で行って温泉入ってご飯食べて寝てきただけだよ」
「「なーんだ」」
「聞いておいてその反応は酷くないか…」
「それでどうだったの?レビューしてよ」
「友達の家を評価するみたいで嫌だな…でも、そうだな。温泉はかなり広くて仕切りが低かったな」
「「ん?」」
「1人で行ったのにも関わらず料理が2人前出てきて女将さんと一緒に食べたよ。ちなみにルームサービスだそうだ」
「「んん?」」
「寝室は和室で景色もかなり良かった。月明かりに照らされる中庭がなんとも言えないんだ、これが。それを女将さんと2人で横になって見ていたらいつの間にか寝てしまってな。朝起きたら膝の上だったんだ!あはは、笑えるだろ?」
「全然笑えないよ!台無しだよ!」
「どういうことよ!イサギくん!浮気なの!?」
「いや別に誰とも付き合ってないんですけど…」
そんなに年上が好きなの!?JDくらいじゃダメってこと!?30代前半~40代前半が好きなの!?!?!?じゃなくて一旦落ち着きましょう。論点のすり替えは良くないわ。
「まず温泉の仕切りが低いってどういうことなの?」
「どういうことも何もやろうと思えばどちら側の風呂も覗けるってことじゃないですか?俺は興味無いのでやりませんけど」
「はぁ!?なにそれ!」
はぁ!?なにそれ!さいっこうじゃない!でもちょっと待って。
「うーん、それはちょっと問題ね」
「ですよね、おかしいですよね!」
「撫子さん、やっぱり気付いた?イサギくんが私の体に興味がないなんておかしいわ」
「先生、落ち着いてください、その発言は教師としてどうなんですか?」
あれっ?私、またなにか、やっちゃいました?
「次に夕食のルームサービスのことよ。おそらくそれはルームサービスじゃないわ。女将さんがイサギくんに接触したかっただけよ!これは家庭訪問を検討しなければいけないわね」
「先生、家庭訪問は確かに両親を交えてするものですが、親に直接物申すために行うものではない気がします…」
むむ…まさか生徒に諭されるなんて…さすがイサギくんだわ。
「それで最後に…」
「最後の膝枕って何!?」
撫子さんがさっきまで黙ってたのに急に声を荒らげて憤慨した。
「落ち着け、撫子。別に最初から膝枕だったわけじゃないぞ?」
「その前に、そ、添い寝…したんでしょ?」
「添い寝っていうかいつの間にか隣に寝てた」
「ど、どうだったの?私より良かったの?」
えっ、撫子さん、それはそれで話を聞きたいのですが。
「うーん、なんかいい匂いがしていろいろ柔らかかったぞ」
「ちょっとどういうことよ!おにいちゃん!この浮気者!!」
撫子さんはイサギくんの「柔らかい」発言でとうとう堪忍袋の緒が切れてしまったようだ。両肩を掴んで揺らしてる…こわ…
「まぁまぁ、落ち着いて、撫子さん。布団や枕が柔らかくていい匂いだったってことだよね?」
「なぁんだ、そういうことなら先に言ってよ…」
話は最後まできちんと聞きましょうね、撫子さん。
「いや、女将さんの体が…」
「主語ははっきりしましょうね、イサギくん…」
「えっ?ちょっ、せんせっ?」
―ぎゃあああああああああああああああ
教師という立場を忘れてイサギくんに卍固めをした。
めちゃつよなイサギくんも三途の川の手前をうろついたとかなんとか。
次話は4時投稿です。