さあ、フィナーレだ!
今回のバトル終了から、「山札」を「デッキ」と、呼び方を変えます。
……確かに、手札も後衛も無い。
だが! だからこそ、面白いんだ!
何故なら、未来を掴む者は、いつだって見えない戦慄に怯まず、自分の心の絶望を乗り越えた者なのだから。
「俺のターン! ファースト・フェイズ!」
さあ! 逆転のカード、来い!
「……トーマ、何を引いたの?」
「セカンド・フェイズをパス! そして、サード・フェイズ!」
「……トーマ?」
「カードの効果で、前衛のモンスター全てを表側のまま後衛に変更する事で、条件を無視してレヴォルモンスターとして特殊召喚する!」
「……え!?」
「召喚! 孤高の黒剣士アリア!」
「……ランク5のモンスター!?」
「ああ、そうだ。」
「トーマ! 一体何処で手に入れたのよ!」
「貰っ……、いや、受け継いだ。」
はは。
俺も驚いているよ。
こんな場面で引くなんて、な。
……そうか!
俺のヒーロー達は、いつもこんな感動を!
さあ、フィナーレだ!
「フォース・フェイズ!」
「……くっ。」
「俺は、レヴォルモンスターの孤高の黒剣士アリアで攻撃する。」
「く、……後衛の魔法カード『精霊の威圧』発動! 相手モンスター1体の攻撃を1回無効にする。」
「なに!」
「残念だったわね、トーマ。私も持っていたのよ、攻撃無効系を、ね。」
「残念だったのは、レーナの方だよ。」
「え?」
「孤高の黒剣士アリアの効果発動! 後衛に表側に存在するカード1枚に付き、1回攻撃を追加する。」
「……そんな……」
「孤高の黒剣士アリアのアタック!」
「来ないでー! 後衛の魔法カードの効果を発動するわ!
2枚の『精霊の裂風』の効果を孤高の黒剣士アリアに!」
これでアリアの戦闘力は、40下がり140になった。
「まだよ! 後衛の魔法カードの効果を発動するわ!
2枚の『精霊の祝福』の効果を森の狩人エルザに!」
魔法カード「精霊の祝福」は、自分の前衛のモンスター1体に戦闘力を60追加するから、森の狩人エルザの戦闘力は、60×2で120になり、2枚を足してエルザの戦闘力が160になった。
「勝ったわ!」
「まだだ! 後衛のブラックウルフの効果を発動!
ブラックウルフが後衛で表側の時、1ターンに1度、自分の前衛のモンスター1体の戦闘力を50上げる!」
「……残念だったな、レーナ。アリアでアタック!」
「……ぐ。」
これで、レーナの命に残っているカードは、たったの「1枚」だ。
「……最後だ! レヴォルモンスター孤高の黒剣士アリアが、森の狩人エルザにアタック!」
「きゃあああ……」
……勝った!
「……負けちゃった。」
「……レーナ。」
そして俺達は、バトルを始める前の場所に戻っていたのだけど、何故、地面に横になっているレーナと、そのレーナに膝を突いてレーナの上半身を抱き上げる俺、という構図になっているのかな?
……創造神のイタズラか?
流石に周りの視線が痛いから俺達は移動した。
ただ、レーナは「神庭決闘」のダメージが深かったからか、俺が「お姫様抱っこ」をするハメになった。
そして、レーナも混乱していたけど、「降ろして」は、最後までレーナの口からは出なかった。
俺達は、近くの個室有りの飯屋に行き、個室をとって、とりあえず果実水を頼み、注文した品物が来た後、レーナは話し始めた。
「多分、トーマが1番気になるのは、あの『デッキ』の事よね?」
「まあ、な。」
「あのデッキはね、お父様が私の為に用意してくれたの、先生と一緒に。」
「……」
「ただ、お父様は、エルフ族の有名な村と交流していたし、先生もエルフ族だったわ。」
「……そうか。」
多分、そのエルフ族の村が絶望的な「何か」が、発生したんだろうな。
「それに……」
「それに?」
「それに、私、良くトーマの事をお父様に話していたし。」
レーナ、俺の評価を下げる様な事は言って無いよな?
俺、チート系主人公じゃないから、貴族で、伯爵家の、レーナのお父様に目を付けられるのは、勘弁して欲しいんだけどなぁ。
そう!
実は、レーナの本名は「レーナシア=ソル=ゼフィーロス」と言って、立派な伯爵令嬢(三女)なのだ。
「トーマ、どうかした?」
「いや、何でもないよ。」
でも、神庭決闘の影響か、レーナの顔が少し赤いんだよな。
……大丈夫かな?
「それでね。お父様が、2ヶ月前に私にくれたのよ、あの『デッキ』と、教えてくれる先生を。」
ガルシアおじさんは、何を考えているんだ。
因みに、ガルシアおじさんは、レーナのお父さんだ。
「トーマが『魔導書グリモワール』に、熱中なのは知っていたからだと思う。勿論、エルフ族がモンスターカードになるのは、かなり珍しい事なのは、私にも分かっているわ。
でも、これでトーマと話しが出来ると思った私は、一生懸命に覚えたのよ。」
「……まさか?」
「うん。先生に薦められたの。想いをきちんと伝えるのなら、絶対に『神庭決闘』の方が良いって。」
……まあ、確かに、レーナの真剣な想いは感じたな。
その後も、色々と話してくれたが、レーナに魔導書グリモワールを教えたエルフ族の先生(女性)は、既に王都には居ないらしい。
そして、レーナが勝った場合は、俺はレーナの専属執事にする予定だったとか。
……レーナ?
何故、顔が赤くなる?
……触れないでおこう。
「私、負けたから、もう何も言わないわ。それで、トーマはこれからはどうするの?」
「……そうだなぁ。次の大会の受付は終了しているし、次の3年後の大会は出たいと思う。だから、冒険者をしながら、カードを集めてデッキを強化したいと思っている。」
「……それでね、トーマ。」
「何、レーナ。」
「お父様がね、トーマが勝ったら、家に呼ぶ様に言われているの。……良いかな?」
……ソレは幼馴染みとして、そうでないとしても、また俺の家が商会である以上は断れないのですが、レーナさん。
「お招きに与ります。」
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




