神々に私達の『想い』を聞いて頂き誓いを立てる神域です。
次から、いよいよ冒険編です。
そりゃあ、神々も、幾ら戦略が高度でも、演舞の様に「魅せる」為だけの、神霊格を上げる為だけの、中身の無い決闘なんか見たくないよな。
「……そうか。確かに、それしか考えられんな。」
「ロザリス、トーマ。分かっていると思うが……」
「可愛い娘を裏切る気は無いわよ。」
「少なくとも、大切だと思っている幼馴染みを、悲しませる気は無いよ。」
「ありがとう。」
「……こうなると、長命のエルフ族は、伝承とかで、俺達の知らない内容が有るのかもな。」
「……エレンを呼ぶ。」
8分後に、半分寝ているエレンが到着した。
「寝ている所をすまない。直ぐに確かめたい事が有って、無理に来て貰った。」
「……はい。」
まだ半分寝ている。
「……重要な事なのだ。起きてくれないか?」
9分後
「大変お待たせしました、ゼフィーロス伯爵様。」
「うむ、すまない。場合に因っては、世界が変わる可能性が有ったのでな。」
「世界……ですか?」
「そうだ。」
「ゼフィーロス伯爵様、その確かめたい『事』とは?」
「先ずは、エレンが識る『神庭決闘』について、知っている事を全て教えて欲しい。」
「……分かりました。私達が識る『神庭決闘』とは……」
エレンが話した内容は、最後以外は、俺達の知っている事と同じだった。
そして、その「最後」とは……
「神庭決闘とは、神々に私達の『想い』を聞いて頂き誓いを立てる神域です。」
……そういう事か。
つまり、神庭決闘とは、神々の代理人を決める場所という事か。
「この世界は、魔導書グリモワールが強ければ強い程、周りに対して自分の意見が通る。
そんな中、世界を善き方向に導く者を見定める為の場所こそが『神庭決闘』と、いう訳だ!」
「はい、そうです。この最後の『一文』を、私達エルフ族は認めた者のみに伝えている『伝承』です。」
……遊んでいても、創造神の名と身分は伊達では無い!
という事か。
「ありがとう、エレン。すまないな、寝ている時に。」
「いえ。少なくとも、トーマには教えたいと思っていたので、問題はありません。それに、既にゼフィーロス伯爵家は、トーマを捨てる事が出来ませんから。」
「……参った。」
「これで、失礼します。」
エレンは、優雅に静かに退室した。
……欠伸を我慢しながら。
「まあ、王族にすら秘密にしていた方が良いと思うな。」
「……そうだな。」
「俺も失礼するよ。」
「ああ。トーマ、おやすみ。」
「おやすみなさい、ガルシアおじさん。」
「おやすみ、トーマさん。」
「おやすみなさい、ロザリスおばさん。」
翌日からは、今まで以上に頑張った!
しかし、3ヶ月後に別れが待っていた。
「行きたくないよー。」
「仕方ないだろう。貴族の者としての義務だ。」
「3年もトーマに逢えないなんて嫌ー!」
「レーナシア!」
「だってー。」
レーナが泣き叫び、その周りをガルシアおじさんとロザリスおばさんが囲っていて、何かを言いあっていた。
「どうしたんだ?」
「トーマ。実は……」
説明は、こうだった。
王立魔導学園に通わない、年齢が前世で言う「中学生」の貴族の子息令嬢は、王都の「王立学園」に通う義務が有るそうだ。
行かない者は、貴族としとの権利と義務の放棄という事で、年齢が15歳になると、王国の法律で強制で書類上は貴族籍から平民籍にさせるらしい。
だから、レーナは「王立学園」に通わなければならない、という訳だ。
……頑張れ、レーナ!
因みに、場の空気を読んで静かにしている猫の獣人族のリンは、レーナに憐憫の表情をしている。
リンも、この3ヶ月間で魔導書グリモワールの腕を上げている。
そして、最近は、ウルフ系の上位種とかを手に入れたから、俺のウルフデッキをリンに託した。
リンは、凄く喜んでいたよ。
……それを脇で、レーナとソフィアが悔しがっていた。
ソフィアも、王立魔導学園に入学準備も済んでいて、たまに、俺達と一緒に狩りに行ったり、屋敷で魔導決闘をしたりした。
そして、先日、ソフィアが真剣な眼差しで、「神庭決闘」での決闘を挑んで来た。
勿論、俺は受けた。
勝敗は、俺の勝ちだ。
でも、油断の1つも出来ない接戦で、この約1年間で良く此処まで来たもんだと感心した。
それに、ソフィアも凄く悔しがっていた。
あれなら、もっと強くなれる!
……でも、挑んだ理由は、教えてくれなかった。
そして、レーナには、「王立学園を卒業した綺麗で素敵な淑女になったレーナを見たい。」と言うと、「分かった。3年後の綺麗で素敵な私を楽しみにしてて。」と言ってやっと、王立学園に行く気になったようだ。
だから、レーナから見えない位置から、出している台詞のカンペを早く仕舞ってください、レーナの現専属侍女のリリアさん。
レーナの王立学園に行ったのを確認してから、ソフィアは、王立魔導学園に行った。
まあ、ソフィアの場合は、正確に言うと「編入」で、しかも、1年早く、だ。
ソフィアの努力が実った結果だな。
両方とも、全寮制だから、本当に卒業するまで基本的には会えないからなぁ。
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。
レーナとソフィアの未来はある意味で決まっていますが、彼女達は、1位の席を競っています。
何の席か?
そりゃあ、勿論、トーマの……




