私の名は『シュナ』よ。
鬼族は、創造神の趣味と遊び心で生まれました。
俺は、3日以内と予想したが、更に、来るのは「夜」だろうと推測していた。
何故なら、前世の日本に於いて「鬼」を「陰」と読む場合が有るからだ。
後、エレンには「夜」の襲撃の可能性を伝えてある。
……その夜、俺の予想が当たった!
しかも、初日かよ。
俺は、魔導書を開いてフォレストウルフ3体を召喚して、周りの状態を把握する為に放つ。
放ったフォレストウルフ2体が破壊されてカードに戻って返って来た。
俺は、ブラックウルフ3体を召喚して破壊された方に2体放ち、俺はもう1体のブラックウルフと一緒に残ったフォレストウルフが居る場所に向かった。
2体のブラックウルフは、俺の意思に従い、エルフを襲っている鬼達を次々に倒して行き、討伐された鬼族は俺の魔導書に収納されていく。
そして、エルフ達が最も抵抗の強い場所、つまりは、鬼達の主力が居る場所に辿り着いた。
……どうやら、鬼達はエルフの子供を人質に取る事に成功したみたいだ。
……ヤバいな。
エルフ達は、俺の予想通りの対応を始めている。
異世界転生ラノベ……、いや、普通に現実でも有った。
人質を取り「人質を解放したければ指示に従え!」って、やつだな。
何故、と思った。
現実の方はまだ仕方ない。
絡みあう柵が複雑過ぎるからだ。
けど、異世界転生系ラノベは、別だ!
現実以上に好き勝手に生きれる世界で、何故、悪人の言葉を信じる?
何故、悪人の指示に従う?
人質にされた存在が大切なのは分かる!
だけど、指示に従えば、人質を取られた方が望む形で、人質が返って来ると思えない!
俺は、フォレストウルフを魔導書に返還して、俺のエースカードの「孤高の黒剣士アリア」を召喚した。
……そして、俺は皆の前に出た。
「ちょっと良いか?」
「トーマ!?」
「誰だぁ?」
「俺の事はどうでもよいだろ。それよりも、情けない事をしているな。」
「……何を言っているのか、分かっているのか?」
「ああ。自分の力に自身が無くて、弱虫だから、人質を取っているんだろう?」
「貴様ぁー!」
「ほれみろ! 当たったから吠えた。」
「トーマ……」
エレンが、辛そうな顔をしているが、俺も此処で下がる訳にはいかない。
「ほれ、弱虫なんだから、人質を前に出して身体を隠せよ。」
「……良いだろう。それ程、死にたいなら殺してやる。」
そう言うと、隣に居た別の鬼が前に出た。
「やっぱり、弱虫君は出ないのか~。」
この時、別行動をしていた2体のブラックウルフから討伐が終わったという意思が伝わった。
……良し!
時間稼ぎは成功だ。
俺は、2体のブラックウルフに次の行動を伝えた。
「……殺してやる!」
「だからぁ。弱虫君は吠えるだけでしゅかぁ?」
「ぎ、ぎざまー!」
ぶち切れた弱虫君は、人質を物扱いで、違う鬼に向かって投げた。
行け!
「ワフっ。」
闇に潜んで居たブラックウルフの1体が見事に人質になった小さなエルフを助けた。
「今だ!」
俺が、そう言った瞬間に、アリアは鬼達を次々に倒していった。
弱虫君は、理由が有って最初に右腕と右足を切断して無力化してある。
……残ったのは、俺と同じぐらいの年齢に見える顔と、主人公系の格好いい姿の鬼が1人。
激しいバトルの中、一旦距離が離れた所で、向こうが話し掛けて来た。
「全く、お爺様に『やり方を覚えろ』と、言うから黙っていたけど、何とも『誇り』の『ほ』も感じられないやり方ね。」
「……今の言葉から、強さは兎も角、君の立場は上位みたいだな?」
「まあね。コイツらの長の孫だからね。」
「……名は、有るのか?」
「ええ。私の名は『シュナ』よ。」
「そうか。では死ね!」
「待って!」
「何故?」
既に、アリアの剣はシュナの首を捉えている。
「私は覚悟を決めているわ。だから、お爺様の所に戻って説得したいの。」
「……信用出来ない。」
「私の『角』に賭けて。」
「……良いだろう。……アリア!」
俺が叫ぶと、アリアは弱虫君の左腕を切断した。
「大切な人を奪われた憎しみを直接晴らしたい人は、どうぞ。」
「……容赦無いわね。」
「当たり前だろ。それに、誇りの無い奴ほど邪魔なゴミでしかないからな。」
「確かにね。」
敢えて傍観していてくれたエレンが、声を掛けて来た。
「トーマ!」
「エレン、ありがとう。俺を信じていてくれて。」
「……私は動けなかっただけよ。それよりも、この後はどうするの?」
「勿論、鬼達が居る場所に行く。」
「……私も行くわ。」
「何故?」
「トーマに黙っていたけど、私は、その、あのね、この村の村長の娘なの。」
「……それだけ?」
「え?」
「それは、エルフの村で起こった事と、村に到着した時の周りの反応と言葉で分かっていたよ。」
「分かっていたの!」
「うん。でも、エレンが言って来ないから、理由が有ると思って黙っていたんだ。」
「……」
……茹でダコなエレンが、そこに居た。
「あはははは。おれはお前を気にいったわ。」
「そうか。」
「それじゃあ、行こうか。」
「ええ。」
こうして、俺達は夜の中、シュナの案内で行く事にした。
……夜明けを待つ時間が勿体無いからな。
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




