――頭に血が遡ってゆくのが、何故か手に取るように理解できた。齢13歳、始めての感覚である。
原因は、同級生の男子1人。私の母を馬鹿にしてきた。「人の家族を謗ることは、決してあってはならない」そう天法師様もおっしゃっている。これほどの罪はない。
第一に、私たち『真人族』は、平和を謳うべき種族なのだから。争いの種になりうる彼を、見逃すことはできないのだ。
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遥か昔、『人間族』という、野蛮で愚かな種族が地上を支配していた。独特の文化を発展させ、その数はおよそ10億は存在していたと。
人間族は真人族よりも、高い知能を持っていたという。が、肉体は脆いもので、真人族の拳1つで崩れてしまう。そのため、人間族は、知能を巡りつくし、兵器という戦いの道具を造り、同族殺しが行われていた。
同族殺しが行われていた理由として、人を見下す悪質な心と『怒リ』という感情があったからだという。
怒リは、真人族には無い。同族殺しなど、無駄な悲しみを生じるだけである。真人族は人間族を哀れに思い、地上から葬り去った。
そうして、真人族が住みかであった天を捨て、地上に移り住んだ。
――未だに、人間族は魂だけとなり、地上を彷徨っているという。