マネーゲームを遣り過ぎて、死んだあいつの話し!
・・・まさか?!と、現実を疑った2019年は、不動産バブルやインバウンドが、コロナを契機に大きく衰退する分岐の年となった。そして、オリンピックで何が起こったか記憶にない。
ところが、その転換期にあって、時代の変貌を見ようとせず、否定し続けた企業のトップがいた。彼の現状に対する愚弄が、自殺者や過労死を出した。また、莫大な損益を隠し、それを認めず、更にその責任を社員のクビを切って斬罪させた。
これは真実を含む、とある企業の話しである。
《ビル事業部事務室》
社員A「今回の朝会は、誰が生けにえになるんだ!?経常利益を上げるために、維持費や下請けの人件費を切れと社長が言ったのに、ちゃんとやらないやつがいるって、昨日カンカンだったらしいぞ!」
社員B「うちは、とりあえず緊急的なもの以外は、先送りしたが、いつまで現場が保つかだ!この手の話しは、下請けが手を抜いて、後で問題が表に出ると、お前が責任者だろうって、尻拭いさせられるんだよなあー!」
社員C「お前らは未だいいよ!俺のとこは、とんでもない問題が先送りされて、誰も当時の経緯を知らない。どこかに別の地雷が埋まっていないかと心配していたら、案の定、三年間も下請けや設備会社に未払だった不明金が8桁(数千万円)だ。監査もザル!契約履行の処理も、稟議も、現地検査も記録がない。とうとう今の担当者が、先週メンタルで休職しちまったよ!」
専務「お三方!浮かない顔して、どうされましたか?」
社員A「あっ、はあ〜、長作専務!お疲れさまです。」
専務「よかったら、朝会の後で僕のとこに寄りませんか?!」
社員A「あっ、はい!、三人で伺います。
社長が来られた!、専務、また後ほど!」
社長『毎週、この朝会を、ビル事業の部屋で、立ってやっているのはだなぁ、緊張感を持って俺の話しを聞いてもらうためだ。そして、故人(会長)が社長のときからだから、もう十年もこうやっている。うちのやり方として、これがベストとは思わんが、問題だとも思わん!。物を申すなら、うちの会社を追い抜くぐらいの成長を見せてくれと、他の会社に言っておく。
勿論、うちのやり方に男も女も関係ない。…ところが、この会議の状況を誰かが労基(労基基準局)にチクったらしいぞ!。直接トップの話しを毎週2回も聞けて、意見交換が面前でできる場を、貴重だと思わんのが不思議だなあ!?
そんな話はさておき、、お前等も知ってのとおり
、うちの会社は、オフィスビルでナンバーワンだと言うのは、コマーシャルの話。賃料は坪単価でざっくり2万から2万5千円が相場だとする。お前等が賃料改定でテナントと交渉して、わずか百円上げるだけで、またビルが一つ増えるんだぞ。それで、うちの会社の好調さが広まって、ブランド力が増す。相手も本社や支社が、うちのビルにあるから流石と言われるんだ。収益も右肩上がり、ビルの数も、株価もトップを狙えるようになっている。それが、うちのブランドなんだ。分かるか!、、これがナンバーワンの本質だ!
だから、強気で攻めないで、チンタラ、すかたんな交渉しかしないで、このブランドが維持できるわけがない。
ところがだ!
誰とは言わんが、前回と同じ賃料価格でテナントと契約してたらしいが、そんなことしてたら、そこらの安アパートと同じだぞ!いい加減に目を覚まさないと!
お前等も、風邪とたいして変わらない病気で、世間にほだされて、バタついている場合じゃないぞ!商業もホテルも貸しホールも、十年前から第六期成長計画で大幅に増床してきているんだから。こんな流れは、一時的に落ちてもまた戻ることは、経済学も証明している!、経済はアップダウンが当たり前だ。今、弱気になっているやつらが、ちゃんと戻せると思うか?、賃料を下げたら、またそれ以下の価格で相手も交渉してくる。テナントの経営悪化で家賃が払えないなら交渉不成立!。出て行ってくれと言う腹で攻めながら、別のテナントを探せるくらいの準備をしてやってもらう。
これから、新築から二年目で賃料改定する、ハードバンク(本社)が入っている港区の拠点ビルの交渉戦略を説明させる。あくまで、これは参考だからな。これよりマシな戦略で結果を出すために、耳を掃除してよく聞いておけ!』
・・・あまりに現実を理解していないトップの指示が、延々と1時間あまり続き、その後、従順そうな若手キャリアの課長に繋いだ。
その課長は『攻めの賃料交渉戦略』とやらを、秘密保持のためと大事そうにタイトルを言って、小さなOHPで、手書きの資料を写し出していた。
朝会の参列者はざっと150名。メモを取る者もなく、呆れるほど、見難く、説明もつたなく、こっちが交渉を仕掛ける前から、相手も駆け引きを仕掛けていることも知らない、薄っぺらな内容がその場の落胆を加速させた。
《専務のデスク前》
社員A「専務、失礼します!」
専務「おう!3人お揃いになって、お疲れさまでした!いつにも増して、白熱したみたいですね。」
社員C「確かに、あのテンションでお昼までやられたら、もうグッタリです。あんな感じで、経営会議や取締役会を毎回やられるんですか?」
専務「まあ、そういう時もありますが、メンバーは慣れていますし、大人の集団ですからね(笑)
忘れないうちに話しておきますが、社長が今度、お三方と呑みたいと言われてまして、私が仕切り役を仰せつかりました。」
社員B「なんと、クビを洗って待ってろと言う感じですか!
朝会の生けにえで満足しないから、夜の飯にも何か出せですね。まいったなー。」
専務「まあー、私も含めて、ちょっと作戦を練って臨まないと、周りに飛び火する可能性がありますからね。でも、策士策におぼれるということもあるので、一旦、それぞれがネタを持ち寄りましょうか!」
社員C「分かりました。それじゃあ、次の朝会までに各自がメールでネタを共有しておくことで、スピード感的には大丈夫でしょうか?、それで皆んなが良ければ、私は大丈夫です。」
専務「そうですね!今の予定では、来月に是非!と社長にお願いしてますから、そうしましょう!」
社員A「それでは来週、宜しくお願いします。」
社員B「仕事の優先段階のトップに社長対策ですか!、ともかく頑張ってみます!」
専務「まあまあ、そんなこと言わないで、なんとか!
あっ!皆さん、ちょっと待って下さい。ハードバンクが記者会見してると、今広報から幹部一斉メールが来ました。携帯でテレビを見るには、どうするんでしたっけ?!」
専務庶務「専務!港区担当の課長からお電話が入っています。」
専務「もしもし!、……それは、どこまで耳に入れてるの?総務の秋山さんに至急連絡してくれる。会議のお膳立てしてから、三役に突撃だね!もう、ここまで来たら、パフォーマンスでもいいから『てぇーへんでい!』ってやらないと。だから、しっかり頼むよ!」
社員A「何かありました?」
専務「うん!ハードバンクが、港区のうちのビルから出ていくという話になったって!」
社員A「ええ!まじですか?!」
社員B「今日の今さっき、朝会で賃料改定のナンチャラ戦略とかを、若手の課長殿が説明したバッカですよ!」
社員C「最悪ですね。社長室には、ハードバンクのチームのユニフォームが壁に飾ってあるんですよね!」
専務「お三方には悪いですが、この話は慎重に扱って下さい。ちょっと、社長の様子を伺って来ます。
さっきの飲み会の話は、一旦保留で!」
《社長室の前の秘書課》
専務「中は、、誰か入っている?」
秘書「いいえ、空いておりますが!でも、先程までビル事業部の上の方が何人か入られてましたが!」
専務「ちょっと、様子を確認していいかな?」
・・社長の怒号「俺の仲間たちの今を見れば、こんなくだらない質問をするか、バーカ!
おい、灯台は、ちゃんと役に立っているのかー、真面目に調べろって言っておけ!、なに高い金もらってるんだよ!、くだらん電話してくるな!」
専務「やっぱり、遅かったか!また、足を引っ張る奴が、いきなり耳に入れたなっ!…これだと緊急対策会議で、本当の対策に動いてる奴らも予定変更かな。全員集合か!」
社長「秘書課長!…なんだ居ないのか?
おう、ちょうど良かった!、専務、緊急対策会議やるから、全員集合!」
専務「直ぐに最短調整で走りますので!20分後にご連絡入れます。」
社長「15分後だろう、まったく!」
専務「かしこまりました!」
《緊急対策会議》
総務部長「全員集まりました。司会はいかがいたしますか?」
社長「俺がやる!
全員集合まで14分、さすが専務と言いたいところだが、何でハードバンクに好き勝手にやられたか、誰か知ってたら教えてくれるか?」
総務部長「おそらく、それを知ってたら、直ぐに社長のお耳に入れて、対策を進めていたと思いますが、山本(港区担当部長)さんは掴んでなかったんですか?」
社長「いや、そうじゃないんだ!、お前らよく考えてみろ。ハードバンクの決算発表の赤字情報を既に掴んでいて、その中で、うちのビルの賃料が高いから、他のビルに引っ越すって筋書きなんだろ!。あの会社が高いと言っているってことは、うちのビルに満足していないってことだ!、あのビルの他のテナントにも影響する。どこかの同業者から、ハードバンクにうちより安くて、そこそこの物件があるって情報を掴ませて、交渉してたんだろっ!」
山本部長「それは、社長のご指示で賃料を上げるってことで、相手と交渉してました。まさか、不成立で引っ越すとは思ってもいませんでしたし、ハードバンクの課長も先週の交渉会議では、一言も!」
社長「言い訳としては、まあーそんなとこだな。担当課長をここに呼んで、状況を説明させろ。今すぐだ!」
総務部長「既に、控えさせております。」
社長「入れろ!、早く座って!…朝会の戦略は、敗北で幕引きだったが、どういった交渉をしていたんだ?、、相手は全く賃料を上げることに、応じなかったのか?」
担当課長「そうですけど、少しでも下げてくれたら、このままビルに居てもいいと言ってました。ハードバンクの経営戦略上、優先すべきは国際競争と国内協調だと。確かに今は厳しい状況ですが、ここで経費削減で何とかしのいで、立て直すために協力してほしいと言われました。その話しを社長にレクしたのですが、新築二年目では下げる交渉はあり得ないと!」
社長「お前、程度というものがあるだろ!、ハードバンクの後が見つかるまで、賃料収入がゼロで、後に入るテナントは、どうしてあの大企業が出ていったのか、聞いてくるはずだ。うちに聞いてくるだけじゃなくて、ハードバンクにもだ!」
ビル事業部長「今日の朝会の賃料交渉の話しは、どうしましょうか?」
社長「あれを出して、直ぐに引っ込めるわけにはいかんだろう。もし、強気で押して不成立しそうになったら、うちの安いビルに引っ越すという、お得プランでも紹介してやるってことだな!」
人事部長「別件ですが、コロナ関係で様々な影響が出始めています。罹患した場合の対応から、仕事の調整まで、既に概ねの基準を示してます。一部にテレワーク指定で会社に出てくる際は、サービス残業より問題だろう。感染した責任は個人の責任にするのかって、コンプラ担当に封書で言って来たヤツがいます。」
社長「サービス残業は、能力の足りないヤツの話しだが、テレワークは正規の勤務を、自宅とか、どこか会社以外でやるんだろ。別に何処でやってもいいじゃないか!、たまたま会社に立ち寄ったで、済むだろうが!。」
人事部長「打合せや、会議をzoomでやると、いつも幹部が使いこなせなくて、結局会社で会議だけやって、また家に戻り、また急に呼び出されて、会社で会議。それを日に何度もやっているとか!」
総務部長「コロナは一過性のものだと、社長から指示を受けたので、幹部は、私も含めリモート会議を、定例の打合せに限定してますし、出先以外の幹部は、そのとき出勤して、zoomとやらの操作を誰かにやってもらってます!」
社長「残業代がほしいなら、くれてやればいいじゃないか!、上のやつらが、やり方に付いてこれないから、無駄に時間がかかっていると、言いたいからじゃないのか?!」
総務部長「いや、今の実態はコロナ前の3割から4割増えて、月に80時間を超える者がザラにいます!」
社長「要するに、うちの幹部連中は、パソコンが苦手なんだろ。必要性は感じているけど、めんどくさいからな!、何でもかんでも下にやらせると、結局こうなる。今の現状がそうなら、コロナだろうが何だろうが、直ぐに良くは出来ないから、うちのやり方で押し通すしかないだろう!」
企画開発部長「ビル開発の現場も、月例、週例の定例会議は、ゼネコンがリモートにシフトしてます。それで、今までうちの担当者が、多忙で出ていなかったのに、リモートで必ず出席するハメになったと言ってました。」
社長「別にいいじゃないか!、仕事もはかどるし!」
ビル事業部長「それが、逆に仕事の停滞を生んでいるとのことです!、要は、会議に出ても、ほとんど結論を持ち越したり、的を得ないことを指示して場を混乱させると、施工サイドからクレームが来ています!」
社長「いったい誰が担当なんだ!」
企画開発部長「実状は、ほとんどの現場で、今まで施工サイドに任せて、適当にやらせていた設計変更も、打合せが映像で残っています。私が知っているだけでも、キャリア組は施主としてのうちの立場をあまり理解していないで、リモートの中でコストを下げさせたり、工期を短縮させて、賃貸や分譲の開始を急がせて増収を図ろうとしてます。その結果、手直しや行政検査で指摘を受けて、グダグダな現場になってたりしています。」
副社長「コロナ対策は、現場でちゃんと指示してやっているのかね?」
ビル事業部長「やはり、建前と本音でやらざるを得ないのが実態です。きちんとやらせば、手間と金が掛かりますが、うちの方針はコロナのバタ付きを利用して、短期、中期の利益を稼ぐというお考えですので、…」
副社長「うちの中では、まだ罹患した社員がいないのが幸いだが、出たら一つの部署がロックダウンするから、本腰を入れる時期だと思うな!」
人事部長「今のところ、コロナの疑いで系列含め5人ほど、自宅待機させてます。保健所の検査待ちだとか、、副社長、この話しは、皆さんのお耳に入っていませんか?」
社長「私が、疑いの段階で社内を混乱させるなと言ったんだ!、コロナが確定して、デカい問題になりそうだったら、コロナだから致し方ありませんでしたと言えば、世間も納得するだろ!」
総務部長「あのー、各社員用のリモートで使う、パソコンの配置や回線契約はストップで宜しいでしょうか?」
社長「俺がストップと言ってる。何か問題があるか?」
総務部長「ございません!」
社長「ハードバンクの対策が、コロナの話しにすり代わったじゃないか。もっとちゃんと物事の流れを見極めることだな!…そもそもコロナは風邪だろうが!、役所が特別扱いするなら、そのご指示に従うだけで、何か会社に強制力が働くというのか?…ガイドラインとか、罰則の無い規制で補償も無いし、自己責任を絵に描いたやつだな。まったく!」
・・失礼します。安井部長(総務部長)、警察OBの方からお電話が入っています。お繋ぎいたしますか?
総務部長「はい、繋いで!、もしもし安井です!……そうですか!、ちょうど幹部の会議中ですので、お伝えしておきます。この話は出来れば穏便に扱っていただけませんでしょうか!あっ、はい、お願いします。」
社長「警察か!、こんなときに、何があった?」
総務部長「概略だけで、詳細は後ほど!、、うちの地下でボヤ騒ぎです。」
社長「消えたんだろ!、どってことないじゃないか。警察もずいぶん暇してるな!」
総務部長「原因は、放火だそうです!」
社長「警備をちゃんとすればいいだろ!」
総務部長「はい、分かりました!」
社長「緊急対策会議を開くと、不思議と議題以外のネタを、緊急で方針決定することになあるが、そいつの中身はどってことないな!、最後に専務、何かあるか?」
専務「ハードバンクの退去した後は、賃料は上げて今居るテナントや、後に入るテナントと交渉することで、宜しいですね?」
社長「当たり前だ。それ以外にあるわけが無い!」
《散会後》
秘書課長「専務!、少し宜しいですか、先程の件!」
専務「分かってたか!、説明するまでもないよね。もし、ハードバンクより下げて契約すれば、会社のメンツが丸つぶれ!、でも、あれだけの面積と賃料を払える企業は…!」
秘書課長「まず、いないですね!」
専務「そう!、月々、ざっと1億5千万、ドブに捨てるのかという、誰もが嫌がる確認だよ!」
秘書「専務!、社長の奥様からお電話が繫がっております。」
専務「ん、こっちに回して!、もしもし長作です。ご無沙汰…」
《思い出横丁、但馬のコーヒー店》
専務「お待たせです!」
澤野「ご無沙汰してます。相変わらずいろいろ、ですか?」
専務「そうに決まっているでしょ!(笑)
まあ、美味しいコーヒーを飲みましょう!」
澤野「ハードバンクの話は予想つきますが、各社のコロナ動向は、かなりの違いが出てますね!」
専務「同業他社さんは、どんな感じですか?」
澤野「四つ菱は、新社屋に去年移って、全面的に物件管理システムをリニューアルしました。それを、各社員用のPCに取り込める作りで、それを使ってリモートワークや会議をやり出したら、コロナです。あと、既に感染者が出たら即周知というトップの指示が出てて、それをテナントや関係会社にも要請していると聞いてます。」
専務「四つ菱さんらしいね。うちと真逆だ!、他の会社は?」
澤野「バラバラですが、四つ井は真面目に社員の感染防止を第一と言ってるようです。面白いのは、上が皆んな手洗いや、うがいをしたり、アルコール消毒すると、下もやり始めると言う状況だそうで!」
専務「なるほど…やらない対策と言う対策は、うちくらいですかね!、まあ、やらないと言う選択肢は誰でも考えるでしょうが、後手を踏むくらいなら、徹底してやらないと、カッコだけでもね
!」
澤野「私には、やらないではなく、やるとヤバイと見えますが?、システムも古いし、セキュリティーも甘く、上のリテラシーは低い。おまけに、ゴマすり古参組は、手抜き、ごまかし、責任逃れじゃあないですか〜。めんどくさい対策はやらないではなくて、やれないでしょうね!」
専務「相変わらず、お厳しい!」
澤野「専務は、このレベルの話しで私を呼んだとは思えませんが?」
専務「当たりです!さすが、うちの社長から直にクビを言い渡されただけのことはありますね!」
澤野「ありがたき幸せ!、でも、クビの理由はネモハモ無いのに、私の足を引っ張った誰かさんの面子を、社長が大事になさっただけでしょ!、、死んだ会長の親戚が、ビルの正面玄関に、あんなオブジェや魂の入っていない神殿を何億もかけて造らせて、まともなはずないでしょう!」
専務「まあ、抑えて下さい!、折り入っての話がし難くなりますから…、実は社長の素行調査なんです。奥様から内々にお願いされてね!」
澤野「女性スキャンダルは、あの人くらいになれば金で解決できるでしょうが!、だって平日は、会社の賃貸マンションで、週末だけ自宅に帰るんでしょ!、名目は、付き合いで遅くなったり、家族が暴漢に狙われないために、別々に住むって言ってたでしょ!」
専務「あんまり大きな声で言えないんですが、社長のお嬢様がメンタルを悪くされて、その原因がどうも学校に投書や落書きがあったせいらしいんです。」
澤野「それは、今に始まったことではないと記憶してますが!」
専務「いえいえ、内容がかなりなものです。つまり、、いわゆる援助交際をしているという!」
澤野「前は、悪徳業者でしたっけ?、確かハゲメガネとか、ペイペイのCMタレントをハゲにした写真入りでしたね!」
専務「そうですね。あれはソックリだと社長も笑ってましたが、今回はホテルとブランドショップで、かなり若い女性と一緒の写真が、学校とご自宅に送られたみたいなんです。」
澤野「なるほど!分かりました。奥様は元は同じ会社で、専務の部下でしたっけ?」
専務「それもあって、と言うより…冷静に見れば、既にワンマンだとか、強引というパワーバランスを超えている気がしましてね!」
澤野「分かります。専務も、ほんと、よくやってますよね!、そっちの方がバランスを失いやしないかと、マジ心配ですし!」
専務「こんなことを頼める方は、澤野さんしかいませんし、私の愚痴の一つを聞いていただいたということで、それで肩の荷が下りるんですよ!」
澤野「はいはい!、コロナが落ち着いたら、また飲みに行きましょうか!」
《専務デスク》
専務「あっ!、早速、澤野さんからメールが入ってる…。『例の件、●、赤坂見附です。』か…、、
『その後、高級焼肉店で!店内には視えないから、個室で?』」
《赤坂焼肉店》
澤野「ちょっと、おかしいな!、出木杉くんだ!まるで援助交際を絵に描いたようだ!…というか、社長の顔がエロくないし、オタクっぽい!」
・・お客様、申し訳ございませんが、当店はご予約がないと、やはり、、ご利用いただけませんので。
澤野「残念だなー、前に来て最高に美味しいて思って、近くに来たから寄ったんだけどね!、今度はちゃんと予約入れるから…悪いけどトイレ借りていい?、済んだら直ぐに帰るから。」
《赤坂見附駅》
澤野「何で、駅であの娘とバイバイ?…あれ、ちっちゃな紙袋を受け取った!、写真をパシリっと!、、開けた、ん?!、中を見て、匂いを嗅いでる!、笑ってる…、動画にすればよかったかー!」
《社長のマンション前》
澤野「裏口にタクシーを着けて、周りを確認して、監視カメラの死角から入るっと!、マジで変わってないわ!!、前はコンパニオン紹介から、お勤めのおネイ様が入れ代わり立ち代わり!、、だから監視カメラの映像を、直ぐに消せってか!、最低だよお前は、何人もの人を苦しめて!………。さて、8時半、そろそろ帰るか!、出来高報告のメールってか!、toー長作専務っと!」
《マンション最寄り駅》
澤野「疲れるし、嫌な奴の顔を見ながらは、ストレス溜まるわ!、あっ、焼肉のときの女子!、、あれ、何でだ…あれ、校章の入ってるカバンと、リュック!」……尾行……「マンションの正面玄関から入るか!、受付の女性にお辞儀した、手を振った!、あの娘、まさか!まさか、ここに住んでる!?、わっウソ〜なんと、最低なジジイだ、お前わ!」
《翌日、但馬のコーヒー店》
澤野「……っという感じです。」
専務「お疲れ様!、想定どおりですか、まあ、同じマンションの未成年女子から、紙袋ですね!、香りのとってもいいお菓子を頂いたと!」
澤野「いやいや、それはお菓子ではなく、オカシイでしょう!、またまた、こんなこと火消し役するのは、大変だな〜。あの方に手伝って頂きますか!」
専務「そうですね!、それ以外にも秘書課長から相談されている件があってね!、六本木の会員制サロンで『スーパーマリおっとクラブ』から、かなりの額の請求書が来ているらしくてね。あの方に、メールでどんなお店か調べて頂いたら、頭文字をモジッてSとMクラブらしいと!」
澤野「このレベルじゃあ、早めにお願いした方が皆さんの為じゃないんですか!」
専務「まあ、そう言うことで、早速ですが澤野さんから状況説明を兼ねて、対策をご相談頂きたいと思いましてね!、こんなときに申し訳ありませんが、うちの社員から長時間労働でメンタルを害されたと訴訟があったのと、例のあのチカン課長がセクハラしたのと、この前の本社の地下で女性が自分に火を着けて自死された件の対策会議です。」
澤野「まだあるでしょ、覚えられないくらい!、久しぶりでもないですが、あの方に専務がブッ倒れそうだと言っておきます。あとはどうぞ宜しくってね!」
専務「じゃあ、私は会社に戻ります!」
澤野「了解しましま。専務、お体、お気を付けて!」
《対策会議中》
専務「澤野さんから至急メールだ!!…カズさんから私宛てに、直ぐに確定してほしいことがある。
→なぜ、奥様がこのレベルで多忙な専務に内々に相談してきたか?、お嬢様は大丈夫か?ですか、、、
社長、すみません。大事な会議の途中に!」
社長「分かった、直ぐに済ませてくれ!」
専務「それは大変ですね!、いつから家出されてたんですか?、それは、、はい!、社長には申しません。分かりました。それでは、!」
総務部長「先般、地下の駐車場で迷惑な自殺があった件のご報告です。」
社長「手短に!」
総務部長「結論から、未だ10代で男性未経験の若い女性だそうです。所持品も無くて、工事中で監視カメラも撮れて無かったため、警察では現在身元確認中だとか!」
社長「分かった!、別に問題無いだろう。」
総務部長「それがですね、、テナントの社長さんが第一発見者でして、その方が見たときには、未だ生きていたと言うんです。それで、うちの社員に救急を呼んでくれと頼んだと。そしたら、そのまま放置されて、人工呼吸をずっとしてたらしいんです。それも20分くらい。警察も消防もそれを問題にしてまして!」
社長「誰がそんなチョンボしたんだ!?」
総務部長「119番の通報は最終的に警備の方でやりましたが、どうも、テナントの第一発見者が言うには、会長のご親戚の、あの方が、、」
社長「分かった!、そっちで何とかしろ!」
総務部長「はい、かしこまりました!。只今、検死中で身元不明ですが、おそらく裁判になる可能性もありますし、他殺の可能性も否定出来ないと、警察OBの方が言っておられました。」
社長「だから、それを何とかするのがお前の仕事だろうと言ってるんだ、まったく!」
・・・〜!!
専務「…、、ん!もしかして、!!」
社長「なんだ専務!、デカい声あげて?!」
専務「すみません!、ちょっとお手洗いに!」
《会議翌日、但馬のコーヒー店》
専務「警察OBの方を通じて、この前、本社の地下で亡くなられた女性と、社長のお嬢様のDNA鑑定をして頂いています。あくまで念の為ですが!」
澤野「嫌な話になって来ましたね〜!…あっ、カズさんだ!、こっち、こっち!」
カズ「ご無沙汰してます。専務!、こっちの方は先週かな、澤野探偵さん!、これお返しします。お嬢様の下着!」
澤野「何ですか!お二人とも社長と同じようなことして?、」
カズ「専務からご相談があった件で、たまたま警察本庁の一課の課長と部長が、俺が麹町にいたときの警察署長と刑務課長で!、会社のOBに頼むより、早いし、もし一致したときの秘密保持や対策もしやすいと思って、別ルートで、!」
専務「カズさん、おすすめコーヒーでいいですか?」
カズ「はい!おっと、早速、来たか結果が!…、鑑定結果は90%一致。だそうです。、うん、鑑定照会経緯不詳のまま、保護者確認予定、明後日です。」
専務「分かりました。最悪の事態ですね!、奥様が悲しまれる。心配だなー!」
澤野「何で、あんなヤツのせいで!」
専務「とりあえず、ありがとうございました。私も、もっと早くカズさんに相談すれば、こんなことにならなかったのに、残念です!」
カズ「いや、自分にも責任があります。自分が会社をクビになったのも、専務を信じ切れなかったからです。その後悔が専務との距離を広げていた。すみませんでした!」
専務「まあ、残念ですが、あとは警察にお任せして、奥様のケアーと、社内の鎮静化ですね!」
《警察署(人定確認後)》
専務「お迎えに上がりました。お疲れでしょう!」
社長の妻「何だか、長作さんのことを、最近思い出してばかりいました。それで、昔使ってたシャネルのバッグを、今日持って来たんです。お守り代わりに!」
専務「じゃあ、結果は?」
社長の妻「……間違いなくあの子です。ガソリンを被ったと言っても、駐車場の消火設備がはたらいて、下半身は何とも無かった!、スカートも下着も、あの子が一番気に入っていた…もの!」
専務「行きましょう!……。」
《車の中》
社長の妻「あの子の死因は、洋服が燃えた時の気道熱傷で、息が詰まって亡くなったそうです。暫くは生きていたようだと!」
専務「そうですか…、社長のご指示で、これから会社に向かいます!」
社長の妻「……、仕方ありませんね!」
《社長室》
専務「只今戻りました!、特別応接におられます。」
社長「結果はメールで聞いた!、さてと!、緊急対策会議。出来るだけ早くだ!」
専務「はあ!、社長は、大丈夫ですか?」
社長「何がだ?!」
専務「いえ!、それでは関係者に連絡いたします。…
あっ!!!、今、窓に何か落ちて行くのが、人か、資材か、、窓拭きは予定が無かったはず!」
社長「余計な心配ばかり、長作らしいと言えば、、だな!」
秘書課長「社長!、大変です!、奥様が、今、ビル管理から、屋上で景色を見たいと言われて!」
社長「だから、何だ?!」
秘書課長「……飛び、おり、」
専務「…、ダメだよ!死んじゃあ…、一階に行きますから!、迎えにいくから!」
社長「俺のせいで、あいつと、あいつが死んだんだと!、そうさせないようにするのが、お前の役目だろう!…、いいか、そう見られないようにするんだ!分かったな!!」
・・・2か月後
美優「もしもし、カズさんですか?」
カズ「お久しぶり!、社長秘書から電話とは、光栄だな!、元気か?、何かあったんだろ。今ちょうど隣の西口公園にいる。」
美優「専務が!…」
カズ「お前、今どこに??!、専務がまさか!」
美優「すみません!、取り乱して、今、有明のホールにいます。早く来て下さい!」
カズ「直ぐに行く!、待ってろ、、、、」
〜〜終わり〜〜
作者 カズ ナガサワ