夜
夜が優しいものへと変わりますように……。
夜が怖かった。
真っ暗闇で、先が見えなくて。
一人でいると、本当に一人ぼっちのような気がして。
夜が怖かった。
ある日、あなたに出会った。
みんな嫌われ者の私を遠巻きにするのに
一時も離さずに持ち歩いていた私の本を見て
あなたは笑顔で私に話しかけてきた。
「俺もこう見えて、すっげー童話好きなんだ」
「その本、俺も愛読書」
休み時間、その本を一緒に読んだ。
放課後、その本や子供のころの思い出話に花が咲いた。
帰り道、本屋へ行く約束をした。
休みの日、本屋へ行って、二人で本を買った。
学校でその本の感想を言い合った。
3日後にお互いに買った本を交換した。
学生生活がこんなに楽しいものなんだなんて知らなかった。
そして夜……
あなたが初めてメッセージをくれた、本以外の話で。
夜が優しくなった。
怖くて怖くて仕方なかった夜が
ひっそりと穏やかに私を抱きしめる。
幸せだった。
すごくすごく幸せで。
こんな日がずっと続けばいいのに……
そう願った。
しばらくたった夜、メッセージが来た。
「今、家の前まで来てる。良かったら出てきて」
えっ、髪の毛は大丈夫?
もうパジャマだ。どうしよう?
急いでコートを羽織って、階段を下りながら髪の毛を撫でつけて出て行った。
寒そうに自転車の前に立っていて、私を見るとものすごい笑顔になった。
緊張していた私まで笑顔になってしまう。
「どうしたの?」
「うん……あのさ。夜も一緒に勉強したり、話したりしねぇ?」
「え?」
「いやかな?」
「いや……なわけない」
「だからさ、お父さんやお母さんにきちんと紹介できるようにさ、俺と付き合ってくれる?」
一瞬、眩暈がした。
もちろん嬉しい眩暈。
「もちろん、そうしたい!」
夜が特別な時間になった。
そんな風に恋が始まって、今……
「ふぎゃあ、ふぎゃぁ」
夜泣きで夜は戦場と化した。
「よしよし」
抱っこしながら、空で覚えている絵本の物語を口にする。
すると、「ふにゃあ」泣き止んでくれる。
「すげえな。やっぱり俺らの子だな」
そう言ってわらう笑顔はあの頃のまま。
「少し休みな。あとは俺がやる」
夜は、彼に出会ってからずっと優しい。
たとえそれがきつくてしんどい戦場でも
今でも私を愛のさなかへと導いてくれる。
そんな夜を一人の味わいとしたくない。
世界中の一人残らずに
優しい夜が訪れますように……。
そして、思うのだ。
絶対に絶対に誰にでも優しい夜はやってくる!と。
夜は、心と体に力を戻す大事な一時です。
皆様の夜が心を削るものではなく、優しいものでありますように……。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。




