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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
帝国と王国の交声曲《カンタータ》
62/209

情報共有と収入の行方

「で、さっきの人がそのグレナディーア(至高騎士)の1人って事なんだね」


私の問いかけに、マリスはこくりと頷き


「うん、当時弱冠16歳でグレナディーア(至高騎士)の称号を賜った

【ロテール・グレヴィアジック】卿、現在3人いるグレナディーア(至高騎士)

 の1人だよ」


現在3人いるうちの1人………あんな人間があと2人もいるレフィエルド王国って

凄いとこだよね、そんな国に喧嘩を売ってた帝国も大概だとは思うけど。


「あの人の例に違わず、色々と逸話を残してるみたいだよ

 1000体以上いる魔物の群れを1人で壊滅させたとか、ドラゴン数体を

 1人で討伐したとか」


ドラゴン討伐と聞いてリーゼが眉をピクリと動かす、まぁリーゼには

聞き捨てならない話だろうね。


「後はコロシアムでの闘士200人抜きを最年少で達成したって話もあったね

 それにしてもどれもこれも人間離れした話だね~」


確かにこの手の話は尾ひれがついて誇張されがちだけど、火のない所に

煙は立たない訳で、恐らく似た様な事はやってるんだろう。

あの気配からしてそのぐらいはやってのけそうではあるね。


「けど、そんな人がケジンに何の用なのかが益々分からないわね

 そんな帝国にとって要注意人物ならこの国に潜り込むだけでも

 相当なリスクがあるでしょうに」


マリーさんが頬杖をつきながら呟く。

確かにそうだね、となるとリスク以上の何かがケジンさんにはあるという事だけど

………何か想像もつかないなぁ。


「ん~、まぁその辺りは考えても仕方ないとは思うし

 現状マリス達に関係のありそうな話じゃないから気にしなくてもいいと思うよ~

 長々と説明はしたけど、基本マリス達と関わり合いになるような

 人物じゃないしね~」


普通に考えればそうなんだけど、あの人の視線が妙に引っ掛かる。

また近い内に相まみえそうな………


グレナディーア(至高騎士)は兎も角、レフィエルド王国には

 多分行くことにはなるとは思うけどね。

 レンお姉ちゃんの目的を果たすには多分世界中を回らないといけないだろうし」


マリスが楽しそうな顔で口にする、実際楽しみなんだろう。

この世界に来て結構な時間が経つ、そろそろ本格的に元の世界に戻る手段を

探さないといけないけど、手掛かりがないのはどうしたものかなぁ………

それに住む処も確保できたけど収入はまだまだ不安定だ、そんな状態で

先の見えない事柄に手を出すのはどうにも不安だね。


「う~ん、それに関してはまだまだ先になりそうかな

 マリーさん達のお陰で住居は確保できたけど、正直まだまだ

 不安要素が多すぎて足場固めが優先かな

 まぁ急いで帰らないといけない訳じゃないし、気長にやるつもりだよ」


私は少し苦笑しながら言う、するとマリスが少しにやにやと笑い始め


「んっふっふ~、その心配は当面大丈夫だよん

 そろそろ来るんじゃないかな~」


いきなり意味の分からない事を言い出すマリス。

来るって一体何が?


私は頭に疑問符を浮かべる、すると次の瞬間再び入り口のドアが開け放たれ


「お邪魔するわよ~………って、なんかそろい踏みね」


そこから姿を現したのは、大きめの袋を担いだマイーダさんだった。


「ん?マイーダ?

 こんな時間に珍しいわね、今日はギルドの仕事は休みなの?」


マイーダさんの姿を見たマリーさんがとっさに問いかける。


「あらマリー、今日は店を閉めて優雅にお茶会?

 いいわね~、仕事じゃなければ私も混ざりたい所だけど」


その問いかけににやりと笑って返すマリーさん。


「仕事、ですか?

 そう言えば朝ギルドに行った時姿を見かけませんでしたけど………」

「あ~、朝来てたのね

 ならアイシャに言伝て貰えばよかったわ、これ持ってくるの少し

 しんどかったから」


マイーダさんはそう言って袋をドカッと下ろした瞬間、聞き覚えのある金属音が

鳴り響く。これって………


「お~、やっと全部片付いたんだね」


その傍らにマリスが駆け寄り、楽しそうな顔で袋をまじまじと眺める。


「ええ、まぁごねてた奴もいたけど最終的にはアンタの思い通りに

 事が運んだわ、お陰でギルドも大助かりよ」

「んっふっふ~、それは良かったよ

 面倒ごと全部押し付けたからちょっと気にしてたんだよね~」


そう口にしながらマイーダさんとマリスは笑い合ってる。

………なんか悪だくみが成功して笑ってる様にしか見えないのは私だけ?


「んじゃ、これがアンタたちの取り分ね

 二つ角の(ツインホーン・)破壊槌(ラムブック)の素材売却代金

 占めて31万4500ルクルよ♪」


そう言ってマイーダさんは袋の口を開ける。

そこには予想通り、キラキラと光る金貨が大量に姿を見せていた。


「うわ………凄いわねこれ

 あの素材がこんな高く売れてたの?」


驚いたマリーさんが呟く。

うん、私もビックリだよ。この国の貨幣価値って日本に比べて結構高めな上

その逆に物価は安めだから1ルクルで大体10円ぐらいの感覚なんだよね。

ちなみに50ルクルでここ(人形達の宴)のちょっとお高めのランチ1食分だから

それで換算すると大体400万円くらいの価値になるって事じゃないかな?

………何かそう考えると少し不安になってくる。

元…じゃないけどいち学生の私がこんな大金手に入れていいのかな。


「いや~流石だねマリス、アンタのお陰で帝国の表示した価格より

 遥かに高く売りさばけてギルドの資金もしばらく余裕が出来そうだわ

 確かに商人の交渉やら折衷やら面倒ごとを押し付けられはしたけど

 これなら十分過ぎる見返りよ」

「あははは、それは良かったよ

 こっちも現場を取り仕切ってくれたからすっごく助かったよ」


そう言えば売値の10%はギルドの取り分だったっけ。

ざっと計算しただけでも4万ルクルはギルドに入ったって事になるね。

場所提供と事務処理で日給約40万円は確かにいい稼ぎかも。


「という事はお願いしてたあっちにもお金流してくれたんだよね?」

「ええ、金額が確保出来たらすぐに持って行ったわよ

 向こうさんもいい感じに動いてくれるんじゃないかしら?」


ん?何か2人でよく分からない話してるね。

お金を流した、って事は何か買ったり依頼したって事なのかな?

マリスの事だから変な事じゃない、とは言い切れないけど………


「マリス何か買ったりしたの?」


一先ずマリスに聞いてみる、けどマリスは至極楽しそうな表情をしたまま。


「んっふっふ~、まだ秘密♪

 けど少なくともみんなの迷惑がかかる事柄じゃないから安心していいよん」


まぁ、素直に教えてくれるとは思ってなかったけど…少し気になるかな。

マリスの事だから変なトラブルになりそうな気もするけど、迷惑をかけないって

言ってるからそれを信じるしかないかな。


「取り合えずこれで暫くは無理に依頼をこなす必要は無くなったから

 当面はレンお姉ちゃんの目的に注力できるよ」


確かに、これだけのお金があれば4人で分けても1年近くは食べるに困らなそうだ。

こりゃ冒険者達が辞めたくない訳だよ、いつ死ぬかもわからない危険な職業なのに

何でこんなにやってる人が多いのか疑問だったけど、リターンが大きくて

それにカタルシスを感じちゃってる訳だね。うん、その気持ちは十分わかったよ。


「そだね、みんなで4等分しても暫く不都合は無さそうだね

 それじゃ取り合えずフィルも呼んで分配を………」


そう言いかけた時、マリスが私の前に掌をかざす。


「あ、その必要は無いよん

 そのお金は全部レンお姉ちゃんが持ってて」


………はい?今何と言いましたかこの子。


「ちょっ…ちょっと待ってマリス、一体どういう事?」


マリスの予想外の言葉に私は混乱して思わず聞き返す。

こんな大金全部私が持ってろってどー言う事?


「正直マリスはお金に興味ないんだよね~

 冒険者やってるのも楽しいトラブル目的だし、ぶっちゃけお金なんて

 寝床と食べるに困らない程度にあればそれで充分なんだよ」


ああ…うん、マリスは常々そう言ってたね。

けど、他の2人はそういう訳には………


「リーゼはドラゴンだからそもそも人のお金に興味なんて無いよね?」


マリスに水を向けられたリーゼはこくりと頷き


「はい、我に人間の貨幣を集める意味などありません

 マスターにとってそれが価値ある物ならば、どうぞご随意にお使いください」


あー、リーゼなら絶対そう言うよね。

となるとフィルもおそらく………


「私にとって全てに優先するのはレンの事だから

 そのお金がレンの為に使われるなら私が受け取る理由はないわ」


そう言いながら2階からフィルが降りて来る。

いつもと同じ表情の様で………まだほんのり顔が赤いかな?


「おはようフィル、少しは落ち着いた?」

「………レン、今日は私達は()()()()()()()()()()()よね?」


フィルが笑顔のままずずいっと私に迫ってきてプレッシャーをかけて来る。

………そんなの恥ずかしかったんだ、あのカッコ。


「ああ…うん、そだったね」

「ええ、物分かりのいいレンは大好きよ♪」


私の返事に満足したのかフィルは顔を離す。

何というか、笑顔で怒る人って結構怖いね………

あ…マリスが顔を背けて笑ってる、これ絶対後でネタにする気だ。


「まぁ、私達がそう言ったってレンがはいそうですかと受け取れる訳ないわね

 今までの報酬だってきちっと等分してきた訳だし」


気を取り直したフィルが話を続ける。


「そだね………流石にこんな大金を全部あげるって言われても難しいかな

 本音を言えば私だって必要経費以外は全部みんなにあげたいくらいだし」


私にとってもこの世界(エルシェーダ)のお金にあまり価値はないんだよね。

尤も生きるに必要な分は無いと困るけど、一応元の世界に帰るつもりの私が

ここのお金を貯めこんでも仕方がない。


「………なら、こうしましょうか

 このお金はこのパーティ共有のお金にして、普段の生活費や冒険に必要な

 物品の購入費に充てるよう形にしない?」


私の意図を汲んでくれたのかフィルかそんな提案をしてくる。

うん…それは妙案だね。

どの道お金を稼ぐ理由はそれが全てだ、なら個人個人で管理するよりも

そうやって共有のお金にしてプールさせておいた方が都合がいいし

変に気を使わなくて済むね。


「うん、いい考えだと思うよフィル

 私は賛成だけどみんなはどうかな?」


私の問いかけにマリスとリーゼも頷く。


「マリスも賛成だね~、どうせならここからの稼ぎは全て

 共有にしちゃっていいんじゃないかな、みんなお金に興味なさげだしね~」

「我も異論はありません、むしろ貨幣の使い道に悩まなくて済むので助かります」


2人の言葉にフィルは満足そうに頷いた。

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