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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
帝国と王国の交声曲《カンタータ》
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竜の休日

「ありがとねレン、お陰でゼルダース子爵に粘着されそうに済んだよ

 結構な確率で夜伽を強制されそうな気がしてたから助かったよ」


子爵の屋敷から追い出され、貴人区から出たすぐにラミカがそう口にする。

やっぱりそういう事だったね、とっさに出た脅し文句だけど

ラミカを巻き込んで正解だったよ。

ちなみにフィルは恍惚状態から戻らない為、私が手を引いて

歩かせてる状態だったりする。


「ちなみに念のために聞くけど……レンの言ってた

 毒が残ってるってのは嘘だよね?」


ラミカが少しだけ不安そうな顔で聞いて来る、まぁ流石に気になるよね。


「猛毒の血を持つモンスターと戦ったのは事実だしその血を浴びたのも本当

 けど毒なんて残ってないし、その時に着た服も処分したから大丈夫だよ

 それにもし毒が残ってたとしたら私はとっくに死んでるよ

 近くに寄っただけで動けなくなるほどの猛毒だったしね」


ラミカを安心させる為に笑顔で話す、けどラミカは少しだけ引きつった顔で


「いや、その話を疑う訳じゃないけどさっきのレンを見てたら

 その笑顔が無性に怖いものに思えてくるんだよね………」


む…失礼な、とは言え仕方ないかな。


「何ならラミカ、フィルに解毒してもらう?

 そうすれば安心でしょ?」

「いやいやそこまでしなくていいよ、疑ってゴメンね」


流石に悪いと思ったのかラミカが謝ってくる、まぁ謝られる事でも無いんだけど。


「よし、取り合えず1番の厄介事も片付いたしこれで何の心配も無く

【デュアラ連邦】へ取引に行くことが出来るよ」


そう言えばそんなこと前に言ってたね、しかし【デュアラ連邦】ね………

字を覚える為に貰った本の中にちらほら出て来た国のだけどどんなとこなんだろ?


「あー、レンは異世界人だから知らないんだっけ

【デュアラ連邦】は大陸中央部にある商業国家で、全ての国や地域に面してて

 流通の要の国なんだよね、元は小さな国がいっぱいあったんだけど、帝国と

【レフィエルド王国】に囲まれた立地でもあるから自分の国を守るために

 国々が協力して1つの国みたいになっちゃったんだよね」


私の表情を察してかラミカが【デュアラ連邦】について説明してくれる。

連邦って名前だし国の成り立ちは元の世界でも同じような感じだね。


「お陰で関所とかが無くなって流通が発達して商業国家って形になったみたい

 ま、商人としてはそこで店を持つのが1つの目標みたいなものだよ」

「そうなんだ、という事は近々ラミカもそこで店を持つのかな?」

「あははは、そんな訳ないよ。私なんてまだまだ駆け出しだし

 今回はギルドの取引の付き添いみたいなものだよ」


そうなんだ、この世界でも店を持つって事は大変みたいだね。


「ホントならもっと早く行くことになってたんだけどゼルダース子爵に

 呼び出されて延期になっちゃったんだよね、まぁ理由はあれだったけど

 けど、それもレンのお陰で解決したし大手を振っていけるって訳

 いやホント助かったよ」


そっか、とっさに出た言葉だけどラミカの役に立てたなら幸いかな。


「………っと、忘れないうちに報酬渡しとかないとね

 思ってた以上に助かったから上乗せしといたよ」

「ありがと、今後も力になれそうなら呼んでね」

「うん、その時はよろしく頼むね、それじゃ」


ラミカはそう言いながら手を振って商業区の雑踏の中に消えていった。


「さて…ラミカも行った事だし

 そろそろ正気に戻ろうか?フィル」


私は屋敷を出てからずっと恍惚状態のフィルに話しかける。

と言うかいつまでこの状態なのフィル………


「ああ…やっぱりレンの笑顔は最高……永久に保存したいわ……

 どうにかして切り取って飾ったりできないかしら……」


うぉーい、何処迄トリップしてるんですかフィルさん?

目の前で手を振ろうか肩を揺さぶろうが一向に戻る気配がない。

このまま人形達の宴迄引っ張って連れてくしかないかなぁ………

私は軽くため息を突き、再びフィルの手を引いて歩き始めた。



………




………………




………………………



「やれやれ、結局元に戻らなかったなぁフィル」


私はフィルの部屋の扉を閉めて呟く。

結局あれからフィルの恍惚状態は元に戻る事は無く、結局フィルの部屋まで

手を引いて連れてくる羽目になった。

とりあえず自分の部屋ならいくら恍惚しても大丈夫でしょ、正気に戻った時が

また大変そうだけど………

そう思いフィルを部屋に安置して出て来たという訳だ。


「さて、結局のんびりとした1日にはなりそうにないし

 休むのは諦めてリーゼと鍛錬でもしようかな」


そう思いリーゼの居場所を探す。

確か、リーゼと契約した時にマリスが言ってたけど

リーゼの事を思いながら念じれば場所が分かるんだったよね?

出会ってから別行動したこと無かったから使う機会なかったけど

この際なので言われた通りに念じてみる、だけど………


「ん………そんな気配は全く感じないね」


ちょっと残念、何か自分も魔法みたいな力があったのかと期待したのに。

まぁ使えないものは仕方ない、とりあえずいつもの鍛錬してる広場に

行ってみようと階段を下りた時………フロアに人の気配?


「デューンさん今日は店休日って言ってたけど何してるんだろ」


不思議に思った私はフロアに続く階段を降り、1階へと行く。


「そうそう、料理を置くときは音を立てず静かにね

 出来れば笑顔を…と言いたい所だけど貴方はそのままでも好さそうね

 クールビューティーな給仕として女の子にウケがいいかも」

「そうですか、意図して笑うのは難しいので助かります」


そこにはマリーさんとリーゼが何やら話していた。

これは………もしかしてウェイトレスの練習をしてるのかな?


「しかし意外ね、貴方の様な子が進んでこんな事を覚えようなんて

 てっきり私はプライドが邪魔して嫌がるものだと思ってたけど」

「いえ、これが我に課せられた義務だという事は理解できております

 何よりマスターの為となるならば我の矜持など些末事に過ぎません」


2人は私に気付く事なく会話を続ける。

リーゼ、休んでって言ったのにこんな事してるなんて………


「むしろ休日、となるものをマスターに仰せつかってはいたものの

 何をすればいいか途方に暮れていた所です

 ですので、貴方には感謝しております」

「クスクスクス、一緒にお酒を飲もうって誘いに行ったら

 困惑気味の貴方に『何をすればいいか分かりません』と言われたもの

 だから私の為になる事を押し付けただけよ♪」


………もしかしてドラゴンって休むって習慣がないのかな?

そうとは知らず「休め」だなんて押し付けちゃったのは悪いことしたかな。


「まぁ、貴方()マスター(人間)は体の構造からして違うんだし

 その辺りはあの子とよく話し合っておくべきだと思うけどね」

「話し合う……ですか」


これは、もしかしてマリーさんリーゼの正体に気付いてる?

まぁ、マリス曰く凄腕の魔導士らしいしリーゼの正体を

看破するのも不思議じゃないけど………

それは兎も角マリーさんのいう事は尤もだ、休日だから休めって言う前に

リーゼの体調を確認すべきだったね、これは私のミスだ。


「さて、辛気臭いお話はこれでおしまい

 休日の過ごし方が分からないって言うなら、これから私が有意義な

 休日の過ごし方って言うのを教えてあげましょうか」


マリーさんはそう言って指を鳴らすとテーブルの上から食器類が消え

周囲に数個の酒樽と、テーブルの上に木のジョッキが2つ現れる。

って、もしかしてマリーさんの言う有意義な休日って………


「これは酒………ですか?

 もしかしてこれを飲むのが有意義な休日とやらになるのですか?」

「勿論、酒飲み同士が色々なお酒を飲んで味を批評し合いながらも

 楽しく時間を過ごす、これ以上の有意義な休日の過ごし方なんて無いわよ」


そう言いながら酒樽を魔法で浮かし、木のジョッキに注いでいくマリーさん。

いやいやいや、それって決して有意義な休日の過ごし方じゃないから!!

只の飲兵衛が酒を飲むための屁理屈だから!!

そう思って止める為にフロアに入ろうとするも………何かにぶつかって入れない。

ちょっ、何これ!?何か透明なガラスみたいなものが壁になってる

思わずマリーさんを見ると私を横目で見ながら楽しそうに笑ってる。

………もしかして、私がいたのを気づいてた!?


「さて、行儀の悪いマスター()は放っておいてお酒を楽しみましょ。

 マイーダとも付き合ってたんだし、私とも付き合ってくれるのよね?」

「我としては付き合うのは吝かではありません、貴方が持つという

 様々な種類の酒を賞味させて頂きます」

「言ったわね、それじゃとことんまで付き合って貰おうかしら?」


マリーさんの言葉を皮切りに酒を飲みだす飲兵衛2人。

流石に休日毎に酒ばっかり飲まれるようになるのはあれだけど、その辺りは

「話し合え」ばいっか。


取り合えずリーゼの休日に付き合ってくれたマリーさんに一礼し

私はその場を後にした。

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