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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
帝国と王国の交声曲《カンタータ》
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一つの区切り

「やれやれ、荒くれ坊や達の面倒も楽じゃないね」


マイーダさんは部屋に入った早々ため息を突き

奥にある自分の机に備え付けられた椅子に座る。

………そう言えばマイーダさんの仕事部屋に入ったのは初めてだっけ。

イメージとは裏腹に部屋の中は整理整頓され、書類や関係書籍らしきものも

奇麗に棚に並べられてる。

まぁ、仕事机の後ろの棚には酒瓶がびっしり並んでるのはらしいけど………


「まぁ信じて貰えないのは無理も無いですよ、私たち自身

 倒せるとは思ってなかったですし」


私は素直な感想を告げる、実際リーゼがいなかったら

勝ち目なんてほぼなかった相手だしね。


「けど、あの冒険者の言い分には腹が立つわね

 確実に女性を見下してるわよね、あれ」


フィルが先ほどのやり取りを思い出して憤慨する。


「気持ちはわかるけど、残念ながらあれが冒険者達の一般的な考え方なのよね

 冒険者にとって女ってだけで使い物にならないイメージだから

 貴方達が名在り(ネームド)を倒せるはずが無いって最初っから決めつけて考えてるのよね。

 まぁ実際、女性は冒険者に向いてないのも事実だし

 男性に比べてどうしても体力面で劣ってしまうのは仕方ない事なんだけどね」


まぁ、確かにそうだよね。

リーゼのような例外は兎も角として、正直私も力比べとかになると

男性に勝てる気がしないし、ルールに縛られた戦いになると

どうしても男性に劣る面が出てくる。

スポーツが男女別に分かれてるのもそれが理由の1つだね。


「だからと言ってさっきの発言を許す訳にはいかないけどね

 きちんとした評価を訳も分からない理由で非難されたんじゃ

 たまったものじゃないよ」


そう言ってマイーダさんは後ろの棚から酒瓶とコップを取り出し

なみなみと注いで一気に(あお)る。

それを見てリーゼが羨ましそうな顔をしてる、ホントに

酒飲みになっちゃったねリーゼ。


「取り合えず釘は刺しといたから少しの間は大人しくしてるとは思うけど

 気を付けなさいよアンタ達、女の嫉妬もメンドくさいけど

 男の嫉妬も厄介だからね」

「ん~、という事はあのおっちゃん達がマリス達に

 近々ちょっかい出してくるって事かな?」

「多分ね、急き立てたくは無いけど早いとこギルドの宿舎は出たほうがいいよ

 釘は刺したとはいえアンタたちが目の間にいたんじゃ暴走する輩も

 出ないとは限らないからね」


やれやれ、この手の事柄は本当に厄介だ。一度悪感情を持たれたら

それを覆すのは中々難しいのは嫌と言うほど知ってる、下手をすればコンタクトを

取ろうとするだけで勝手に悪感情が加算されるから始末に悪い

となればここはマイーダさんの言う通り距離の置くのが正解だね。

丁度良く住処も確保できたしそれも報告しておこうかな。


「それなんですが、今回の依頼者が報酬として私達の住む場所を

 提供してくれたのでその報告もしに来たんです

 今日はもう無理ですが明日からそちらに引っ越そうかと」


私の報告にマイーダさんは一瞬驚くも、直ぐににやりとした顔になり


「確か今回の依頼者って人形のとこのデューン坊とマリーだったね………

 レン達の事を色々聞いて来たけど…成程、面白い事してくれるじゃないのさ」


マイーダさんは含み笑いをしながらそう口にする。

そう言えばマリーさんが知り合いって言ってたっけ。


「そう言う事ならばひとまず安心だね

 分かった、アイシャにもそう伝えておくよ、あの子もアンタ達の事

 気にしてるみたいだし、そのうち遊びに行くんじゃないかね」


そっか、宿舎から出るという事はアイシャちゃんも気軽に私達と

話が出来なくなっちゃうよね。

後でデューンさん達に話を通しておこう。


「さて、それじゃ本題に入ろうかね

 まずは名在り(ネームド)の討伐証明っと………」


マイーダさんは部屋にある魔晶石に私達の冒険者証をかざす。

すると魔晶石は淡く光を放ち、冒険者証に光を当てる。


「………ん、証明完了っと

 これであいつらが何言ってきたって胸張って言えるわよ」


何だかよく分からない仕組みだけど今ので冒険者証に

二つ角の(ツインホーン・)破壊槌(ラムブック)を討伐したと記載されたみたい。

前にアイシャちゃんが教えてくれたけど、これは国が討伐を認めたという事でもあり

それを疑うのは不敬罪に問われるほど強力な証明になるらしい。


「後は評価っと………ん?」


続けて作業をしようとしたマイーダさんがふと手を止めてリーゼを見る。


「リーゼ、アンタ武器の熟練度貯まってるっぽいんだけど

 ちょっと見せて貰っていいかい?」


武器の熟練度?何か前にそんな事を聞いた記憶があるけど………

リーゼはこちらを見て許可を求めて来る、特に断る理由も無いので私は頷く。

それを確認するとリーゼは指輪から戦斧を取り出す。


「うっわ、これはまた凄い武器だねぇ

 確かにコイツはリーゼにしか扱えそうにないわ、ん~っと」


マイーダさんは戦斧をじろじろ見て、柄の端に目を止める。


「こんな所に戦石(ウォーリア・ストーン)を埋め込んでるなんてどんな変わり者だい

 これじゃ気付かない筈だよ」


ん?何か新しい単語が出て来たね。


戦石(ウォーリア・ストーン)ってのは魔晶石を加工した魔石の1つでね

 武器に埋め込んでその武器を使い込むと、倒した敵の魔力や使った本人の

 経験値を吸って武器が強くなるんだよ。

 その蓄積されたものを経験値と区別するために【熟練度】って言うんだけど

 リーゼの戦斧はそれが今満タン状態って事なんだ。」


マリスがすかさず私に説明してくれるも、どうにも違和感しかない。

武器を使い込むと馴染むっての聞くけど強くなるって何なの………


「普段はすぐに分かるように目立つところに埋め込むんだけど

 あのゲインって人はまた変なとこに埋め込んだねぇ

 これじゃ分からない筈だよ」


良く分からないけど、あの変態鍛冶師は変な事をやってたらしい

………まぁあの変態っぷりを思い出せば何やってても

不思議じゃないんだろうけど。


「まぁ丁度良いと言えば丁度良いかもね

 名在り(ネームド)素材も手に入るだろうし、それを使って強化して貰えば

 その戦斧は一気に強くなるだろうね」


名在り(ネームド)素材………あのデカサイの角とか骨とかで補強でもするのかな?

確かにリーゼの戦斧を受け止めてたから結構な硬度持ってるんだろうけど

あんなのどうやって使って強化させるんだろ。


「ああ、武器の強化には熟練度がいっぱいになった時に

 特殊な素材を使って強化の幅を増やすことも出来るんだよ

 素材によっては武器に炎を帯びさせたり自分以外は見えなくなったりとかね」


へぇ~そんなことも出来るんだ、リーゼの戦斧から炎が出たら何か格好良さそう

さっきまで違和感感じて興味なかったけど、少しだけ興味出て来たかな。


「………という事はまたあの変態のとこに行くの?

 正直私は遠慮したい所なんだけど………」


フィルがうんざりした様な表情で言う。

前回は余りにエキセントリックな台詞でフィル眩暈を起こしてたよね………


「ま、まぁ取り敢えずはデューンさんの店に住む為の準備が最優先だし

 そんなに嫌ならフィルは留守番しててもいいから………」

「………いいえ、レンが行くなら私が行かないって選択肢は無いわ

 それに、何故かあの変態とは腐れ縁になりそうな気がしてならないのよね………」


フィルが恐ろしい事を呟く。

いや、恐らくリーゼの戦斧をメンテできるのはあの人だけだろうし

強化の話を聞く限りじゃ何度か顔を合わせる必要はありそうだけど

正直あまり気が進まないなぁ………


「まぁ、直ぐに依頼もないから急ぐ事は無いと思うよ~

 そだよねマイーダお姉ちゃん」

「そうね、一部の冒険者達が片っ端から依頼をこなしてってるから

 暫くは依頼は無いわね、あの名在り(ネームド)の解体にも時間かかるだろうし

 引っ越しを済ませたら暫くゆっくりしなさいな。

 やって欲しい依頼があったらまたアイシャに伝えておくから」


ふむ、住む処の問題も解決したし名在り(ネームド)とやらを倒した報奨金も結構ある。

たちまちの生活には困りそうにないし、正直ここ1か月は冒険者家業に

慣れる為に働きづめだったね、ここいらで休息を入れるのはいい案かも知れない。

時間が取れる様なら人形達の宴でウェイトレスの仕事も覚えないとだし丁度いいかな。

………ぶっちゃけ元の世界で接客業のバイトなんてやった事ないから

ちょっと楽しみだったりする。


「そうですか、ならそうさせて貰いましょうか

 みんなもそれでいいよね?」


仲間達は一斉に頷く、まぁ反対する理由は無いだろうしね。


「それじゃ引っ越しが終わったら2日程休息日で

 それ以降は依頼があるまで鍛錬やデューンさん達のお手伝いをしてくって事で」


私はそう宣言し、明日からの生活の変化に思いを馳せる。

さて、暫くは依頼の事は忘れて羽を伸ばすとしますかね。

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