表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
冒険者の狂想曲《カプリッチオ》
40/209

美味しい物には「毒」がある?

「へぇ~、貴方がこのレストランのオーナーさんなんだ

 思ってたよりも若くて男前な兄ちゃんだ~ねぇ

 マリスがもう5歳ほど年取ってたら一目惚れしちゃってたかも♪」


デューンさんの丁寧な自己紹介にマリスが冗談を交えて返す。


「ははは、それは光栄だね

 こんな子にそう言って貰えるとは僕も捨てたものじゃないかな」


マリスの冗談に紳士的に返答するデューンさん。

う~ん、イケメンがこんな返答をすれば嫌味っぽく聞こえるものだけど

人柄の良さが出ているのか、そんな感じは全然しないね。


「ふふっ、謙遜しちゃって

 こんな事言ってるけど、デューンってばお店に来た女の子にしょっちゅう

 ラブレターを貰ってたりするのよ」

「マリーさん………」


マリーさんの言葉にデューンさんは思わず苦笑いをする。

成程、料理が美味しくて可愛い人形が接客してくれておまけにオーナーが

優し気なイケメンなら確かに繁盛するね。女性にウケる要素満載だよ、このお店。


「道理で、貴方が自分を目立たない様に細工をしてたのか納得したわ

 こんな男前と一緒に仕事してるなんていい嫉妬の対象だわ」

「そう言う事、お店としては争い事は避けたいからね

 ホント、男前って罪よね、デューン」

「ははは、勘弁してください」


ふぅむ、この2人のやり取りを見ていると店主と従業員って感じじゃないね。

何と言うか、確固たる信頼関係があるというか、絆の様なものがあるみたいだね。


「さて、デューンをからかうのもこの位にして

 依頼内容の詳しい説明と行きましょ」


マリーさんの言葉に、苦笑を浮かべていたデューンさんの表情が

少しだけ真面目になる。


「そうだね、危険な依頼になりそうだから少し気が引けるけど

 君がいるならば心配はいらないかな」


デューンさんはそう言いつつ私を見つめる、表情は穏やかだけど

その目は鋭く、底知れない冷たさを感じる。

………やっぱりこの人もレベルに惑わされず私の力を見抜いてる。


「依頼内容は食材の調達、標的は南の【フィルト平原】に生息している

【ポイズンライノ】を5頭ほど狩ってきて欲しい」


ポイズン………ライノ?

直訳すると『毒を持ったサイ』って事になるんだけど………

サイって食べられるの?しかも毒持ちだよ!?


「えーっと、すみませんデューンさん

 ポイズンライノって確かレベル30以上の魔物でしたよね

 しかも毒を持ってる魔物が食材になるんですか?」


フィルが若干引きながらデューンさんに質問する。

うん、どうやら毒を持ってるのは私の想像通りだったか。


「そう思うのは無理もないけどね、帝国は食糧事情が厳しめだから

 毒を持った魔物だろうと食材になれば遠慮なしに調理するよ

 ああ、勿論毒抜きには細心の注意を払うけどね」


そう言えばそんな話も聞いてた気がする。

帝国には肥沃な土地が少ないから食料は輸入に頼ってて食料事情が厳しめだって。


「そういやそうだったね~

 まぁここは魔物を使った料理を出すレストランって結構有名だし

 さっきの料理も魔物を使った奴だしね~」


えっ、そうなの?

材料とかは気にしないで食べる私だけど、それはちょっと驚く。


「レン、気付かなかったの?

 さっき出された料理の肉、あれファングベアよ」


フィルからの思わぬ追撃。

ええ、あれってあの牙の生えた熊の肉だったの!?


「ああ、それはちょうど1か月ぐらい前にベイザの町で

 物凄く奇麗な状態でのファングベアが手に入ったって懇意の店から

 連絡が入ってね、その時に仕入れたものなんだよ

 見せて貰ったけどあれは凄かったね、ほぼ生きてた状態そのままだったから」


えっ、それってもしかして………


「あ、それ私と出会った時にレンが仕留めた奴みたいね

 ふふっ、あの時のレンの雄姿は今でも鮮明に思い出せるわ………」


フィルが私との出会いを脳内メモリーで再生しているらしく

ちょっと危ない顔をしてる。

フィル、流石にそれは恥ずかし過ぎるから止めて欲しいんだけど………


「へぇ、アレを仕留めたのは貴方なの

 それは凄いわね、あんな奇麗な状態で仕留められる冒険者って

 そうそういないわよ」

「これは嬉しい誤算だね、あのファングベアを仕留められるなら

 ポイズンライノも期待できそうだね」


デューンさんとマリーさんが感心した言葉を私に向ける。


「いや、あの熊を倒せたのはたまたま弱点を知ってた上で

 フィルの援護があったからで、もう1度同じことをやれと言われても

 出来る自信は全く無いですよ!?」


流石に過度な期待をされるのは困るので、慌てて2人の評価を否定する。


「そう心配する事も無いと思うよ~

 ポイズンライノは毒持ってるけど攻撃は突進しかしないし、分かってるなら

 レンお姉ちゃんなら簡単に回避できると思うよ。

 リーゼに至っては正面から受け止めることも出来そうだしね

 皮膚が分厚めだからレンお姉ちゃんの攻撃はちょっと通りづらいかもだけど

 リーゼの戦斧なら多分余裕じゃないかな。

 ぶっちゃけ、色んな意味でファングベアのほうがずっと強くて狂暴だからね」


マリスが私の不安を取り除くように魔物の特徴を教えてくれる。

成程、テレビで見た大きなサイを想像してたけど

リーゼが受け止められるって言うならそんなに大きくない種類なのかな?


「毒もフィルお姉ちゃんがいるならそこまで心配はいらないだろうしね

 いつも通りにやれば多分楽勝だよ」


ふむむ、マリスがそう言い切るなら安心かな。

なんだかんだ言って私達の中で1番知識があるのはマリスなんだよね。

見た目からは想像もできないけど、魔法だけじゃなく色んな知識に精通してる。

自分から好んでトラブルに頭を突っ込もうとするのはどうかと思うけど………


「そっか、それなら油断しなければ大丈夫そうだね。

 話を聞く限りリーゼ頼みになりそうだから、今回は私はフォローに回るね

 ………私が武器が使えればリーゼの負担も軽くなるんだけどね」


私が苦笑しながらリーゼに言うとリーゼは静かに首を振り


「いえ、むしろ私にとっては喜ばしい事です

 僭越ながら申し上げますと、マスターは周りに頼らず1人で物事を

 解決なさろうとする傾向がありますので、そうやって頼って頂けるのは

 従者として光栄の極みです」


リーゼの言葉にフィルがうんうんと頷いてる。

………私ってそんなに周りに頼ろうとしてないかな?

むしろずっと頼りっぱなしな気がするんだけど。


「ふふっ、忠義の厚いいい従者じゃない

 どんな縁で()()()()()()()と契約できたのか興味があるわね」


マリーさんが意味深な目線で私とリーゼを交互に見つめる。

この人、リーゼの正体に気付いてる?


「そんな心配しなくても、無粋な詮索はしないわよ

 その方が面白そうだしね」


私が表情に出したのか、マリーさんはくすくすと笑いながら言う。

………これは気づかれてるね、この人もデューンさん共々油断ならないね。

まぁ、悪い人じゃないとは思うけどね。


「それじゃあ、改めて君達に依頼するよ

 期限は特に決めないけど、出来るだけ早めだと助かるかな」

「分かりました、準備が出来次第出発します

 みんなもそれでいいかな?」


私の問いに皆は一斉に頷く。

うんうん、行動作業の時に意志の統一が出来てるのはいい事だね。


「それでは、早速取り掛かるのでこれで失礼しますね」


私はぺこりと頭を下げ、レストランを後にした。







―――その後、【人形達の宴】店内―――



「クスクス、なかなかいい子達じゃない

 美人揃いだし、流石ゼーレンが寄こした子達ね」

「僕は流石に驚いたけどね、いくら女好きのゼーレンさんだからって

 あんな女の子達を代わりに寄こしてくるなんて」

 

(レン)達が立ち去った店内で、デューンとマリーは愉快そうに話している。


「あら、デューンのお眼鏡に叶う子がいたのかしら?

 貴方のファンが聞いたら悲しみそうね」

「からかわないで下さいよマリーさん

 いつも言ってるでしょうに、今の僕にそんな暇は無いって」

「ふふっ、そうだったわね」


2人の会話は続く。

それは気心の知れた親友同士、ましてや長年連れ添った夫婦にも見えるような

お互いを信頼しきっている者同士が醸し出す雰囲気だ。


「ねぇディーン、あの子達を見てて私いい事思いついたの」

「………何でしょうか?

 マリーさんの思い付きはいつも突拍子過ぎて心臓に悪いんですが」


そう言いながら苦笑するデューン、だがマリーの思い付きに

振り回されるのはいつもの事だ。

出会ってからずっと、この2人はこういう関係で居続けている。


「あの子達の今の状況にもよるから、ちょっとマイーダに聞かないといけないけど

 あの子達に………」


マリーは思い付きをデューンに話す。



(レン)の取り巻く環境が、また一つ動き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ