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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
冒険者の狂想曲《カプリッチオ》
35/209

潰れるギルド(酒)

「………えっと、この惨状は何?」


私達は夕暮れ時の帝都のギルドに戻って来るなり、その惨状に呆然とする。




変異トロールを何とか撃破し、討伐証を貰った私達は

疲れを癒す為に1日程シュリンの町のギルドに世話になった後帝都に戻ってきた。

その間にフィルが私にお説教したり新しい服を着せて幸せそうな笑顔になったり

それを見てマリスが爆笑したり自分を頼ってくれなかったと

リーゼが少し落ち込んでたのを励ましたり色々あったけど

何とか帰ってこれた………んだけど。


「ううう………」


辺りに散乱するはゾンビの様に呻いている冒険者の方々。

同じように大量に転がっている木のジョッキ。

所々に転がってる大樽。

それらを踏み台にしているかの如く中心部で()()()()()()1人の女性。


「ってあれ、マイーダさんじゃないの!?」


フィルが中心の女性を見て叫ぶ、確かにマイーダさんだ。

この人こんな惨状で樽担いで何飲んでるの?いや恐らく酒だろうけど。


「ん?おや、アンタたちおかえり

 軽く報告は受けたけどなんか向こうでも大変な目に遭ったんだってね~

 2回目の依頼もこんな感じなんて、アンタたち何か持ってるのかもね

 あははははは♪」


私達の姿を見つけ、()()()()()()()()()()()()でマイーダさんは喋ってくる。

えーっと、酔っぱらってない?これってもしかしてお酒じゃなかったり?


「あはははは、マイーダお姉ちゃんまたみんな潰したんだ

 これで何回目だっけ、突発で宴会かまして冒険者全員潰したの」

「ん~、50から先は覚えて無いわ、あははははは」


ええええええ~~~!!

予想はしてたけどこれ全員潰したの!?ざっと数えても20人以上いるよ!?

ちなみにここ冒険者ギルドだよね、酒場じゃ無いよね!?


「ふ~、最近の冒険者はだらしないわねぇ

 ちょっとレベルが上がって強くなったって鼻の頭高くしてるけど

 この程度でつぶれるのは情けないわよ~」


えーっと、この世界ってレベル上がったらお酒も強くなるのかな?

だとしたらマイーダさんってとんでもないレベルの人って事になるんだけど………


「ん?あんたたちも飲みたいの?

 私に付き合ってくれるならいくらでも飲んでいいわよ

 まだまだ酒は沢山あるからね、あはははははは」


いや、あれだけ飲んでまだ飲むんかい!!

思わず声を出して突っ込みたくなったよ、と言うか

この人の体どーなんってんの!?明らかに自分の体積以上のお酒飲んでるだけど!?


「いや~、流石にマリスはお酒に弱いからマイーダお姉ちゃんに

 付き合えないよ、傍から見てる分には面白そうだけどね」

「………私も遠慮しとくわ、そもそも神官にお酒勧めないでよ」


フィルとマリスが誘いを断る、当然私も


「あ~、私のいた国では20歳未満でお酒飲むのは禁じられてて

 全く飲んだこと無いんだ、だからマイーダさんに付き合うのは無理かな~」


私の勘が付き合うのは危険とガンガン警鐘を鳴らしている。

なのでここは断る以外の選択肢は選べないよ。


「ふ~ん、しょうがないわね

 飲みたくない相手と飲んでも面白くないからね~」


マイーダさんはあっさりと諦め、再び樽をくいっと上げる。

この光景だけでも異様だよね、ホント。


「あの…マスター、マイーダが飲んでるものは何でしょうか?

 何やらとても楽しそうに飲んでいるのですが………」


リーゼが興味を持ったのか私に尋ねて来る。

ドラゴンってお酒を知らないんだ、まぁ食事を必要としない種族っぽいから

嗜好品も無いんだろうけど………


「あれはお酒って言う嗜好品だよ

 あれを飲むと人間はフワフワして楽しい気分になるみたいなんだ

 ただ、飲み過ぎると気分が悪くなったり頭が痛くなるっぽいけど」


リーゼの問いに漠然とした形で答える私。

正直お酒なんて飲んだことないから私の想像でしかないんだけど………


「………成程、その様な代物でしたらこの状況も納得出来ます

 後で苦しむのが確定しているのに飲む、と言う心情は理解しがたいですが」

「なら、リーゼも飲んでみる?」


お酒に興味を持ったリーゼにマイーダさんが上機嫌で誘いをかける。

いや、リーゼが酔っ払ったら帝国ちょっとマズい事になるんじゃ………

そもそもドラゴンって酔っ払うの?


「宜しいのですか?」

「勿論、1人で飲むのもつまんなくなったし

 ドラゴンとお酒飲むって機会なんてそうそうないだろうしね~」


いや、そんな機会あってたまるもんですか。

流石に止めたほうがいいかなと思いつつも、折角リーゼが興味を持ったものを

止めるのはちょっと気が引けて来る。


「ん~、多分大丈夫だと思うよ~」


私の考えを読んだのか、マリスがのんきな声で口にする。


「大丈夫って、アンタドラゴンがお酒飲んだらどうなるか知ってるの?」

「まぁね~、少なくともドラゴンに戻って大暴れする事は無いから安心して」


そうなんだ、まぁ人間と体の造りが違うからお酒で酔っ払う事は無いんだろうね。

………けど、マリス何でそんな事まで知ってんの?


「んじゃ、まずは一杯

 ドラゴンにとって美味しいかどうかは保証しないけど、美味しかったら

 このまま私に付き合ってくれないかしら?」

「………マスター、宜しいでしょうか?」

「ああ…うん、もし気に入ったらそのままマイーダさんと一緒に飲んでていいよ」

「分かりました、有難うございます」


と、マイーダさんに勧められたお酒を一気に飲み干すリーゼ。


「おお~、やるわね

 これ、それなりに強いんだけどそれを一気に行くなんてね」


リーゼの飲みっぷりにマイーダさんが感嘆する。

お酒の事は良く分からないけど、確かにいい飲みっぷりだったと思う。


「ん………ふぅ」


お酒を飲み干したリーゼが一息つく、何か妙に色っぽい仕草だねこれ………


「何というか、不思議な感覚ですね

 なんだかフワッとする様な………ですが決して不快ではありません」

「お………もしかして気に入った?

 ならもう一杯」


マイーダさんは空になった木のジョッキにすかさずお代わりを注ぐ。

リーゼはそれを躊躇いもなしにくいっと飲み干してしまう。


「おお~~!!いいねいいね!!

 どう?どう!?気に入ったかしら、ん?」

「何というか………ええ、不快な気分ではありません

 むしろ続けて感じていたい………これが美味、と言う感覚でしょうか」


リーゼはほんのりと赤みを指した顔でそう呟く。

何と言うか、益々色っぽくなっていくリーゼ。


「ドラゴンもお酒が入ると赤くなるのね………

 と言うかホントに酔っ払って暴れたりしないでしょうね?」

「大丈夫だよ~、顔色は兎も角表情や姿勢はしゃきっとしたままでしょ

 ドラゴンって耐性が凄いからアルコール程度の毒は効かないんだよ」


成程、アルコール自体がドラゴンには作用しないという事なのね。

という事は純粋にお酒の味を気に入ってるのかな?


「………これはまだあるのですね?」

「ええ、まだざっと樽30個ほど確保してるわよ

 今日は参加人数が少なめだったから、全部飲むのはちょっと飽きが来そうで

 困ってたのよね、その分リーゼが一緒に飲んでくれれば助かるわ♪」

「分かりました、そう言う事ならばお付き合いさせていただきます」

「よっしゃ、それなら遠慮なく飲みつくすわよ~!!」


飲み仲間が出来たからか、マイーダさんのテンションが一気に上がり

新しく持ってきた樽を抱えて一気に飲み干す。

………ホントどーなってんのこの人の体。

その横で、粛々とお酒飲んでるリーゼがシュールに映ってくる。


「えーっとリーゼ、無理しないでね」

「無理はしておりませんが………了解しました」


リーゼはそう言ってすぐに目の前のお酒に集中する。

私以外の事に興味を持ってくれたのは嬉しいけど、それがお酒なのが

ちょっと心配かも、アルコールが効かないからアル中や二日酔いには

ならないと思うけど………


「あははは、リーゼがいてくれて助かったね~

 マイーダお姉ちゃん、飲むと決めたら朝まで飲み続けるから

 付き合える人いなくてギルドも困ってたみたいなんだよね~」


マリスが酒飲み2人を眺めながら楽しそうに話す。


「………取り合えずここはリーゼに任せて部屋に戻りましょうか、レン」

「そだね」


フィルと私は一気に疲れた体を引きずりながら部屋に戻って行く。

しかし、この惨状って誰が片付けるんだろ?私達じゃないよね?

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