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~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女  作者: にせぽに~
少女達の輪舞曲《ロンド》
24/209

初依頼を終えて

「あっははははははは!!いや~アンタたち最高だわ、あっははははは!!」

ギルドの一室にマイーダさんの笑い声が木霊する。


リーゼと出会ってから数日後、私達はギルドマスターの部屋でマイーダさんに

今回の事を報告していた。

あれから何事もなく村に着き、強盗を村長に引き渡して報酬を受け取った。

村の守り神として祭り上げられていたリーゼに関しては敢えてぼかし

気絶させたらいつの間にか消えていたと言う事にした。

守り神がいなくなったと知ったら不安になるだろうからとマリスの提案だ。

けど、実際に魔物を倒してたリーゼがいないのにいたという事にするのは

少し問題かと思ったけど、リーゼ曰くここ10年くらい前から魔物が

近寄ってこなくなってたらしい、そう言う事なら安心かな。

リーゼが滅多に人前に姿を現さなかった事が功を奏して、私達の報告を村長は

疑いもせず信じてくれ、龍神様の怒りを鎮めてくれたとして報酬も

僅かばかりだけど上乗せしてくれた。

その後は特に何もなく、グランゼルに戻ってきた私達はラミカと別れ

依頼の報告にギルドへと戻っていたという訳だ。

ただ、今回の事はあまりにも特殊な状況じゃないかと思い

アイシャちゃんに頼んでギルドマスターの部屋で直接報告してたんだけど………


「そ、そんなに大爆笑される内容だったかな?」


未だ涙目になりながら腹を抱えて笑うマイーダさんを見て私は呟く。


「仕方ないわよ、ただの護衛を受けに行ったと思ったら何故か

 ドラゴンと戦う羽目になって、しかもそのドラゴンを仲間にしたんだから

 しかもそれが初めて受けた依頼の結果だったって言うんだし

 荒唐無稽すぎて笑うしかないわよ」

「そだね~、リーゼがいなかったら正直嘘だと思われても

 仕方ないレベルの話だと思うよ~」


フィルの言葉にマリスが頷く。

まぁ、確かにそれはそうだけど………


「しかしリーゼさんって本当にドラゴンなんですね

 こんな奇麗でスタイルのいい人がドラゴンだなんて

 何だか絵本の世界にいるような気分です」


一緒に報告を聞いていたアイシャちゃんはリーゼの方に興味があるらしく

じっとリーゼを見つめている。

ちなみにドラゴンだと証明するためにリーゼが右手の変化を見せたら

琴線に触れたのか物凄く興奮したんだよね。

もしかして私に依頼の話をしてほしいって言ったのはこう言う刺激的な

経験をしたかったんじゃないかなとも思う。


「マスター、この人間の子供はどうして私を凝視しているのですか?」


そんなアイシャちゃんの様子に少し困った表情でリーゼが聞いて来る。


「アイシャちゃんはリーゼの事が凄いと思ってもっと知りたいんだよ

 リーゼはアイシャちゃんにじっと見られるのは嫌かな?」

「良く………分かりません、嫌ではないのは確かですが

 何かこう、くすぐったい感覚が体にあって落ち着きません」


リーゼはほんのり頬を赤くしながらそう答える。

あらまリーゼ照れてるね、意外と照れ屋さんなのかな。


「いや~、久しぶりに笑った笑った

 こんな愉快な思いをさせて貰ったのはいつ以来かしら」


大爆笑が収まったマイーダさんが目尻の涙をぬぐいながら言う。


「一先ず依頼お疲れ様、報酬はアイシャに渡しとくから受け取っておいてね。

 それにしても………」


マイーダさんはそう言いながらリーゼに視線を移す。


「他人に聞かれない様にしたのは正解ね

 こんな事周りに知られたら国が動くレベルだもの」


まぁ、確かにそうだよね。

ドラゴンを手懐けたとなれば軍事戦力として利用しようとするのは

国としては当然の考えだと思う。


「けど、そんな事はさせないから安心なさい

 こんな面白い事、他のとこに取られてたまるもんですか」


マイーダさんは笑顔で豪快に言い放つ。

なんか、思ったより破天荒な人だねこの人。


「けどママどうするの?

 人間として冒険者登録するのは可能だとは思うけど、審査なんかしたら

 リーゼさん一発で人間じゃないことバレると思うよ」


そうなのだ、私は見えないから良く分からないけど

フィルがリーゼのレベルを見てびっくりしていたんだよね。

何かレベル自体は低いんだけど能力値が普通の人間とは比べ物にならないみたい

まぁ、ドラゴンだから当たり前と言えば当たり前なんだけど………

慌ててフィルがレベルを隠すように言ったんだけど、確かに実戦方式の

審査なんかしたら死人が出そうだよね………


「その辺りは誤魔化すしかないわねぇ、個人的にはレンの様にウチの冒険者(馬鹿)達の

 高くなった鼻をへし折って欲しいとこだけど♪」

「いやいや、ホントに死人が出るから………」


人化して間もないリーゼだ、人間の骨格での動きに慣れてないから

力の加減が出来ず、帰る際も色んな物を壊してたりしてるんだよ。

実際、ギルドマスターの部屋のドアノブを粉砕してるしね………

その辺りを教えてあげるのは私の役目なんだろうけど、大変だろうなぁ。


「まぁ、審査に関しては私がやったって事にして書類を調整するから大丈夫よ

 冒険者証もすぐに発行するから待ってなさい。

 それよりも………」


マイーダさんはリーゼの格好を上から下へと眺め


「この子の格好と、武器を何とかしなきゃね」


そうなのだ、結局ラミカもリーゼのサイズに合う服は持っていなかったらしく

村の仕立て屋を覗いても取り扱ってなかったんだよね。

なので一先ず大きめのマントで体を包んでる状態だけど

中身はパツパツ状態の私の制服を着てるままなんだよね。

………もう伸びきって着れないだろうなぁ。


「リーゼさん背も高いし、その………凄くおっきいし

 服を探すのも大変そうですよね………」


アイシャちゃんが羨ましそうな声色で言う。

うん、その気持ちはすっごい分かる。


「お手数をおかけしてる様で、申し訳ありませんマスター

 ですが、我としては服と言う物が無くても一向に………」

「構うからやめて、人化した状態で人前に出るときは絶対服を着るようにして

 これは命令だから絶対守って、お願いだから!!」

「はぁ………マスターがそう言うのでしたら従います」


リーゼはドラゴンだから人と感覚が違うのは分かってるけど

流石に全裸は勘弁して欲しい、そんな事したら男所帯の冒険者ギルドに

血の惨劇を引き起こしてしまいそうだ。


「まぁ服は何とかなると思うよ、最悪仕立て屋に特注で作って貰う事も出来るし

 問題は武器の方かなぁ」

「そうね、試しては無いけどおそらく普通の剣とかじゃ

 リーゼの力には耐えれそうもないわよね」


リーゼのレベルを見ているフィルとマリスが口々に言う。

確かにリーゼの力だと人間用に調整されてる武器なんて

ひと振りでへし折ってしまうだろうね。

それなら格闘は………とも思ったけど、私のそれはあくまで()()()だ。

正直教えるほどのものでもないし、武器が持てるならそっちの方がいい。

理屈は良く分からないけど、この世界では武器は使い込めば使い込むほど

【熟練度】と言う物が蓄積されて切れ味が増したりするらしい。

だから武器を使わない為に【熟練度】が蓄積されない

格闘術は発達してないみたいだけど………


「ここで悩んでも仕方ないわよ、事務的な事はマイーダが

 任せろって言ってるんだし、私達はリーゼの服と武器を探しましょ。

 帝都は広いんだし、探してたら何かあるでしょ」

「そだね~、工業区にいる職人の中には変な武器ばかり作ってる人も

 いるらしいから片っ端から試してみればいいんじゃないかな?」

「そだね、んじゃ行こっか。リーゼもそれでいいかな?」

「マスターが宜しければ、私に異論はありません」


私達はそう方針を決め、席を立つ。


「ってアンタも来るの?

 アンタとはさっきの依頼が終わるまでだったでしょうが」


フィルは同時に席を立ったマリスに向かって言い放つ。

そう言えばそんな話だったけど、あまりにもマリスが違和感なく

溶け込んでくれてたからすっかり忘れてたよ。


「え~、いーじゃんマリスも入れてよ~

 こんな面白い事が起こりまくりそうなパーティ他にないし

 ここでお別れなんて殺生だよ~」


マリスが心底別れたくない様子でフィルにしがみつく。


「ちょっ、放しなさい!!

 このパーティの決定権はレンにあるんだからレンに頼みなさいよ」

「レンお姉ちゃ~ん、マリスも入れてよ~

 きっと役に立つからさ~」


フィルの言葉にマリスが私の方へくるっと向き、懇願を始める。

………正直、こちらからお願いするべきだと思ってたから

マリスの様子に少し困惑する。

けど、そこまで気に入ってくれたならここで別れる理由なんてないよね。


「マリス、そこまで私達の事を気に入ってくれて嬉しいよ」

 

私は一呼吸置き、マリスを見据える。

真剣な雰囲気を感じ取ったのか、マリスも真剣な表情で見つめ返す。


「だから、私からもお願いするね

 パーティに入って、私達を助けてくれないかな」


私はそう言って手を出すと、マリスは歯を見せながら極上の笑顔で


「あったり前だよ!!レンお姉ちゃんが嫌って言ってもついてくからね♪」


心底嬉しそうに私の手を取り、ぶんぶんと上下に振った。














――――――世界はいまだ佇み続ける



                  時を薙ぐ存在を夢見て――――――











これにて第1章完です。

ここから彼女達の愉快な冒険者生活が始まります。

女の子だらけの華やかな冒険譚になるのか、それとも………




ここまでの読破有難うございます。

もしここまで読んで「面白い」「応援してもいいよ」と思われた方が

いらっしゃったなら、広告の下にある『感想』『ブックマーク』

『評価ポイント』等して頂けると執筆のモチベーションに繋がりますので

どうか宜しくお願い致します。

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